朝、身支度をしながら合わせ鏡で後頭部を見たら、地肌が線のようにぱっくり見えて驚いた。あるいは、誰かに撮ってもらった写真で、後ろの髪がまっすぐ分かれていることに気づいた。そんな経験はありませんか。
後頭部のぱっくり割れは、多くの場合、つむじを中心に髪が異なる方向へ生えていることが土台になっています。そこへ寝ぐせや乾かし方、髪の長さと重さ、カット、皮脂や整髪料による束化などが重なると、地肌が線のように見えやすくなります。
乾いた髪の表面へドライヤーを当てるだけでは直りにくいため、割れている部分の根元まで水分を与え、毛流れを動かしながら乾かすのがポイントです。ただし、ドライヤーで毛穴の向きやつむじそのものを永久に変えることはできません。
この記事では、後頭部が割れる仕組み、自宅でできる乾かし方、カットやパーマで相談できること、薄毛との見分け方と皮膚科へ相談する目安まで説明します。
なぜ後頭部は割れて見えるのか
つむじは髪が複数方向へ伸びる場所
つむじは、頭皮の一点を中心に、髪が渦を巻くように複数の方向へ伸びている場所です。髪が左右や前後へ分かれて生えているため、髪同士が離れる位置では地肌が線やすき間のように見えることがあります。
これは「頭皮に穴が開いている」「毛穴が詰まって髪が割れている」という仕組みではありません。血流が悪いから分け目ができるという説明にも、後頭部の割れを直接説明できる根拠はありません。
つむじの向きから性格、利き手、健康状態を判断できるという話も、髪型の直し方とは関係のない俗説です。
分け目とつむじの違い
分け目は、髪を左右へ流した結果として見える境界線です。つむじは、髪が複数方向へ伸びる中心点です。
つむじの近くでは、もともと髪が別方向へ分かれるため、地肌が見えやすくなります。つむじの毛流れに、寝ぐせやカットによる分け目が重なることで、後頭部が長い線のように割れることもあります。
生まれつきの生えぐせは永久には変えられない
生えぐせには、毛包、つまり髪を作る皮膚の中の器官が向いている方向が関係します。この向きを、ドライヤーやカット、パーマで永久に変えることはできません。
これらの方法でできるのは、今生えている髪の流れや立ち上がりを調整し、割れ目を見えにくくすることです。生えぐせそのものをなくすのではなく、毎日扱いやすい状態へ近づけると考えてください。

乾いた髪へ風を当てるだけでは直りにくい
髪は乾く途中の形を保ちやすい
髪の形には、髪内部の水素結合と呼ばれる弱い結びつきが関係します。髪が水分を含むと、この結びつきが一時的に外れて形を動かしやすくなり、乾くと再び結びついて、そのときの形を保ちやすくなります。
寝ぐせを、乾いた髪の上から手で押さえるだけでは直しにくいのと同じです。後頭部の表面へ風を当てても、割れた状態で乾いた根元が動いていなければ、元の線へ戻りやすくなります。
いったん根元まで水分を届け、割れ目をまたぐように毛流れを動かしながら乾かすと、朝についた形を組み直しやすくなります。ただし、変えられるのは今ある髪の一時的な形であり、毛穴の向きではありません。
表面ではなく根元まで濡らす
割れているのは毛先だけではなく、根元の髪が左右へ分かれた状態です。表面へ霧吹きを軽くかけるだけでは、根元の形まで動かせないことがあります。
割れ目の周辺を指で分け、指先で触れて根元まで水分が届いたと分かる程度に濡らします。頭全体を必ず洗い直す必要はありません。目的は、割れ目周辺の根元を動かせる状態に戻すことです。
何分濡らす、何度のお湯を使うといった全員共通の数字はありません。
朝にできる具体的な直し方
鏡の前で再現しやすいよう、手順を分けて説明します。
- 割れている線の周辺を、表面だけでなく根元まで濡らす
- タオルでこすらず、押さえるように余分な水分を取る
- 割れ目へ指を入れ、根元の髪を小さく動かす
- いつも倒れる方向だけに乾かさず、割れ目をまたぐように左右または前後へ毛流れを動かしながら根元を乾かす
- 根元が乾いたら、最後に作りたい丸みや毛流れへ整える
- 根元へ触れ、冷たさや湿り気が残っていないか確認する
- 形を整えたら触りすぎず、必要に応じて冷風で髪の温度を落ち着かせる
左右のどちらへ動かせばよいかは、全員同じではありません。つむじの位置、回転方向、普段割れる方向によって変わります。
最初から一方向へ固定するのではなく、割れ目をまたいで左右または前後へ動かし、根元が乾いてから最終的な毛流れへ整えます。ドライヤーは近づけすぎず、熱を一か所へ当て続けないように動かしてください。
冷風は、毛穴を締めたり、キューティクルを完全に閉じたりするためのものではありません。整えた髪を冷まし、形が変わりにくい状態へ移すための補助として使います。

夜の乾かし方で翌朝の割れを減らす
髪の根元が湿ったまま眠ると、枕に押された形や、寝返りによる毛流れの偏りが、乾く途中で残りやすくなります。夜は後頭部の根元まで乾かし、髪の熱が落ち着いてから横になると、寝ぐせによる割れを減らしやすくなります。
夜に整えても、寝汗で根元が湿ったり、枕で長時間押されたりすれば、朝に再び割れることはあります。その場合は、朝に根元を濡らす手順からやり直します。
ただし、「濡れて寝ると必ず薄毛になる」「自然乾燥すると毛穴が詰まる」とは言えません。ここでのポイントは、乾かし残しや寝汗が翌朝の髪の形に関係することです。
髪の長さ・重さ・カットとの関係
髪が長く重いと、トップの根元が寝てボリュームを出しにくくなる場合があります。一方、短くすれば必ず直るわけではありません。生えぐせに対して長さが足りないと、髪が浮いたり左右へ分かれたりすることもあります。
毛量を減らす場合も同じです。後頭部やつむじ周辺をすきすぎると、地肌を覆う髪が減り、割れ目が目立ちやすくなることがあります。
「長ければ割れる」「短ければ直る」「すけば立ち上がる」と一律には決められません。カットでは、次の点を確認してもらいましょう。
- つむじ周辺に必要な長さが残っているか
- トップの重さで根元がつぶれていないか
- すきすぎて地肌を覆う髪が減っていないか
- レイヤーの位置が生えぐせに合っているか
- 自宅でも同じように乾かせる形か
美容室では仕上がりだけでなく、自分で再現できる乾かし方も教えてもらってください。
パーマで扱いやすくなることもある
トップへ丸みをつけるポイントパーマや、根元の立ち上がりを補う施術が、毎朝の手直しを楽にする選択肢になる場合があります。
ただし、パーマでも毛穴の向きやつむじそのものは変わりません。効果は一時的で、施術した髪には薬剤による負担もあります。
「つむじ割れなら全員パーマ」「根元パーマなら傷まない」「一度すれば生えぐせが治る」とは考えず、髪の長さ、強度、過去のカラーやパーマ履歴を見てもらってください。
皮脂・整髪料・シャンプーとの関係
髪が皮脂や重いスタイリング剤で束になると、髪同士のすき間が大きくなり、地肌が見えやすくなります。この場合は、頭皮と髪を適切に洗い、整髪料の量とつける位置を見直すことで、見え方が変わる可能性があります。
一方、「皮脂が毛穴を詰まらせて髪が割れる」「洗浄力の強いシャンプーで洗えばつむじが直る」とは言えません。シャンプーで変えられるのは、皮脂や整髪料による髪の束化であり、生えぐせではありません。
重いオイルやバームを後頭部の根元へ多くつけると、せっかく立ち上げた髪が束になりやすくなります。スタイリング剤は必要な場所へ少量から使い、重さが出ていないか確認してください。
根元用ミスト、軽いフォーム、スプレーなどは、乾かして整えた毛流れを保つ補助になります。ただし、乾いた割れ目へ大量のスプレーをかけると、分かれた形をそのまま固定してしまいます。
順番は、根元を濡らす、ドライヤーで整える、必要に応じてスタイリング剤で支える、です。強い逆毛を毎日繰り返す方法は、摩擦や切れ毛につながるためおすすめしません。
セルフチェックで状態を整理する
自分の状態がどれに近いか、次の表で確認してみましょう。
| 気づいたこと | 考えられること |
|---|---|
| 根元を濡らして乾かし直すと目立ちにくくなる | 寝ぐせや乾かし方の影響が大きい可能性 |
| 毎回ほぼ同じ場所、同じ方向へ割れる | つむじ・生えぐせ・カットの影響を確認 |
| 洗った直後は目立たず、時間が経つと束になって割れる | 皮脂やスタイリング剤による束化を確認 |
| 髪型を変えた直後から目立つようになった | 長さ・レイヤー・すき方を美容室で確認 |
| 以前より割れ目が広がり、抜け毛や毛量も変わった | 美容室だけで判断せず皮膚科への相談を検討 |
この表だけで病名や薄毛の有無を判断することはできません。次に、乾かし方を見直すのか、美容室または皮膚科へ相談するのかを整理するために使ってください。
つむじ割れと薄毛はどう見分ける?
地肌が見えているという一点だけでは、薄毛かどうかを判断できません。つむじの中心は、もともと髪が複数方向へ分かれるため、地肌が見えやすい場所です。
次の条件でも見え方は変わります。
- 髪が濡れている
- 皮脂や整髪料で束になっている
- 強い照明が当たっている
- 真上から写真を撮っている
- 髪と頭皮の色の差が大きい
- 髪が細い
- 後頭部の根元がつぶれている
自分で変化を見る場合は、同じ場所、同じ照明、同じ角度で、髪が乾いた状態の写真を残します。1枚の写真で判断せず、以前の写真と比べることがポイントです。
根元を濡らして乾かし直すと目立ちにくくなるなら、毛流れや束化の影響が大きい可能性があります。一方、乾かし方を変えても以前より割れ目が広がっている、髪全体の量も減っているなら、つむじだけの問題と決めつけず皮膚科へ相談してください。
写真は変化に気づく材料にはなりますが、脱毛症の診断には使えません。

皮膚科へ相談する目安
次のような変化がある場合は、つむじや生えぐせだけの問題と決めつけず、皮膚科へ相談することを検討してください。
- 以前より割れ目や分け目が少しずつ広がっている
- 髪全体の密度が減ったように見える
- 束ねた髪が以前より細くなった
- 抜け毛が急に増えた
- 円形またはまだらに髪が抜けている
- 頭皮に赤み、強いかゆみ、痛み、湿疹、かさぶたがある
短い切れ毛が増えた場合は、まずアイロン、カラー、パーマなどの履歴を美容師に確認してもらう方法があります。抜け毛の増加や頭皮症状も伴う場合は、皮膚科へ相談してください。
美容室では、髪型、カット、乾かし方、薬剤履歴について提案できます。しかし、脱毛症や頭皮疾患の診断はできません。
シャンプー、育毛剤、サプリメント、頭皮マッサージだけで原因を判断したり、治ると決めつけたりせず、気になる変化が続く場合は医療機関の診断を受けてください。
美容室で相談するときに伝えること
美容室では「後頭部が割れます」だけでなく、次の情報を伝えると原因を整理しやすくなります。
- 朝だけ割れるのか、一日中割れるのか
- 根元を濡らして乾かすと変わるか
- カット後から目立つようになったか
- オイルやバームを根元へ使っているか
- 自分ではどちらの手で、どの方向から乾かしているか
- 以前より地肌の見える範囲が変わったか
美容室で仕上げてもらった日は直っていて、自宅では再現できないこともあります。普段の乾かし方を実際に見せてもらい、自分が使う手とドライヤーの位置で再現できる方法を教えてもらうと実用的です。
可能であれば、整えていない普段の状態が分かる写真も見せてください。美容室できれいにブローした状態だけでは、いつ、どのように割れるのか判断しにくいためです。
まとめ
後頭部のぱっくり割れは、つむじを中心とした生えぐせへ、寝ぐせや乾かし方、髪の長さ・重さ、カット、皮脂や整髪料による束化などが重なって目立ちやすくなります。
乾いた表面へ風を当てるだけではなく、割れている周辺の根元まで水分を届け、割れ目をまたぐように毛流れを動かしながら乾かすことがポイントです。ドライヤーで毛穴やつむじの向きを永久に変えることはできないため、生えぐせが強ければ毎朝の手直しが必要になることもあります。
カットやパーマは扱いやすくする助けになりますが、全員に同じ方法が合うわけではありません。つむじが見えるだけで薄毛と決めつける必要はありませんが、以前より割れ目が広がる、毛量や抜け毛が変化した、頭皮症状がある場合は、皮膚科への相談も検討してください。
参考資料
- 花王|聞けばわかるヘアケア「髪の乾かし方・寝ぐせがつくのはなぜ?」
- University of Edinburgh Research Explorer|GWASs Identify Genetic Loci Associated with Human Scalp Hair Whorl Direction
- American Academy of Dermatology|Thinning hair and hair loss: Could it be female pattern hair loss?
- PMC|On Hair Care Physicochemistry: From Structure and Degradation to Novel Biobased Conditioning Agents
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。
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