夕方になると、前髪の生え際や頭皮がべたついてくる。指で触れると湿った感触があり、鏡を見るたびに気になってしまう。それなのに毛先は、同じ日の同じ髪なのにパサついて広がり、櫛を通すと引っかかる。頭皮と毛先で、まるで別の髪のような状態になってしまう方は少なくありません。
これはおかしなことでも、特別な体質でもありません。頭皮と毛先は、状態を決めている仕組みそのものが違うからです。頭皮は皮脂や汗、洗浄や洗い残しといった、今この瞬間の要因に左右されやすい部分です。一方の毛先は、紫外線や熱、摩擦、これまでのカラーや縮毛矯正の履歴といった、時間をかけて積み重なってきた影響を受けやすい部分です。だからこそ、シャンプーは頭皮を中心に、トリートメントやオイルは毛先を中心にというように、洗う場所とうるおいを補う場所を分けて考えてみてください。
ここから、なぜこの二つが同時に起こるのか、そして頭皮と毛先それぞれにどう向き合えばよいのかを、順番にお伝えしていきます。
なぜ頭皮と毛先で真逆のことが起きるのか
皮脂は、頭皮にある皮脂腺という組織で作られます。毛穴の中に開口した皮脂腺から分泌された皮脂が、頭皮の表面や髪の根元付近を覆います。皮脂には、頭皮や髪の表面を保護する役割があります。量が多かったり、汗や整髪料と混ざり合ったりすることで、不快な「ベタつき」として感じられるようになります。
この皮脂は根元付近には付着しやすいのですが、毛先まで均一に行き渡るとは限りません。髪をとかしたり、寝返りを打ったり、衣類とこすれたりする日々の動きによって、皮脂は少しずつ髪の表面に広がります。ただ、髪が長くなるほど根元と毛先の間には距離が生まれます。
そこにもう一つの事情が重なります。毛先は、髪の中でいちばん古い部分です。髪は根元から毛先へ向かって伸びるため、毛先はこれまでいちばん長い時間を過ごしてきた部分でもあります。その間、紫外線を浴び、ドライヤーやアイロンの熱を受け、タオルドライやブラッシングでの摩擦にさらされてきました。カラーやブリーチ、縮毛矯正といった薬剤施術も、髪の構造へ負担を与えます。こうした影響は、毛先に向かうほど積み重なっていきます。
つまり、根元は皮脂によってベタつきやすく、毛先は積み重なった影響によって乾燥しやすい。これは矛盾ではなく、それぞれの部位が置かれている環境の違いです。

原因を整理してみる
実際にベタつきと乾燥がなぜ強く出ているのか、いくつかの角度から見てみましょう。当てはまるものが一つとは限らず、複数が重なっていることもあります。
まず考えたいのが、洗浄が頭皮に合っているかどうかです。洗浄力が強すぎるシャンプーを使うと、洗った後に乾燥やつっぱりを感じることがあります。逆に洗浄力が控えめな製品では、皮脂や汗、整髪料を十分に落とせず、ベタつきにつながることもあります。しっとりタイプだから必ず合うわけではなく、皮脂量や使用する整髪料などによって使用感は変わります。
皮脂の分泌量にも個人差があります。同じ洗い方をしていても、皮脂が出やすい人と出にくい人がいます。体調や季節によって感じ方が変わることもありますが、それだけで原因を特定することはできません。洗い方や使っている製品、汗の量なども合わせて見ていく必要があります。
毛先のダメージが強いことも大きな要因です。カラーやブリーチ、縮毛矯正の頻度が高い方や、アイロンやドライヤーの熱を繰り返し当てている方は、皮脂量とは関係なく毛先が乾燥しやすくなります。
そして見落とされやすいのが、スタイリング剤や汚れの洗い残しです。ワックスやオイル、スプレーなどが十分に落ちていないと、日中の皮脂や汗と混ざり、ベタつきを強く感じることがあります。生え際や耳の後ろ、後頭部の下は、洗い残しやすすぎ残しが起こりやすい部分です。
「自分はこのタイプ」と一つに決めつけず、頭皮の洗浄と毛先の保護を分けて見直す方が実用的です。

シャンプー選びの考え方
洗浄力の強いシャンプーと弱いシャンプーのどちらがよいかは、誰にでも共通する答えがありません。洗浄力が強めの製品は皮脂や整髪料を落としやすい一方、頭皮が乾燥しやすい方はつっぱりを感じることがあります。
ただ、洗浄力が控えめだから、すべての人に刺激が少ないとは限りません。反対に、洗浄力がある製品でも、使用量や洗い方、製品全体の処方によって使用感は変わります。洗浄成分の組み合わせや配合、香料など、洗浄力の強弱だけでは説明できない要素も関係するためです。
アミノ酸系と表示されたシャンプーも多くありますが、その名称だけで刺激性や洗浄力は判断できません。同じアミノ酸系でも、組み合わせる洗浄成分や配合量、油性成分、コンディショニング成分によって仕上がりは変わります。パッケージの表示だけで決めず、洗った後のつっぱりやかゆみ、夕方のベタつき、毛先のきしみなど、実際の状態を確かめながら選びましょう。
正しい洗い方―頭皮と毛先で役割を分ける
シャンプーは基本的に、頭皮の皮脂や汗、汚れを落とすためのものです。毛先までしっかり揉み込んで泡立てる必要はありません。頭皮を中心に指の腹で洗い、すすぐ泡を毛先へ通す程度にすると、乾燥した毛先への負担を抑えやすくなります。
シャンプー前の予洗いでは、髪と頭皮の全体へお湯を行き渡らせます。表面だけを濡らして終わらせず、生え際や耳の後ろ、後頭部にもお湯を通してください。整髪料を多く使った日は、お湯だけで完全に落ちるとは限りません。予洗いの後、シャンプーを頭皮中心になじませます。
「洗いすぎると皮脂が余計に増える」という話もありますが、少し単純化されすぎています。洗浄後に皮脂が再び表面へ広がることと、洗うたびに皮脂腺の分泌能力そのものが高まることは別の話です。洗う回数を減らせば、必ず皮脂量が減るとは限りません。
洗った後につっぱりやかゆみがある場合は、洗う回数だけでなく、シャンプーの種類、使用量、すすぎ残し、頭皮の状態を見直してください。朝と夜の2回洗うかどうかも、皮脂量、汗、整髪料、頭皮の乾燥、季節、生活状況によって変わります。
お湯で汗やほこりなどを流せることはありますが、皮脂や整髪料まで十分に落とせるとは限りません。お湯だけで洗う方法が合うかどうかも、皮脂量、整髪料の使用状況、頭皮の状態によって変わります。
トリートメント・ヘアミルク・オイルの使い分け
トリートメントは髪へ使用することを前提にした製品です。頭皮用と明記されていないものは、頭皮を避け、髪の中間から毛先を目安に使用します。頭皮用として販売されている製品は、表示された使い方に従ってください。
ヘアミルクとヘアオイルは、必ず両方を使う必要はありません。軽さややわらかい仕上がりが欲しい場合はミルク、毛先のまとまりや表面の保護を補いたい場合はオイルというように、髪質や仕上がりに合わせて選びます。併用するときは少量ずつ使い、重くならないか確認してください。
乾かした直後から中間や毛先が重い場合は、アウトバス製品の量や位置が関係している可能性があります。時間が経ってから生え際や根元を中心にベタつく場合は、皮脂や汗が関係している可能性があります。ただし、これは判断材料の一つです。すすぎ残しや整髪料などが重なることもあります。

朝と夜、季節、施術履歴による違い
気温や湿度が高い時期は汗が増え、頭皮のベタつきを感じやすくなります。一方で、冷房や紫外線の影響により、毛先の乾燥が同時に気になることもあります。冬は空気の乾燥や静電気によって、毛先のパサつきが目立ちやすくなります。
自然乾燥とドライヤーも、単純にどちらか一方が正解ではありません。髪は水分を含むと膨らみ、乾いているときとは状態が変わります。濡れた髪をタオルで強くこすったり、絡んだまま引っ張ったりすると、表面や毛先へ負担がかかりやすくなります。長時間濡れたまま過ごすと、寝具や衣服との摩擦も受けやすくなります。一方、高温の風を近距離から同じ部分へ当て続けることも、髪への負担になります。
タオルでこすらずに水分を押さえ、根元と頭皮から乾かします。ドライヤーを動かしながら風を通し、同じ部分へ高温を当て続けないようにしてください。頭皮や根元へ湿り気を残さず、乾いた後も高温を当て続けることは避けましょう。
自分の状態を確認する簡単な方法
洗った直後だけでなく、時間が経った後の頭皮と毛先を分けて確認します。頭皮がベタつくなら、洗浄力、洗い方、すすぎ残し、整髪料の影響を見直します。毛先がパサつくなら、トリートメントやアウトバス製品の量と位置、ドライヤーやアイロンの使い方、カラーや縮毛矯正の履歴を振り返ってみてください。
一度にすべてを変えると、何が合っていたのか分からなくなります。まず洗い方、次に製品をつける位置、それでも変わらなければ製品そのものというように、一つずつ見直すと判断しやすくなります。
美容室で相談するときに伝えたいこと
美容室では「頭皮がベタつく」「毛先が乾燥する」という結果だけでなく、いつ、どのように起きるのかを伝えてください。朝は問題ないのか、何時間ほどで気になり始めるのか、使っているシャンプーやトリートメント、直近のカラーや縮毛矯正、パーマ、ドライヤーやアイロンの使用状況などが分かると、原因を整理しやすくなります。
普段使っている製品のボトルを写真に撮って見せる方法もあります。商品名だけでなく、実際の洗い上がりやベタつく時間帯も一緒に伝えると、より具体的に相談できます。
医療機関への相談が必要になるサイン
この記事で紹介しているのは、美容的なケアの範囲です。強いかゆみ、赤み、痛み、湿疹、大量のフケ、急な抜け毛などが続く場合、美容室では診断できません。セルフケアを見直しても症状が続く場合は、美容的なケアだけで対応せず、皮膚科などへ相談してください。
まとめ
頭皮と毛先では、状態を決める要因が違います。シャンプーは頭皮を中心に、トリートメントやアウトバス製品は中間から毛先を中心に使います。
一度にすべてを変えず、洗い方、製品をつける位置、製品そのものの順で、一つずつ見直してください。強いかゆみや赤み、急な抜け毛などが続く場合は、自己判断だけで対応せず、皮膚科などへ相談しましょう。
HAIR記事は、美容師歴30年以上・施術経験3万人以上のDolceが、髪と頭皮の現場経験をもとに制作・監修しています。
執筆・監修:Dolce(美容師歴30年以上・施術経験3万人以上)
DOLCE BEAUTYは、美容室・ネイルサロン・エステなど美容の現場や運営経験を背景に、美容について分かりやすく整理して届ける美容情報メディアです。



