髪を乾かしても、朝にはうねって広がる。そんな「昨日までと違う髪」に、ふと年齢を感じる瞬間はありませんか?
「最近、髪がまとまらない」「昔よりうねりが強くなった気がする」──実はこの“うねり”や“広がり”、ただのくせ毛ではなく年齢による髪質変化(エイジング毛)が原因のことが多いんです。
美容師として20年以上、多くの髪に触れてきた中で感じるのは、「髪の老化」は肌と同じように進行し、ケアを変えないとどんどん扱いにくくなるということ。ここでは、40代以降に増える“髪のうねり・広がり”の正体と、プロが現場で実践しているケア方法を詳しく解説します。
なぜ年齢とともにくせ毛が強くなるの?
① 毛穴の形が変わる
加齢やホルモンバランスの変化で頭皮がたるむと、毛穴の形が丸から楕円へと変化します。すると髪がまっすぐに生えず、ねじれたようにうねるようになるのです。
さらに、年齢を重ねると毛穴そのものの弾力が低下。髪が細くなり、毛根が支えきれなくなると、髪が“毛穴の歪み”に沿ってうねりながら伸びていきます。これが、40代以降に「急に髪質が変わった」と感じる大きな理由です。
② 内部たんぱく質の空洞化と水分バランスの乱れ
髪の芯(コルテックス)は、加齢や紫外線、カラー・熱ダメージによって水分保持力が低下します。内部がスカスカになり、水分を蓄える部分(空洞)が多くなります。
この空洞化した髪は、まるでスポンジのように湿気を不均一に吸い込むのが特徴。健康な髪と空洞化した髪が混在すると吸水量の差でバランスが崩れ、チリチリとしたうねりやアホ毛として表面に現れます。乾燥と湿気ダメージが交互に進行する──これがエイジング毛特有の厄介な特徴です。
③ 女性ホルモン(エストロゲン)の減少
エストロゲンは「ハリ・コシ・艶」を作る成分の生成を助ける働きがあります。その分泌が減ることで、髪が細く、柔らかくなり、ハリを失ってうねりやすくなるのです。
やってはいけないケア(NG習慣)
- 洗浄力の強すぎるシャンプーを使う:皮脂を取りすぎて乾燥・広がりを悪化させます。
- 自然乾燥や半乾きのまま寝る:髪の水素結合が崩れたままで、形が固定されてしまいます。
- 高温アイロンを毎日使用:髪のタンパク質は60℃以上で変性が始まり、100℃を超えると不可逆的な変性を起こします。アイロンは140℃以下・短時間を目安にしましょう。
正しいケアとプロのコツ
① シャンプーは“アミノ酸系+CMC補修”
ダメージを補いながら洗えるシャンプーが理想。「ココイルグルタミン酸」「ココイルメチルタウリン」などの洗浄成分を選びましょう。
② トリートメントは“内部+外部”のダブル補修
内部補修:ケラチン/ヘマチン/加水分解シルク
外部補修:セラミド/18-MEA/γ-ドコサラクトン
乾かす前に毛先中心に塗布→粗めコームで均一にがポイント。
③ 乾かし方で8割決まる
根元から風を当てて立ち上げ、毛先に向かってキューティクルを閉じるように乾かします。ドライヤーは一箇所に集中させず、風を振りながら当て、最後に冷風で全体を引き締めるとツヤが出て再うねりも防げます。
また、ドライヤー前のオイルのつけすぎはNG。水分がこもって乾きにくくなります。
④ 見落としがちな頭皮ケア(未来の髪への投資)
毛穴の形を保つには、頭皮の弾力と血流を維持することが大切。シャンプー時に指の腹で頭皮を優しく動かし、全体を引き上げるようにマッサージしましょう。さらに、頭皮用美容液(スカルプエッセンス)で保湿と血行促進をサポート。
センブリエキスやグリチルリチン酸ジカリウムなどの成分は頭皮環境を整え、これから生えてくる髪をまっすぐ健康に育てる助けになります。日々の小さな積み重ねが、1年後の“扱いやすい髪”を作ります。
エイジング毛は「元に戻せる?」──プロの正直な答え
多くの人が「このうねり、元に戻せるの?」と感じますが、美容師としての正直な答えは「完全に戻すことは難しい」。ただし、見た目・質感・扱いやすさは確実に取り戻せます。
内部を補強しても、定着しないからこその“毎日のお手入れ”が必要。
頭皮のお手入れで「これから生えてくる毛を戻す」か、今ある髪を「維持させる」か。
その2つのアプローチが両立してこそ、髪に夢も希望も持てます。
どう変化していくのか
- 1週間目:手触りが柔らかくなる
- 2週間目:ブローの時間が短くなる
- 3〜4週間目:ツヤが出て、朝のうねりが減る
髪の内部に少しずつ補修成分を積み重ねることで、“スカスカだったご飯が詰まっていく巻き寿司”のように密度が戻り、ツヤとまとまりが復活していきます。
エイジング毛におすすめの成分とアイテム選び
- ヘマチン:酸化ダメージを防ぎ、パーマ・カラー後の残留物を除去。ケラチンと結合して髪内部を強化し、ハリ・コシを回復。
- γ-ドコサラクトン:熱反応型補修成分。ドライヤーやアイロンの熱を利用して毛髪アミノ酸と結合し、形状を“記憶”。うねり抑制の決め手。
- 18-MEA:キューティクル最外層の脂質。髪表面を疎水性に保ち、水を弾いてツヤを守る“天然のコーティング”。
- セラミド:乾燥毛を守る脂質成分。毛先のパサつきケアに◎
- ケラチン(加水分解):内部密度を上げ、まとまりを改善。
まとめ
「年齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまう前に、髪の変化に合ったケアへ切り替えるだけで扱いやすさは大きく変わります。
髪はケアをやめると、すぐにまた“うねりの記憶”を思い出します。だからこそ、毎日続けることが一番のエイジング対策です。
うねりや広がりを抑えるのに必要なのは、“強いアイロン”ではなく、“正しい補修と乾かし方”。美容師として20年以上現場に立つ中で実感しているのは、髪は年齢を重ねても、手をかけた分だけ必ず応えてくれるということ。今日から少しずつ、エイジング毛を「育てるケア」に変えていきましょう。
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。


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