白髪が増えると「何が悪かったんだろう」と思いますよね
いつもと同じところで髪を分けているだけなのに、前より白いものが目につく。染めたばかりなのに、根元が気になるまでの時間が短くなった気がする。
そういうとき、多くの方が最初に考えるのは、自分のことです。
「最近寝不足だったからかな」
「食事が適当だったな」
「仕事のストレスかな」
美容室でも、「最近寝不足だからですかね」「ストレスですかね」と相談されることがあります。白髪を見ると、ご自身の生活に原因を探したくなる方は少なくありません。
でも、白髪は「何か悪いことをした結果」として出てくるものではありません。生活習慣だけで決まるものでもありません。
この記事では、そもそも髪に色がつく仕組みはどうなっているのか、そこに何が起きると白髪になるのか、を順番に見ていきます。仕組みが分かると、余計な自己責任を背負わずに済みますし、「これは効きそう」「これは期待しすぎかも」の判断もしやすくなります。
少し専門的な話も出てきますが、難しい言葉が出たらすぐ言い換えます。気楽に読んでみてください。
そもそも、髪はどうして黒いのでしょう

髪そのものは、最初から黒い物質ではありません
髪が黒や茶色に見えるのは、毛が作られる途中で取り込まれるメラニンという色素が大きく関わっています。
髪は、頭皮の中にある毛包(もうほう)という袋のような場所で作られます。髪を作る小さな工場だと思ってください。
この工場では、髪の材料になる細胞がどんどん作られて、上へ押し上げられながら固まっていきます。そして、頭皮から外に出るころには、もう生きた細胞ではなく、固く角化した組織になっています。
つまり、私たちが手で触っている髪は、すでに完成して出荷されたあとの製品です。この点は、あとの話で大事になります。
色をつける担当が、工場の中にいます
その工場の中に、色をつける担当者がいます。メラノサイトと呼ばれる細胞です。
メラノサイトはメラニンという色素を作ります。このメラニンが、髪の材料になる細胞へ受け渡されて、髪の中に取り込まれます。
工場のたとえで言うなら、ベルトコンベアの横に色をつける担当者がいて、作られている髪へ色素を渡していくイメージです。取り込まれるメラニンの種類や量などによって、髪の色の見え方が変わります。
日本人の髪が黒く見えるのも、髪という素材が黒いからではなく、この工程で入ったメラニンの量と種類によるものです。
色素幹細胞という「控えの人材」
もうひとつ、覚えておくと理解が一気に進むものがあります。色素幹細胞(メラノサイト幹細胞)です。
髪は、ずっと同じ毛が伸び続けているわけではありません。伸びる時期、止まる時期、休む時期を繰り返しながら、生え替わっています。これを毛周期と呼びます。
髪が生え替わるということは、新しい髪を作るたびに、色をつける担当者も新しく用意しなければなりません。
そのための「控えの人材」が、色素幹細胞です。毛包の中の決まった場所に控えていて、新しい髪が作られるタイミングで、色をつける担当者へと育っていきます。
ここで大事なのは、色をつける仕組みは、毛周期と連動して回っているということ。髪が生え替わるたびに、色づけの体制も組み直されているのです。
近年の研究では、この色素幹細胞が毛包の中を移動しながら、状態を変えたり戻したりしていることが示されています。マウスを使った研究では、年齢を重ねるにつれて、決まった場所に留まったまま動かなくなり、色をつける担当者として働かなくなる細胞が増えていくことが報告されました。
「メラノサイトが死ぬから白髪になる」と一言で説明されることもありますが、実際の白髪化はもう少し複雑です。色素幹細胞の維持や分化、色素を作る細胞の働きなど、いくつもの段階が関わると考えられています。先ほどの工場のたとえなら、色をつける担当者を補充し、働いてもらう仕組み全体がうまく回りにくくなるというイメージです。
白髪は「黒い髪の色が抜けたもの」ではありません

ここ、誤解されていることが本当に多いところです。
先ほど書いたとおり、頭皮から出ている髪は、もう完成した製品です。生きた細胞ではありません。
ですから、今生えている黒い髪が、ある日突然、根元から毛先まで真っ白になる、というのが白髪の一般的な仕組みではありません。シャンプーの成分が毛の中の色素を溶かして白くする、といったことも起きていません。
白髪として見えているのは、新しく作られる部分に色素が十分入らないまま伸びてきた毛です。
染めていない髪を一本の毛として見ると、黒い部分と白い部分が途中で切り替わっていることもあります。これは、毛が伸びていた期間の中で色素の入り方が変化した可能性を示します。カラーや紫外線などで毛幹の色が変化している場合もあるため、見た目だけで原因までは判断できません。
髪は、伸びた記録がそのまま残る紙テープのようなものだと思ってください。色がついた時期、つかなかった時期が、そのまま一本の毛の中に記録されています。
ここだけ覚えておいてもらえたら
先に、要点だけまとめておきます。
白髪は、黒い髪の色が途中で抜けたものではありません。髪が作られるときに色をつける仕組みが、以前と同じようには働かなくなることで、色素の少ない毛が伸びてきている状態です。
その背景には、加齢と遺伝の影響が大きいことが分かっています。生活習慣だけが原因ではありません。
ストレス、栄養、病気との関連を調べた研究はいろいろありますが、どれも「これが原因」と一人ひとりに当てはめられるものではありません。ご自身で原因を決めつけなくて大丈夫です。
そして、確実に白髪を黒髪へ戻す方法は、今のところ確立していません。ただ、見え方を整える方法は、美容室にいくつもあります。
白髪が増える大きな理由
加齢
いちばん一般的な要因のひとつです。
年齢を重ねると、毛包の中で色をつける仕組みが、以前と同じようには働かなくなることがあります。色素幹細胞や毛包の色素形成システムが、加齢とともにうまく働きにくくなる仕組みについて研究が続いています。
ただ、ここで気をつけたいのが、「◯歳になったら白髪になる」という言い方ができないことです。
40歳でほとんど白髪のない方もいますし、20代後半から目立ち始める方もいます。同じ年齢でも、本数にはかなりの差があります。
「もう年だから仕方ない」と言われるのも、なんだか納得できないですよね。年齢は要因のひとつではありますが、それだけで決まるものでもありません。
遺伝
白髪が出始める時期や増え方には、遺伝的な要因が関わることが分かっています。
「親も早い時期から白髪が多かったので、自分もそうなりますか?」と聞かれることがあります。家族で似た傾向がみられることはありますが、同じ年齢・同じ本数になると決まっているわけではありません。
実際、6,000人以上を対象にした遺伝子の研究で、IRF4という遺伝子が白髪化と関連することが報告されています。この遺伝子は、もともとメラニンの生産や貯蔵に関わることが知られていたものです。
ただし、これは「白髪が100%遺伝で決まる」という意味ではありません。研究者自身も、遺伝子で説明できるのは一部で、年齢や環境の影響も関わると述べています。
親と同じ年齢で同じように白髪になる、と決まっているわけでもありません。「似る可能性はある」くらいに受け止めてもらえたらと思います。
色素を作る仕組みそのものの変化
加齢や遺伝という言葉の中身を、もう少し具体的に見てみます。
毛包の中では、色素幹細胞が育って、色をつける担当者になって、髪に色を入れて、また次の毛周期で入れ替わる、というサイクルが回っています。
このサイクルのどこかがうまくいかなくなると、色の入らない毛が生えてきます。
控えの人材(色素幹細胞)が減っていく
控えていても、現場に出て働く段階へ進めなくなる
色をつける担当者になっても、色素を作る力が落ちている
研究では、こうした複数の段階が白髪化に関わる可能性が検討されています。ひとつの原因だけではなく、色づけの仕組み全体にさまざまな変化が重なると考える方が現在の研究に沿っています。
なお、こうした研究の多くはマウスで行われたものです。人でも同じことが起きているかは、これから確かめられていく段階にあります。
酸化ストレス
美容の記事でよく見かける言葉ですが、ここは慎重に説明します。
人の白髪・灰色毛を調べた研究では、毛包や毛幹の色素形成に酸化ストレスが関わる可能性が示されています。過酸化水素の蓄積や、酸化に対処する仕組みの変化などが報告されており、メラニンを作る過程へ影響する可能性が研究されています。
ただし、酸化ストレスは白髪を説明する要素のひとつであって、すべての人の白髪を一つの仕組みで説明できるわけではありません。
ただ、ここから先に飛躍しないでほしいのです。
「酸化ストレスが関係している」ことと、「抗酸化のサプリや食品を摂れば白髪が黒くなる」ことは、まったく別の話です。体の中の特定の場所で起きている化学的な変化を、口から入れたもので狙いどおりに変えられるかどうかは、また別に検証が必要なことだからです。
現時点で、抗酸化サプリメントで白髪を予防できる、あるいは黒く戻せるという確立した根拠はありません。
ストレスで白髪になるって、本当なのでしょうか
「ストレスですかね?」
これは、白髪について美容室でいちばん多く聞かれる質問だと思います。そして、いちばん答えるのが難しい質問でもあります。
分かっていること
まず、研究としては、興味深いものがいくつかあります。
マウスを使った研究では、強い急性ストレスを与えると、交感神経が過剰に働いてノルアドレナリンという物質が大量に放出され、それによって色素幹細胞が一気に働き出したあと、毛包から失われてしまうことが示されました。しかも、この消失は元に戻らないタイプのものでした。
もうひとつ、人の髪を調べた研究もあります。一本の毛の色の変化を細かく測って時系列に並べ、その人の生活の出来事と照らし合わせたところ、強いストレスがあった時期と色が薄くなった部分が重なるケースがあった、という報告です。この研究では逆に、ストレスの強い時期が終わったあと、白かった部分が再び色を取り戻した毛も見つかっています。
でも、ここから先が大事です
こうした研究があるからといって、「日常のストレスの量から、その人の白髪を予測できる」わけではありません。
マウスの研究で使われたのは、かなり強い急性のストレスです。仕事が忙しい、子育てが大変、といった日々の負担とそのまま同じものではありません。
人の髪の研究も、対象になった人数が限られた探索的な研究です。「ストレスがあれば必ず白髪になる」「白髪があるならストレスのせい」と読み替えられるものではありません。
ですから、「ストレスですかね?」と聞かれたときに、美容師が「そうです」と原因を決めることはできません。
関係を調べた研究はあります。でも、目の前の白髪がストレスによって生じたのかを、見た目だけで判断することはできません。ストレスを減らせば白髪が減る、とも言えません。
「ストレスをなくしましょう」というアドバイスも、しません。なくせるものなら、とっくになくしているはずですから。
「一晩で白髪になった」という話は本当?
マリー・アントワネットが処刑前夜に一夜で白髪になった、という有名な話があります。似たエピソードは歴史上いくつも残っていて、こうした現象は今でも語られます。
ただ、すでに生えている黒い毛の色素が、一晩で全部消える。これは、一般的な仕組みとしては考えにくいことです。髪は、外に出た時点でもう完成した組織だからです。
では、そう見えた出来事は何だったのか。有力な説明のひとつが、急に進行するタイプの円形脱毛症です。
円形脱毛症では、色素のある毛が優先的に影響を受けやすく、白い毛は残りやすいという特徴が指摘されています。つまり、黒い毛だけが短期間でごっそり抜けて、もともと混ざっていた白い毛が残る。結果として、周囲からは「急に真っ白になった」ように見える、という説明です。
ただし、これも「すべての急激な白髪化がこの仕組み」というわけではありません。急に大きく変わったと感じる場合には、白髪だけの問題として片づけず、一度皮膚科で見てもらうのが安心だと思います。
栄養不足で白髪になるのでしょうか
「何を食べたら黒くなりますか?」
これもよく聞かれます。黒ごま、海藻、ひじき。いろいろな説がありますよね。
研究で調べられていること
早い時期に白髪が増えた方を対象にした研究では、いくつかの栄養素との関連が検討されています。
ビタミンB12
葉酸
鉄・フェリチン(体内の鉄の貯蔵量を反映する指標)
銅
亜鉛
ビタミンD
たとえば、インドで行われた研究では、ビタミンB12の不足や甲状腺の機能低下との関連が示された一方で、貧血やフェリチンとは関連が見られなかった、と報告されています。別の研究では逆に、フェリチンとの関連が示されたものもあります。
つまり、研究結果は一致していません。
メラニンを作る過程では、実際に銅などが酵素の働きに関わっています。だから理屈としては「関係しうる」のですが、それと「不足しているから白髪が増えている」を結びつけるのは、別の話です。
したがって、この記事では「白髪=◯◯不足」とは書きません。書けるだけの根拠がないからです。
サプリメントを飲めば黒くなる?
ここは、はっきり整理しておきます。
本当に特定の栄養素が不足している人が、その不足を補う。 これには意味があり得ます。ただし、本当に不足しているかどうかは自己判断では分かりません。必要に応じて医療機関で検査などを含めて判断されます。
不足していない人がたくさん飲む。 これで黒髪に戻るという根拠はありません。実際、ビオチンや亜鉛などを組み合わせて使った検討で、はっきりした効果が見られなかったという報告もあります。
そして、鉄・銅・亜鉛といったミネラルは、摂りすぎにも注意が必要なものです。「髪にいいらしいから」という理由で複数のサプリを重ねて飲むのは、あまりおすすめできません。
美容師が見た目だけで「鉄不足ですね」「ビタミン不足ですね」と判断することはできません。栄養状態の評価は、必要に応じて医療機関などで行う領域です。
気になるようでしたら、内科や皮膚科で相談してみてください。「白髪が急に増えて心配で」と伝えれば、必要かどうかを含めて判断してもらえます。
喫煙や生活習慣は関係する?
喫煙については、早い時期の白髪との関連を報告した研究がいくつかあります。関連が指摘されている、というところまでは言えます。
ただ、「タバコを吸うと必ず白髪になる」わけではありませんし、「禁煙すれば黒く戻る」という話でもありません。
睡眠不足についても、よく聞かれます。現時点では、睡眠時間だけから白髪の増加を説明できるほど明確な根拠は限られています。「最近寝不足だから、それが白髪の原因だ」と一つに決めつける必要はありません。
生活を整えることに意味がないと言いたいわけではありません。ただ、白髪の本数を、生活の点数表のように扱わなくていい、ということです。
白髪と病気の関係
ここは、不安をあおらないように慎重に書きます。
まず前提として、白髪の多くは、加齢や遺伝と関係する一般的な変化です。白髪があるから病気、ということではありません。
そのうえで、早い時期からの白髪や急な変化について、研究で関連が検討されているものがあります。
甲状腺の機能の異常
自己免疫に関わる疾患
尋常性白斑(皮膚の一部の色が抜ける状態)
悪性貧血(ビタミンB12の吸収に関わる状態)
円形脱毛症
先ほど紹介したインドの研究でも、甲状腺機能の低下との関連が示されていました。
ただし、繰り返しますが、
白髪がある=甲状腺の病気
若白髪=病気
白髪が増えたら血液検査が必須
このように一対一で結びつけることはできません。白髪だけで病気を推測するのではなく、年齢や変化の仕方、髪以外の症状も含めて考えることが大切です。
判断の目安になるのは、髪以外にも変化があるかどうかです。
強い疲労感が続いている
理由のない体重の増減がある
極端に寒がり、あるいは暑がりになった
動悸がする
皮膚に白く色が抜けた部分がある
髪が抜ける変化も同時に起きている
こうしたことが重なっている場合は、一度医療機関で相談してみる価値があります。そして、そこで何もなければ、それはそれで安心材料になります。
若白髪って、何歳からのことを言うのでしょう
「これって若白髪ですか?」というご質問もよくあります。
医学の研究では、premature canities(早発白髪)という言葉が使われます。よく引用される目安として、白人で20歳未満、アジア系で25歳未満、アフリカ系で30歳未満、という区切りがあります。
ただ、この数字の扱いには注意が必要です。
まず、これは研究のなかで対象者を決めるために使われてきた目安であって、「この年齢を過ぎていれば正常、それより早ければ異常」と診断できる確定した基準ではありません。実際、研究によって25歳未満を採用していたり、30歳未満を採用していたりと、ばらつきがあります。
そのため、日本人の読者にこの数字をそのまま当てはめて「25歳未満なら異常」と考えるものではありません。白髪の始まる年齢には大きな個人差があります。
大事なのは年齢の線引きより、急に、短期間で大きく変わったかどうか、そして髪以外にも変化があるかどうかです。
白髪が生えてくる場所に意味はある?
「こめかみのあたりから増えました」
「前髪の内側だけ白いんです」
「なぜか右側ばかり多くて」
こういうお話も、よく伺います。
白髪の出方に部位差がみられることはあります。一部の早発白髪の研究では側頭部や前頭部で目立つ例が多かったという報告もありますが、対象集団が限られており、すべての人に同じ順番が当てはまるわけではありません。
ただ、これも全員が同じ順番ではありません。頭頂部から気になり始める方も、生え際からの方もいます。左右で本数が違うのも珍しいことではありません。
ここで、はっきり書いておきたいことがあります。
「前髪の白髪は胃」「右側の白髪は肝臓」といった、白髪の位置と特定の内臓を対応させる信頼できる医学的な根拠は確認されていません。
白髪が生えている場所だけから、体の不調を判断しないようにしてください。
白髪を抜くと増える?
「1本抜いたら3本になるって言いますよね」と聞かれますが、そういうことは起こりません。ある毛穴の毛を抜いたことで、隣の毛穴の色づけの仕組みが変わるわけではないからです。
ただ、何度も同じ毛を抜くことは、頭皮や毛包への刺激になります。気になる場合は、頭皮を傷つけないよう注意しながら根元近くで短く切る方が、抜き続けるより負担を増やしにくいでしょう。切ったからといって、その毛穴から次に黒い毛が生えてくるわけではありません。
白髪染めをすると、白髪が増える?
「染め始めてから増えた気がするんです」
これも、しょっちゅう聞くお話です。
まず整理しておきたいのは、白髪染めをしたこと自体が、一般的な白髪化の原因になると確立されているわけではないということです。
酸化染毛剤は毛幹を染めるために使われますが、施術時には頭皮にも触れるため、刺激やアレルギーといった皮膚トラブルは別に考える必要があります。一方、加齢などに伴う白髪は、毛包内で新しく作られる毛への色素形成が変化する現象です。
「染め始めてから増えた」と感じる場合、染めた部分と新しく伸びた白い根元の境目が目立ちやすくなることや、白髪が増え始める時期と染め始める時期が重なっていることも考えられます。見た目だけから、カラーが白髪を増やしたと判断することはできません。
では、カラー剤で毛根が弱ることはないのでしょうか
ここは分けて考えてください。
「白髪が増える」という話と、「カラー剤による頭皮のトラブル」は、別の問題です。
ヘアカラー剤、特に酸化染毛剤は、皮膚に刺激を起こしたり、アレルギー反応の原因になったりすることがあります。公的機関からも注意喚起が出ています。これまで問題なく使えていた人でも、ある日突然アレルギーを起こすことがある、という点は知っておいてください。
そして、一度でもかゆみ・赤み・痛みなどの異常が出たことがある方は、その後の使用を避けること、自己判断でパッチテストを行わないことが呼びかけられています。
頭皮に強い赤みや湿疹、痛みがある状態で、繰り返し施術を続けるのがよいという意味でもありません。そういうときは、まず皮膚科で診てもらってください。
つまり、白髪染めをやめれば白髪そのものが減ると期待できる根拠はありません。一方で、頭皮に異常があるときに無理に染めるべきではありません。白髪化の仕組みと、染毛剤による皮膚トラブルは分けて考えることが大切です。
頭皮マッサージやシャンプーで、白髪は防げる?
頭皮マッサージ
「血行が良くなればメラノサイトが元気になって、黒い髪が生えてくる」
こういう説明を見かけますが、そう期待できる十分な根拠はありません。頭皮マッサージで白髪が減る、あるいは黒く戻る、という話は、現時点では裏づけられていません。
だからといって、マッサージが悪いわけではありません。気持ちがいいですし、リラックスできますし、頭皮に触れる習慣があると変化にも気づきやすくなります。そういう目的でされるぶんには、まったく問題ありません。
ただ、白髪の治療として期待して、毎日必死にやる必要はない、ということです。強くこすりすぎると、かえって頭皮の負担になります。
シャンプー
シャンプーは、髪と頭皮を洗うためのものです。毛包の奥にある色素幹細胞を回復させるための製品ではありません。
白髪を意識した名前や広告のシャンプーもありますが、一般的なシャンプーで毛包内の色素幹細胞を回復させ、白髪を黒く戻せるという確立した根拠はありません。商品名やイメージだけで、白髪そのものへの効果まで広げて考えないようにしてください。
なお、カラーシャンプーなど、毛幹へ色を補う製品もあります。これは生えている髪を着色して見え方を変えるケアであって、毛包で白髪が作られる仕組みそのものを治すものではありません。
白髪が黒髪へ戻ることはある?
これは、期待と現実の両方をきちんとお伝えしたい部分です。
まず、一般的な加齢性白髪が、自然に全体として元の黒髪へ戻ることを前提にはしない方がよいでしょう。
一方で、白かった毛が再び色を持つ現象(再色素化)が報告されていないわけではありません。
一部の毛で、色素が再び入ったという報告があります
ある病気の治療中や、特定の薬の使用中に、髪が再び色づいたという報告もあります
栄養の欠乏を是正したあとに変化が見られたという報告もあります
先ほど紹介した人の髪の研究でも、白くなった部分がその先で再び色づいた毛が実際に見つかっています
個々の毛で再び色がつく現象は研究で確認されていますが、それを誰にでも起こせるわけではありません。全体の白髪を意図的に元へ戻す、再現性のある標準的な方法が確立しているわけでもありません。
先ほどの研究では、色が戻りやすいのは「白髪になるかならないかの境目にある毛」ではないか、というモデルが提案されています。年齢を重ねて、境目をはるかに越えてしまった毛は戻りにくい、という考え方です。
ですから、この記事では「白髪は絶対に戻らない」とも「白髪は戻せる」とも書きません。戻ることが報告されている現象はあるが、一般的な加齢による白髪が戻ると期待できる段階ではない。今言えるのは、ここまでです。
今のところ、「確実に白髪を治すケア」はあるのでしょうか
正直にお答えします。
一般的な加齢性白髪を、確実かつ再現性高く黒髪へ戻す標準的な方法は、現時点では確立していません。
研究のテーマとしては、いろいろなものが動いています。色素幹細胞をどう維持するか、Wntと呼ばれる細胞への合図をどう調整するか、毛包の中の環境をどう整えるか、酸化ストレスにどう対応するか。世界中で調べられています。
ただ、これらは基礎研究の段階です。マウスでの実験結果を、今すぐ人のケアに置き換えることはできません。
「最新の研究で◯◯が白髪に効くと分かった」という広告を見かけたら、少し立ち止まってみてください。研究があることと、その商品が効くことは、別の話です。
がっかりさせてしまったかもしれません。でも、「治せません」で終わりにするつもりはありません。ここからが、美容室の出番です。
美容室でできること
私たちが白髪の原因を診断することはできません。そこは、はっきりしています。
白髪の医学的な原因の診断
栄養が足りているかどうかの判断
血液検査
甲状腺や自己免疫の病気の判断
サプリメントや薬による治療の指示
これらは、すべて医療の領域です。
でも、こういうことはできます。
白髪の見え方を、一緒に確認する。 どこに、どのくらい、どんなふうに出ているのか。全体に散っているのか、一か所に集まっているのか。実際に見てみると、思っていたのと違うことも結構あります。
染め方を相談する。 全体を染めるのか、根元だけなのか、頻度をどうするのか。生活のペースに合う方法を一緒に考えます。
目立ちにくいデザインを考える。 分け目の位置、前髪の作り方、レイヤーの入れ方。同じ本数でも、見え方はかなり変わります。
白髪を活かす方向も提案する。 暗く染めるだけが選択肢ではありません。
頭皮の見た目に気になる変化があれば、受診をすすめる。 赤み、湿疹、部分的な脱毛。そういうものに気づいたら、お伝えします。
白髪とどう付き合っていく?
「白髪があるなら、暗く染めるしかない」と思っている方がいますが、今はそうでもありません。
白髪染めできっちりカバーする
明るめの白髪染めで、重くならないようにする
ファッションカラーと組み合わせる
ハイライトを入れて、白髪との境目をぼかす
白髪ぼかしで、伸びてきたときの目立ち方をゆるやかにする
染める範囲や頻度を調整して、負担を減らす
染めるのをやめて、グレイヘアとして活かしていく
どれが良いという話ではありません。かける時間、コスト、髪や頭皮の状態、そして「どうありたいか」で選んでいくものだと思います。
「そろそろ染めるのをやめたいけれど、移行期間が不安」という場合も、染める範囲を少しずつ変えるなど、途中の見え方まで含めて美容師と計画できます。
白髪が増えたからといって、選択肢が減るわけではありません。

こんなときは医療機関へ相談を
白髪だけを理由に、慌てて受診する必要はありません。そのうえで、以下に当てはまる場合は、一度相談してみることを考えてみてください。
非常に若い時期から、急に白髪が増えた
以前と比べて短期間に大きく変化した
白髪だけでなく、髪が抜ける変化も同時に起きている
皮膚に白く色が抜けた部分がある
強い疲労感、体重の変化、寒がり・暑がりなど、体調の変化がある
頭皮に赤み、湿疹、痛みなどがある
自分でもどうしても不安で、気になって仕方ない
最後の項目も、ちゃんとした受診理由です。「こんなことで行っていいのかな」と思う必要はありません。
そして、ここでも自己診断はしないでください。「白髪が急に増えたから甲状腺だ」と決めつけるより、症状を伝えて判断してもらう方が、ずっと早くて確実です。
よくある質問
白髪は何歳から増えますか?
個人差がとても大きく、一律には言えません。20代から出る方も、50代でほとんどない方もいます。
メラニンって、髪以外にもありますか?
あります。肌や瞳の色にも関わる色素です。同じ「メラニン」でも、作られる場所と仕組みは少しずつ違います。
睡眠不足で白髪になりますか?
睡眠不足だけで白髪が増えると断定できる根拠は限られています。睡眠は体調全体に大切ですが、「寝不足だったから白髪になった」と自分を責める必要はありません。
ビタミンB12を飲めば黒くなりますか?
不足している人がそれを補う意味はあり得ますが、不足していない人が飲んで黒くなる根拠はありません。不足しているかどうかは検査が必要です。
血行を良くすれば黒髪が生えますか?
そう期待できる根拠はありません。マッサージ自体を楽しむのは構いません。
白髪を抜いたら増えますか?
1本抜いたことで隣の毛穴まで白髪になる、という仕組みではありません。ただ、同じ場所から繰り返し抜くことは刺激になるため、気になる場合は無理に抜き続けない方がよいでしょう。
白髪染めをやめたら白髪は減りますか?
白髪染めをやめることで、加齢などに伴う白髪そのものが減ると期待できる根拠はありません。ただし、染毛剤による頭皮トラブルは別の問題です。
カラーシャンプーで白髪は治りますか?
生えている髪へ色を補って見え方を変える製品です。白髪が作られる仕組みそのものを治すものではありません。
まとめ
白髪は、黒い髪の色が途中で抜けたものではありません。髪が作られるときに色をつける仕組みが、以前と同じようには働かなくなって、色の入らない毛が伸びてきている状態です。
そこには、加齢と遺伝の影響が大きく関わっています。生活習慣だけで決まるものではありませんし、あなたが何かを怠ったせいでもありません。
ストレス、栄養、喫煙、病気との関連を調べた研究はいろいろあります。どれも興味深いものですが、「あなたの白髪の原因はこれです」と特定できるものではありません。だから、ご自身で犯人を決めなくて大丈夫です。
一般的な加齢性白髪を確実に黒く戻す標準的な方法は、今のところ確立していません。サプリメントやシャンプーで簡単に解決できると考えない方がよいでしょう。
でも、何もできないわけではありません。染め方、切り方、分け目の位置、白髪を活かすという選択。見え方を整える方法は、いくつもあります。
そして、急な変化や体調の変化を伴うときは、髪の話としてではなく、体の話として一度見てもらってください。それも、立派な選択肢のひとつです。
鏡の前で白いものを見つけた日に、自分を責めなくて済みますように。気になることがあれば、次にお会いしたときに聞かせてください。
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。
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