「ノンシリコンのほうが、髪にいいんですか?」
シャンプー台で髪を流しながら、この質問を本当によくいただきます。
「シリコンって毛穴に詰まるんですよね?」
「ノンシリコンのほうが頭皮にやさしいって聞いて」
「でも変えたらギシギシして、結局戻しちゃって……」
どれも、聞いたことがあるお話だと思います。そしてどれも、ちょっとずつ事情が違います。
この記事では、シリコンという成分が何のために入っているのか、そして「入っている/入っていない」で何がどこまで分かるのかを、鏡の前でお話しするときと同じ言葉で整理していきます。
むずかしい成分名も出てきますが、覚えなくて大丈夫です。最後に「じゃあ私はどっちを選べばいいの?」という答えまでたどり着けるように書きました。
先に結論|シリコンの有無だけでは、シャンプーの良し悪しは決まりません
いちばん大事なところから、先にお伝えします。
シリコーンは、髪の表面の手触りや摩擦、まとまりを調整するために使われている成分群のひとつです。
これは「良い成分」でも「悪い成分」でもなく、役割を持ったパーツだと思ってください。ネジや歯車と同じで、そこにあるだけでは製品全体の良し悪しは決まりません。
そして、もうひとつ大事なこと。
「ノンシリコン」という表示は、一般にシリコーン系成分を配合していないことを示す訴求として使われています。
洗浄力が強いのか穏やかなのか、刺激が出にくいのか、しっとり仕上がるのか、ダメージ毛を扱いやすくする設計なのか——そういったことまでは、「ノンシリコン」という表示だけでは分かりません。
だからこの記事は、「ノンシリコンをおすすめする記事」でも「シリコン入りをおすすめする記事」でもありません。あなたの頭皮と髪に合うかどうかで選べるようになる記事です。
シリコンとシリコーン、実は少し違います
まず、ひとつだけ言葉の整理をさせてください。
美容の会話では「シリコンシャンプー」「ノンシリコン」という言い方が一般的ですよね。でも化学的には、こう分かれます。
シリコン(silicon)……ケイ素という「元素」の名前
シリコーン(silicone)……シロキサン結合(Si–O)というつながりを繰り返し持つ、高分子・化合物のグループ
ヘアケア製品に配合されているのは、一般的には後者のシリコーンのほうです。
ただ、毎回「シリコーン」と堅く書くと読みにくいので、この記事では一般的な呼び方に合わせて「シリコン」という言葉も使います。正確にはシリコーンのことだと、頭の片隅に置いていただければ十分です。
シリコーンは、何のために入っている?

ここが、この記事のいちばんの本題です。
濡れた髪をとかそうとして、指が引っかかった経験はありませんか。あの引っかかりの正体は摩擦です。
髪の表面には本来、18-MEA(18-メチルエイコサン酸)という脂質の層があって、これが髪をなめらかで水をはじく状態に保っています。ところが、ブリーチやカラーなどの化学処理、アイロンなどの熱処理、毎日のブラッシングといった機械的な摩擦は、この層の減少を早めることが毛髪摩擦の研究レビューで整理されています。この層が失われると毛髪表面の摩擦が上がりやすくなり、指通りやくし通りが悪く感じる一因になります。
シリコーンは、この表面の摩擦をコントロールするために使われる成分です。
毛髪表面に薄い膜として付着することで、主にこういう目的で配合されています。
摩擦を減らす
指通り・くし通りをよくする
からまりを減らす
ブラッシングのときの負担を減らす
ツヤを出す(光を反射しやすい表面になるため)
表面をなめらかに感じさせる
広がりやパサつき感を抑える
湿気の影響を受けにくい仕上がりを設計する
カラーやブリーチなど、化学処理をした髪の扱いやすさを助ける
2025年に発表されたシリコーンのレビューでも、シリコーンは毛髪表面に膜を作って摩擦を減らし、水分の損失を抑え、ツヤを与える成分として整理されています。毛髪摩擦のレビューでも、コンディショニング製品は表面に成分を沈着させることで、摩擦を一時的にバージン毛に近いレベルまで下げられると報告されています。
ここは絶対に誤解しないでください
同時に、シリコーンが「できないこと」もはっきりさせておきます。
✕ シリコンが髪を治す
✕ ダメージを完全に元通りにする
✕ キューティクルが再生する
✕ 髪が生き返る
これは、どれも違います。
髪の毛(毛幹)は、すでに角化した——つまり細胞としての活動を終えた組織です。自分で修復する力はありません。
だからシリコーンがしているのは、傷んだ部分を治療することではなく、毛髪表面の性質を一時的に整えて、扱いやすくすることです。
例えるなら、ささくれ立った木の板の表面をコーティングして、手触りをなめらかにするイメージです。傷そのものが元通りになったわけではありませんが、表面の滑りが変われば、次の摩擦を減らす助けになります。
そしてこの「扱いやすくすること」には、ちゃんと意味があります。摩擦が減れば、ブラッシングやとかす動作で髪に加わる負担も減るからです。
髪はシリコンで「呼吸できなくなる」?
ノンシリコンをすすめる説明で、「シリコンで髪をコーティングすると呼吸できなくなる」という言い方を見かけます。
これは、成り立たない説明です。
頭皮から外に出ている髪は、先ほどお伝えしたとおり角化した組織です。肺のようにガス交換をしているわけではありません。ですから「呼吸をふさぐから悪い」という理屈は、そもそも前提が違っています。2025年のレビューでも、シリコーンが髪を「窒息させる」というのは代表的な誤解として挙げられています。
ただし——ここも大事です。
「呼吸していないなら、何をどれだけ塗っても問題ない」という話にはなりません。
つけすぎれば重くなりますし、ベタつきや扱いにくさにつながることもあります。これは呼吸の問題ではなく、単純に量と相性の問題です。
シリコンは毛穴に詰まる?
いちばん多いご質問です。
「シリコンが毛穴を塞いで、毛根が窒息して、抜け毛になる」——この説明、本当によく聞きますよね。
ですが、通常のヘアケア製品に配合されるシリコーンが、毛穴を物理的に塞いで毛根を窒息させることで脱毛を起こす、という標準的な仕組みは確認されていません。
シリコーンは、シャンプーやコンディショナー、スタイリング剤など多くのヘアケア製品で長く使われてきた成分群です。
ただし、「毛穴を塞いで毛根を窒息させる」という説明を直接裏づける臨床データは、今回確認した資料では見当たりませんでした。
では「シリコン入りなら頭皮トラブルはゼロ」か?
いいえ。そこも違います。
どんなシャンプーでも、化粧品でも、頭皮に合わないことはあります。関係しうるのは、たとえば——
洗浄成分の種類と濃度
香料
防腐剤
その他の配合成分
そのときの皮膚の状態(乾燥、湿疹、季節、体調など)
シャンプーによる接触皮膚炎では、洗浄成分・香料・防腐剤など、さまざまな成分が原因になることがあります。つまり、頭皮トラブルをシリコーンだけで説明することはできません。
ここから導ける実用的な結論はひとつです。
頭皮との相性を、「シリコンの有無だけ」で判断しないでください。
シリコンで抜け毛が増える?
慎重にお話しします。
「シリコーン入りシャンプーを使うと、一般的な脱毛症になる」——これを支持する根拠は、確認できませんでした。
シリコーンについてまとめられたレビューでも、議論の中心になっているのは毛髪への蓄積(ビルドアップ)と、その除去に強い洗浄が必要になること、そして環境影響であって、脱毛症の原因としては扱われていません。
ですので、この記事ではこう書きます。
「シリコンが毛穴を詰まらせて抜け毛を起こす」という単純な説明は、支持されていません。
一方で、「シリコンは絶対に抜け毛と無関係」「どんなヘアケア製品も抜け毛に影響しない」と言い切ることもしません。
たとえば、ある製品が肌に合わずに強いかぶれや炎症を起こしたとしたら、それは「シリコンの問題」ではなく、皮膚のトラブルとして別に対応が必要な問題になります。頭皮に強い炎症が続く状態は、髪にとっても良い環境ではありません。
だからこそ、抜け毛が急に増えたときに「シリコンのせいだ」と自己診断してシャンプーを変え続けるより、後述する皮膚科に相談したいケースを思い出していただきたいのです。
ここだけ覚えればOK
途中ですが、ここまでを1枚のメモにまとめます。ここだけ持ち帰っていただければ十分です。
ここだけ覚えればOK
シリコーンは、髪の表面をなめらかにして、摩擦やからまりを減らすために使われる成分のひとつです。
入っているから悪いわけでも、入っていないからやさしいわけでもありません。
シャンプーを見るときは、
「ノンシリコンかどうか」より、頭皮に合うか、髪が扱いやすくなるか。
これだけ覚えておいてください。
ノンシリコンは頭皮にやさしい?
答えは、「ノンシリコンというだけでは判断できません」です。
シャンプーの使用感や刺激の出やすさに関わる要素を並べてみます。
洗浄成分(サーファクタント)の種類
その配合濃度
香料
防腐剤
pH
一緒に入っているコンディショニング成分
洗い方(力の入れ方、すすぎ時間、湯温)
そのときの頭皮の状態
——シリコンの有無は、この長いリストの中の1項目にすぎません。
シャンプーは、洗浄成分だけでなく、使用感や安定性を調整する成分、コンディショニング成分など、多くの成分を組み合わせて作られています。単一成分だけでなく、処方全体で使用感が決まると考えることが大切です。
ですから、
ノンシリコン=低刺激 ではありません
シリコン入り=刺激が強い でもありません
「ノンシリコンにしたら頭皮がラクになった」という方は実際にいらっしゃいますが、そのとき変わっているのは、たいていシリコンだけではありません。この話は後ほど詳しく書きます。
ノンシリコン=無添加・天然・サルフェートフリーではありません

ここははっきり分けておきます。
ノンシリコン=無添加?
違います。
「ノンシリコン」は、一般にシリコーン系成分を配合していないことを示す表示として使われています。
そこから、
香料無添加
防腐剤無添加
合成成分なし
天然100%
オーガニック
低刺激
——これらは一切導けません。
ノンシリコンで香料も防腐剤もしっかり入っている製品は、まったく普通に存在します。
ノンシリコン=サルフェートフリー?
これも完全に別の話です。混同されやすいので、丁寧にいきます。
シリコーンは、コンディショニング成分(手触り・摩擦を調整する側)
サルフェート系(ラウリル硫酸Naなど)は、洗浄成分の分類に関わる話
つまり、担当している仕事が違います。
だから、こういう組み合わせが全部あり得ます。
ノンシリコンだけど、洗浄はしっかり強め
ノンシリコンで、洗浄も穏やか
シリコーン入りだけど、洗浄設計は穏やか
シリコーン入りで、洗浄も強め
「ノンシリコンだから洗浄力も優しいはず」——これは残念ながら、成り立ちません。製品全体の処方を見る必要があります。
そもそも、シャンプーにシリコンを入れる意味は?
「どうせあとでトリートメントをつけるのに、シャンプーにシリコンを入れる意味あるの?」
これも鋭いご質問です。
古くからある技術に、2-in-1シャンプーというものがあります。1994年に報告された設計では、ジメチコンを電荷的に中性のまま微細な粒子としてシャンプー中に安定して分散させておき、すすぎのときに水で構造が崩れることで、ジメチコンの粒子が髪に付着する、という仕組みが説明されています。
洗いながら、すすぎの瞬間にコンディショニングもする。そういう設計です。
その報告の中では、次に洗うときに、汚れと一緒に前回付着したジメチコンも先に落ちるため、ビルドアップは問題にならなかったとも述べられています。
ただし、ここは注意してください。
すべてのシリコーン入りシャンプーが、同じ仕組みで作られているわけではありません。
これは1990年代の特定の技術についての報告であって、現代のあらゆるシャンプーに一般化できるものではありません。カチオン性ポリマーを使う設計、オイルと組み合わせる設計など、コンディショニングのやり方は複数あります。処方設計次第です。
成分表ではどんな名前?
成分表を見るときのために、代表的な表示名称を挙げておきます。
ジメチコン
アモジメチコン
ジメチコノール
シクロペンタシロキサン
フェニルトリメチコン
ほかにも「〜メチコン」「〜シロキサン」「シリル」などを含む名称が該当することがあります。
日本の化粧品では全成分表示が行われ、厚生労働省通知では成分名を原則として配合量の多い順に記載します。ただし、1%以下の成分と着色剤は順不同で差し支えないとされています。
ここから、大事な注意がふたつ出てきます。
ひとつめ。この名前があったら悪い、というリストにはしないでください。
シリコーンには性質の異なる種類がたくさんあります。名前が載っているというだけで良し悪しは決まりません。
ふたつめ。成分表を見ても、使用感や毛髪への付着量までは正確には分かりません。
1%以下は順不同ですから、後ろのほうに書いてあっても実際の配合量までは読み取れません。そして先ほど触れたとおり、成分どうしの組み合わせ方が仕上がりを大きく左右します。
成分表は「何が入っているか」の地図であって、「どう仕上がるか」の答えではない、と思っていただくのがちょうどいいと思います。
シリコンにも、いろいろな種類があります
「シリコンは水に溶けないから、全部たまる」
この説明は、少し単純すぎます。
シリコーンは、次のような点で性質が分かれます。
分子量(大きいか小さいか)
揮発性(塗ったあと蒸発するかどうか)
水への溶解性・分散性
毛髪への付着のしやすさ
アミノ変性などの化学修飾の有無
2025年のレビューでは、シリコーンを水への溶けやすさ、揮発性、化学修飾など複数の軸で整理しています。分類は重なることがあります。
水に溶けにくいタイプ……ジメチコンなど。造膜性やコンディショニングに使われ、処方や使用状況によっては蓄積が論点になります
水に分散・溶解しやすいタイプ……比較的すすぎやすい設計に使われます
揮発性タイプ……シクロペンタシロキサンなど。塗布後に揮発し、軽い使用感を作る目的で使われます
アミノ変性タイプ……アモジメチコンなど。毛髪表面との静電的な相互作用を利用してコンディショニングする設計があります
アモジメチコンについては、傷んだ毛髪表面へ選択的に付着しやすいという説明がレビューにあります。ただし、「ダメージ部分だけを見つけて完全補修する」ような意味ではありません。
さらに、水に分散しやすいタイプやナノ化されたタイプなど、蓄積や環境負荷を抑えることを目的とした新しい設計も開発が進んでいる、とレビューでは紹介されています。
ですので、
✕「シリコンは水に溶けないから全部蓄積する」
✕「今どきのシリコンは絶対に蓄積しない」
どちらも正確ではありません。 製品の処方、シリコーンの種類、使用量、他のヘアケア製品との重ね使いによって変わります。
「シリコンが蓄積する」は本当?
ここは、両方の話を紹介させてください。どちらか一方だけを載せると、正しくない記事になります。
蓄積が論点として挙げられている側の話
2025年のレビューでは、水に溶けにくいシリコーンは毛髪へ蓄積する場合があり、その除去に比較的強い洗浄が使われること、クラリファイング製品を過度に使えば乾燥につながりうることが論点として挙げられています。
問題にならない設計も報告されている側の話
一方、先ほどの2-in-1シャンプーの報告では、次に洗うときに前回付着したジメチコンが先に除去されるため、ビルドアップは起きなかったと述べられています。
つまり——
「シリコンは必ず蓄積する」も、「シリコンは絶対に蓄積しない」も、どちらも正確ではありません。
シリコーンの種類、製品の設計、使用量、他製品との重ね使いなどで変わります。
実際のサロンでも、「重い」と感じる原因がシャンプーだけとは限りません。アウトバス、オイル、バーム、トリートメントなど、重ねている製品全体を見直すほうが原因を探しやすいです。
ビルドアップって何?
「ビルドアップ」という言葉が出てきたので、ここで説明します。
ビルドアップは、毛髪の表面にいろいろなものが重なって残っている状態をざっくり指す言い方です。
原因になりうるのは、シリコンだけではありません。
コンディショニング成分
オイル類
スタイリング剤(ワックス、スプレー、バーム)
カチオン性ポリマーなどのポリマー類
水道水に含まれるミネラル
そのほかの製品の残留
これらが重なると、人によってはこんなふうに感じます。
髪が重い
ベタッとする
根元が立ち上がらない、ボリュームが出にくい
乾きにくい気がする
手触りがいつもと違う
ここでお願いしたいのは、これを全部「シリコン詰まり」「シリコン膜」と決めつけないでいただきたいということです。
実際には、オイルやバームの量、トリートメントのつけ方、スタイリング剤、すすぎなども一緒に確認する必要があります。
シリコン除去・「デトックス」は必要?
「シリコン除去シャンプー」「シリコンリムーバー」——検索するとたくさん出てきます。
でも、重さやベタつきが気になったとき、いきなり強い洗浄に飛ばないでください。
先に試していただきたいのは、こちらです。
今使っている製品の使用量を見直す
重いアウトバス製品を重ねすぎていないか確認する
トリートメントは製品の使用方法に合わせ、必要以上に根元へ重ねない
使っている製品を一度シンプルにする
普段のシャンプーを十分にすすぐ
これだけでも、重さの原因を切り分けやすくなります。
そのうえで、必要に応じて洗浄力の高いクラリファイングシャンプー(いわゆるリセット系)が使われることはあります。
ただし、強い洗浄を必要以上に繰り返せば乾燥や手触り悪化につながることがあります。特にブリーチなどでダメージが大きい髪では、自己流で頻繁に使うより、製品表示や美容師の判断を参考にしてください。
ですので、この記事では「週1回のリセットが必須」といった固定のルールは置きません。
必要になったときに、必要な分だけ。 そして使ったあとは、しっかりコンディショニングをする。これで十分です。
ノンシリコンだと、なぜきしむことがある?
「ノンシリコンにしたら、流すときにキシキシして……」
これは、理屈がはっきりしています。
シリコーンなどのコンディショニング成分は、毛髪表面の滑りを作る役割をしています。それが減れば、洗ったあとの摩擦は上がりやすくなります。特に洗髪中やすすぎ時に毛髪表面の滑りが少なければ、「きしむ」と感じやすくなります。
ただし——ここが大事なのですが、
ノンシリコン=必ずきしむ、ではありません。
ノンシリコン処方でも、
カチオン性ポリマー(ポリクオタニウム類など)
各種の油剤・脂肪アルコール
その他のコンディショニング成分
これらを使って、指通りをきちんと設計している製品はたくさんあります。コンディショニング成分は、ポリマー、オイル、ワックス、加水分解アミノ酸、カチオン性の分子など複数のグループに分かれていて、シリコーンはその中の代表格のひとつにすぎません。
ですから、ノンシリコンを試すなら「きしむものだ」と決めつけず、きしまないノンシリコン製品を探すほうが建設的です。
細毛・猫っ毛ならノンシリコン?
一律には言えません。
細い髪では、重めのコンディショニング処方によって「ぺたんとする」「立ち上がらない」と感じることがあります。これは実際にあります。
でも、その場合の選択肢はノンシリコン一択ではありません。
揮発性の軽いシリコーン(シクロペンタシロキサンなど)を使った製品
シリコーンの配合量が少ない、軽い設計の製品
ノンシリコン製品
軽めのトリートメントに変える
トリートメントをつける範囲を毛先だけに変える
2025年のレビューでは、細くボリュームが出にくい髪では、揮発性や水に分散・溶解しやすいシリコーンを選択肢とする実用的な提案がされています。ただし、これはノンシリコンとの優劣を示した大規模比較試験ではありません。
ですので、
「猫っ毛だからノンシリコン」という決めつけは、しないでください。
軽く仕上がる処方を選ぶ、が正解です。
くせ毛・広がる髪・剛毛なら?
摩擦、乾燥感、広がり、絡まりが気になるタイプの髪では、シリコーンを含むコンディショニング処方が使いやすいことがよくあります。
2025年のレビューでは、太い髪やカールのある髪について、シリコーンの種類を使い分ける実用的な提案があります。ただし、髪質ごとの「正解」を臨床試験で確立したものではありません。
ただし——
髪質だけで「必ずシリコン入り」と決めないでください。
同じくせ毛でも、細くて広がる方と、太くて硬い方では、必要な重さがまるで違います。
判断の基準は、いつも同じです。乾かしたあとの仕上がりで決めてください。
ブリーチ・カラー・縮毛矯正毛なら?
ここは、美容師として実用的にお話しします。
ブリーチ、カラー、縮毛矯正、パーマ、アイロンなどの熱処理、そして日常の摩擦。これらによって毛髪表面が損傷すると、摩擦は上がりやすくなります。表面の脂質層が減り、髪がよりマイナスに帯電し、水を吸いやすい状態になるためです。
そして、化学処理をした髪はコンディショニング成分がつきやすい状態でもあります。バージン毛より多孔質で、マイナスの部位が多いためです。
ですから、条件によっては、シリコーンなどのコンディショニング成分で摩擦を減らすことが、扱いやすさ・からまり防止・ブラッシング時の負担軽減に役立ちます。2025年のレビューでは、シリコーンがブリーチ毛や染毛毛の摩擦を減らし、切れ毛を減らす方向に役立つという報告が整理されています。
つまり、こういうことです。
強いダメージ毛に対して、「ノンシリコンのほうが髪に良い」と一律にはおすすめしません。
「ブリーチしているから、余計なものは避けたほうがいい」と考えて、ギシギシのまま無理にとかしている——これは、髪にとってむしろ負担が大きい状態です。
「ブリーチ毛にはシリコンが必要」?
そこまでは言いません。「絶対に必要」ではありません。
シリコーンだけがダメージ毛のケア成分ではないからです。オイル類、カチオン性ポリマー、加水分解タンパクなど、摩擦を下げる手段はほかにもあります。
現実的な着地は、こうです。
ブリーチ毛でノンシリコンを使ってはいけないわけではありません。ただし、きしみ・絡まりが強いなら、「シリコンを避けること」を優先する必要はありません。
とかすときに引っかかるかどうか。そこで判断してください。
頭皮がベタつくなら?
「ベタつくからノンシリコンに変えたい」というご相談も多いです。
でも、頭皮のベタつきに関係する要素は、こんなにあります。
皮脂の分泌量(体質、季節、ホルモン、年齢)
洗浄力と洗い方
すすぎの不足
スタイリング剤の残り
コンディショナーやトリートメントを根元につけている
頭皮そのものの皮膚の状態
まず確認したいのは、洗浄力・すすぎ・スタイリング剤・トリートメントのつけ方などです。
そして、「ノンシリコンに変えれば皮脂分泌が減る」とは言えません。
シャンプーは頭皮を強くこすらず洗い、十分にすすぎます。コンディショナーやトリートメントは、その製品の使用方法に従って使ってください。毛先用の製品を必要以上に頭皮へ重ねないことも大切です。
敏感肌なら?
これも、「ノンシリコンだから安全」ではありません。
頭皮に、
かゆみ
赤み
湿疹
痛み
フケ
ヒリつき
こうした症状があるとき、シリコンだけを犯人にすると、本当の原因を見逃してしまいます。
シャンプーによる接触皮膚炎では、洗浄成分・香料・防腐剤など複数の原因が知られています。「シリコンだから」と自己判断で決めつけないことが大切です。
新しい製品へ変えた直後に症状が出た場合は、その製品の使用を中止して様子を見ます。強い症状や続く症状がある場合、あるいは原因が分からない場合は、皮膚科へ相談してください。
シリコン入りだと、カラーやパーマに影響する?
美容師として、いちばん誤解を解きたいところです。
「シリコン入りだとカラーが染まらない」?
この一般化は、しないでください。
毛髪表面にシリコーン・オイル・ポリマー・スタイリング剤などが多く残っていれば、施術前の濡れ方や操作性が普段と違って感じられることはあります。ただし、シリコーン入りシャンプーの使用だけで染毛結果が悪くなることを直接示す十分な臨床データは確認できませんでした。
でも、「シリコン入りシャンプーを使っているとカラーが入らない」というのは、飛躍しすぎです。
実際の施術では、美容師が
髪のダメージレベル
既存の被膜感(触ってみたときの感触)
スタイリング剤やオイルの残り
ホームカラーの履歴
使う薬剤
これらを見ながら判断しています。必要なら、施術前に洗浄や前処理を入れます。それも含めて技術です。
ですので、カラーの前に「シリコン入りシャンプーを使っていました」と怯えていただく必要はありません。むしろ、「最近こういう製品を使っています」と伝えていただけると助かります。そのほうが判断が正確になります。
「パーマ・縮毛矯正がかからなくなる」?
同じです。
「シリコンが髪を完全にコーティングして薬剤が一切入らなくなる」——この単純化は正しくありません。
一方で、油剤・ポリマー・スタイリング剤などを含め、毛髪表面の付着物が多い場合は、施術前の洗浄や前処理を検討することがあります。
これは、美容師が実際に髪を見て、触って判断する領域です。成分表を見て自宅で判断する話ではありません。
「シリコン入りだと色落ちが早い」?
早くなる/遅くなる、どちらも断定できるだけの根拠は確認できませんでした。
2025年のレビューでは、フェニルトリメチコンがツヤや色持ちに役立ちうるという記述があります。ただし、これはレビュー内の整理であり、「シリコーン入りシャンプーならカラーが長持ちする」と一般化できる話ではありません。
ただし、これは特定のシリコーンについての整理であって、シリコーンが入った完成品すべてに同じ効果があるわけではありません。
色持ちには、カラー剤の種類、髪の状態、洗う頻度、お湯の温度、紫外線、熱処理など多くの要因が関わります。シャンプーのシリコンの有無だけで語れる話ではない、というのが正直なところです。
熱ダメージとの関係
「シリコンって、アイロンの熱から守ってくれるんですよね?」
慎重にお答えします。
一部のシリコーンを含む製品が、熱処理時の摩擦や熱の伝わり方を調整し、毛髪を保護する目的で使われることはあります。ヘアケア化粧品のレビューや2025年のシリコーンレビューでは、一部のシリコーンが熱処理時の毛髪保護を目的として使われることが説明されています。
ただし——ここは絶対に譲れないところです。
「シリコン入りなら、アイロンを何度使っても大丈夫」ということは、絶対にありません。
高温での反復的な熱処理は、毛髪のダメージにつながります。同じ箇所に何度もアイロンを当てる使い方は、髪のタンパク質にとって非常に負担が大きい行為だと報告されています。
熱保護剤を使っていても、高温を繰り返せばダメージは起こり得ます。温度や回数は髪の状態に合わせ、同じ場所への反復をできるだけ避けてください。製品の使用方法にも従います。
「シリコンで髪が傷む」は?
整理します。
通常の使用で、シリコーンそのものが毛髪を傷ませる、とは単純には言えません。 むしろ、摩擦を減らす目的で使われている成分です。
ただし、こういう経路はあり得ます。
シリコーンが重く感じる
→ 気になって強い洗浄のシャンプーを頻繁に使うようになる
→ その洗浄による乾燥・負担が問題になる
2025年のレビューでも、水に溶けにくいシリコーンの除去には強い界面活性剤が必要で、それが繊細な髪には過酷になりうる、と指摘されています。
ここで大事なのは、原因を混同しないことです。
このような場合は、シリコーンそのものと、残留感を取ろうとして行う強い洗浄の影響を分けて考える必要があります。
「ノンシリコンに変えたら髪が健康になった」
こういうお話も、実際にたくさん伺います。
そして、このご経験を否定するつもりはまったくありません。 実際に調子が良くなった方はいらっしゃいますし、その感覚は本物です。
ただ、変更したときに何が起きているかを、一緒に見てみてください。
シャンプーを変えると、同時に変わっているのは——
洗浄成分の種類と強さ
pH
油剤の量と種類
ポリマーの種類
香料
コンディショニング成分全般
そして多くの場合、使用量や洗い方まで(新しい製品は丁寧に使いますよね)
つまり、変わったのはシリコンだけではありません。
ですから、
改善=シリコンを抜いた効果
とは、一つに決められないのです。
でも、これは悪い知らせではありません。むしろ逆です。「シリコンかどうか」という1つの軸に縛られず、合う製品を自由に探していいということだからです。
シャンプーとトリートメントは、別に考えていい
ここも大事なポイントです。
ノンシリコンシャンプーを使いながら、シリコーン入りのトリートメントを使う。
これは、まったく矛盾していません。むしろ、そういう組み合わせで設計されている製品はごく普通にあります。
理由はシンプルで、役割が違うからです。
シャンプー……主に洗浄。頭皮と髪の汚れ・余分な皮脂を落とす
トリートメント/コンディショナー……主に毛髪表面のコンディショニング。摩擦を下げ、手触りを整える
一般的な毛髪用コンディショナーは中間〜毛先へ使う製品が多いですが、頭皮にも使うことを前提に設計された製品もあります。最終的には製品表示に従ってください。
ですので、
「ノンシリコン生活をするなら、トリートメントも全部シリコンなしにしないと意味がない」——そんなことはありません。
シャンプーは頭皮に合うものを、トリートメントは毛先に必要なものを。分けて考えて大丈夫です。
頭皮と毛先を、同じ基準で選ばない
もう少し踏み込みます。
頭皮は「皮膚」です。毛先は「角化した毛髪」です。
必要としているものが、そもそも違います。
たとえば、こういう方はとても多いです。
頭皮は脂っぽくて、さっぱり洗いたい。
でも毛先はブリーチを繰り返していて、かなり傷んでいる。
このように、頭皮と毛先で求める仕上がりが違うことは珍しくありません。シャンプー1本だけで、頭皮の快適さとダメージ毛の手触りをすべて調整しようとすると難しい場合があります。
現実的な答えは、組み合わせです。
頭皮に合うシャンプー + 毛先にしっかりコンディショナー・トリートメント
シャンプーで全部を背負わせない。これだけで、選択がずいぶんラクになります。

シャンプーを選ぶなら、この順番
ここまでの話を、実際の選び方に落とします。上から順に見てください。
1.頭皮にトラブルがないか
かゆい、赤い、痛い、フケが急に増えた——こういう状態なら、成分比較より先に状態の確認です。成分表を読み比べる前に、まず今の製品を止めて様子を見る。続くなら皮膚科へ。ここが最優先です。
2.洗い上がりはどうか
洗ったあと、つっぱる? 乾燥する? それともベタつきが残る?
これは洗浄設計との相性を教えてくれる、いちばん分かりやすいサインです。
3.髪のダメージレベル
ブリーチ・カラーの履歴、縮毛矯正やパーマ、アイロンの頻度、そしてとかしたときの絡まり具合。
濡れた髪をとかすときに強く引っかかるなら、ダメージ状態やコンディショニング方法を見直す目安になります。
4.仕上がりの好み
乾かしたあと、軽さがほしい? ボリュームがほしい? まとまりがほしい? 広がりを抑えたい?
ここは好みの領域です。正解はありません。
5.最後に、シリコンの有無
ここまで見てきて、初めてシリコンの話が出てきます。
シリコンの有無は、判断材料のひとつにすぎません。 1番から4番のほうが、圧倒的に大事です。
結局、私はどっち?
いちばん知りたいところですよね。目安をお伝えします。
ノンシリコンを試してもよい人
今の製品だと、乾かしたあとに重く感じる
細毛・猫っ毛で、ぺたんとしやすい
根元の立ち上がりがほしい
軽い仕上がりが好み
実際にノンシリコン製品の使用感が自分に合っている
ただし、「この人には絶対ノンシリコン」ではありません。 軽い仕上がりは、軽いシリコーンや配合量の少ない製品でも実現できます。
シリコン入りを避ける必要がない人
ブリーチやカラーで絡まりやすい
毛先がパサつく
濡れた髪の指通りが悪い
広がりやすい
ブラッシングのときの摩擦が気になる
とにかくまとまりを重視したい
こちらも絶対ではありません。 ノンシリコンでも、しっかり指通りを設計している製品はあります。
そして、最終的な判断基準
自分の頭皮の状態と、乾かしたあとの髪の仕上がりで決めてください。
1本使ってみて、
頭皮に違和感がない
洗い上がりがつっぱりすぎない、ベタつかない
濡れた髪がとかしやすい
乾かしたあとの状態が気に入っている
これが揃っていれば、それがあなたにとって合っているシャンプーです。シリコンが入っていても、入っていなくても、です。
美容師に相談したいケース
こういうときは、ぜひサロンで相談してください。
ブリーチ毛で、何を使っても絡まる
カラー前に、重い被膜感がある気がする
トリートメントを使うとぺたんとなってしまう
シャンプーを変えるたびに、仕上がりが極端に変わる
くせ毛・細毛・剛毛で、選び方がまったく分からない
縮毛矯正・パーマ・カラーを繰り返している
美容師は、
髪のダメージ状態
髪の太さ
毛量
これまでの施術履歴
なりたい仕上がり
これらを見ながら、ヘアケアの組み合わせを提案できます。
「今こういう製品を使っています」と教えていただけると、そのぶん提案が具体的になります。成分名を覚えていなくても大丈夫です。ボトルの写真を見せていただくだけで十分です。
なお、頭皮の病気を診断することは美容師にはできません。次の項目に当てはまるときは、遠慮なく皮膚科へ行ってください。
皮膚科へ相談したいケース
こうした症状があるときは、シャンプー選びの話より先に、医療の出番です。
強いかゆみ
赤み
湿疹
痛み
ジュクジュクしている
フケが急に増えた
抜け毛が急に増えた
円形に、または部分的に抜けている
シャンプーを変えても頭皮トラブルが続く
こういうとき、「シリコンが悪いんだ」と自己診断して製品を変え続けるのは、いちばん時間がかかる道です。
原因が皮膚の病気であれば、シャンプーを何本試しても改善しません。逆に、原因が特定できれば対処はずっと早くなります。
迷ったら、皮膚科です。 それがいちばんの近道です。
よくある質問
1.ノンシリコンシャンプーとは?
シリコーン系の成分を配合していないシャンプーのことです。それ以外の性質(洗浄力、刺激性、保湿力など)は、この表示からは分かりません。
2.シリコンとシリコーンは違う?
違います。siliconはケイ素という元素、siliconeはシロキサン結合を持つ高分子・化合物群です。ヘアケアで使われるのは一般にシリコーンのほうです。日常会話では「シリコン」で通じます。
3.シリコーンは何のために入っている?
毛髪表面に付着して摩擦を減らし、指通り・からまり・ツヤ・まとまりを調整するためです。傷んだ部分を治すためではありません。
4.シリコンは髪に悪い?
通常の使用で、シリコーンそのものが髪を傷ませるとは単純には言えません。ただし、合う・合わないや、重く感じるかどうかは人と製品によります。
5.シリコンで髪が呼吸できなくなる?
なりません。頭皮から出ている髪は角化した組織で、肺のような呼吸はしていません。この説明は成り立ちません。
6.シリコンは毛穴に詰まる?
通常のヘアケア製品に配合されるシリコーンが毛穴を物理的に塞いで毛根を窒息させる、という標準的な仕組みは確認されていません。ただし、どんな製品でも頭皮に合わないことはあります。
HAIR記事は、美容師歴30年以上・施術経験3万人以上のDolceが、髪と頭皮の現場経験をもとに制作・監修しています。
執筆・監修:Dolce(美容師歴30年以上・施術経験3万人以上)
DOLCE BEAUTYは、美容室・ネイルサロン・エステなど美容の現場や運営経験を背景に、美容について分かりやすく整理して届ける美容情報メディアです。



