「この写真みたいなグレージュにしたいんです。でも、ブリーチはしたくなくて」
美容室では本当によくあるご相談です。
先に結論を言います。
暗い髪から、写真のような淡くて明るいグレージュを“今日その日に”作りたいなら、ブリーチが一番の近道です。
これは「グレージュはブリーチしないとできない」という意味ではありません。
すでに髪が明るい方、暗めのグレージュでいい方、ブラウンやベージュを残したグレージュなら、ブリーチなしでも十分に狙えます。
また、ライトナーや高明度カラーでベースを明るくしてから色を重ねる「ブリーチなしダブルカラー」という方法もあります。ただし、ライトナーは一般にブリーチより脱色力が弱いので、暗い地毛から白っぽい・淡いグレージュまで一気に持っていく力はブリーチほどありません。
つまり大事なのは、
「ブリーチするか、しないか」より、今の髪の明るさから希望の写真まで、どれくらい土台を明るくする必要があるか。
ここです。
写真の色だけを見ても答えは出ません。今の明るさ、黒染めや白髪染めなどの履歴、縮毛矯正やブリーチ履歴まで見て、最短でどこまで行けるかを考えます。
ここから、その理由をできるだけ分かりやすく説明します。
まず、「グレージュ」は一色ではありません
これ、意外と知られていないんです。
グレージュというのは、厳密に決まった一つの色名ではありません。グレーとベージュ、その両方を感じる色味の総称として使われている言葉なんですね。
だから実際には、ものすごく幅があります。
暗めのグレージュもあれば、明るいグレージュもある。オリーブ寄りのもの、アッシュ寄りのもの、ベージュ感が強いもの、ラベンダーがかったもの。そして、写真でよく見る、光に透けるような淡いグレージュ。
これ全部、「グレージュ」と呼ばれています。
ということは、どうなるでしょうか。
「グレージュにできますか?」だけでは、仕上がりが決まらないんです。
暗めでブラウンを残したグレージュなら、ブリーチを使わずに表現できるケースがあります。一方、白っぽく淡いミルクティーグレージュのような仕上がりは、より明るい土台が必要になることが多い。同じ「グレージュ」という名前でも、必要な工程はかなり違うんですね。
だから美容室で写真を見せていただいたとき、私たちがまず見ているのは「グレージュかどうか」ではなくて、
どのくらい明るくて、どのくらい灰色っぽくて、どのくらいベージュ感を残しているか
なんです。ここまで見て、はじめて「じゃあ何が必要か」が分かってきます。
写真通りになるかは、今の髪の「土台」で決まります

ここからが本題です。
いちばん分かりやすい例え話をさせてください。絵の具の話です。
白い紙に、薄いグレーの絵の具を塗るとします。 きれいなグレーが乗りますよね。淡い色でも、ちゃんとグレーに見えます。
では、茶色い紙に、同じ薄いグレーを塗ったらどうでしょう。
たぶん、グレーには見えません。茶色がうっすら濁ったような、なんとも言えない色になると思います。絵の具は同じ、塗った量も同じ。それでも見える色が違うんです。
髪も、まったく同じことが起きています。
髪にはもともとのメラニンや、過去のカラーによる色が残っています。新しく入れる色は、その土台の影響を受けて見えるんですね。
そのため、明るい土台では淡いグレーやベージュのニュアンスを感じ取りやすくなります。逆に暗い土台では、もともとのブラウンや暖色系の見え方が強いため、淡い寒色を重ねても写真のような灰みが前面に出にくいことがあります。白い紙と茶色い紙の例は、あくまでこの「土台で見え方が変わる」ことをイメージするためのたとえです。
ここで誤解のないようにお伝えしておくと、「黒髪には色が入らない」わけではありません。
使うカラー剤によっては、髪を少し明るくしながら色味を加えたり、主に色味を加えたりします。ただ、暗い土台ほど新しく入れた色味が目立ちにくく、見た目として表現できる範囲に限界があるということなんですね。
「入らない」のではなく「見えにくい」。ここが大事なところです。
だから、美容室で写真を見せていただいたとき、私たちは写真の色だけを見ているわけではありません。写真の中の髪がどのくらい明るいのか、赤みはあるか、黄みはあるか、どのくらい光に透けているか。そして、目の前にいるあなたの髪が今どのくらいの明るさなのか。この二つを比べているんです。
同じ薬剤を使っても、土台が違えば同じ見え方にはなりません。 ここが、写真通りにならない一番大きな理由です。
赤みやオレンジみは、どこから出てくるのでしょう
「赤みを消したいんです」というご相談、とても多いですよね。この赤みが何なのか、お話ししますね。
まず前提として、「日本人はみんな赤みが強い」というのは、少し乱暴な言い方だと思っています。 髪の色は本当に人それぞれで、もともと黄み寄りの方もいれば、赤み寄りの方もいます。
そのうえで、多くの方に共通して起きることがあります。
暗い髪を明るくしていく過程で、暖色系の背景色が見えてくるんです。
イメージとしては、こんな感じです。髪を明るくしていくと、もともとのメラニンが酸化されて減っていき、その途中で赤み・オレンジみ・黄みなどの暖色系の背景が目立つことがあります。どの色がどの程度見えるかには個人差があります。
この明るくしたときに見える背景色が、グレーやアッシュ、ベージュを重ねたときの仕上がりに影響します。
美容師は、この背景の色を見ながら、それを目立たなくする方向の色味を組み合わせて調整していきます。
ただ、ここも単純化はできません。
「青を入れればオレンジが完全に消える」わけではないんです。
理屈の上では反対方向の色を使いますが、実際には、背景がどのくらい濃いのか、髪の中に前のカラーの色素がどれだけ残っているのか、髪の太さはどうか、といったことで結果が変わります。強く入れすぎれば別の問題が出ますし、足りなければ赤みが残る。ここは、目で見ながら調整していく部分です。
そして、淡いグレーやベージュをはっきり感じさせたい場合は、土台がある程度明るい方が設計しやすくなります。暗い土台のまま暖色感を抑えようとして寒色をしっかり重ねると、仕上がりが想像より暗く見えることもあります。
「透明感」の正体って何でしょう
これも、けっこうあいまいな言葉なんです。
美容室で「透明感がほしい」と言われたとき、その中身はいくつかあります。重たく見えないこと、赤みが少ないこと、光に当たったときにやわらかく透けること、暗くても濁って見えないこと。
これ、全部違うことなんですよ。
たとえば、暗くても濁って見えない色は作れます。赤みを抑えて、光の下でやわらかく見える暗めの色も作れます。「透明感=ブリーチが必要」とは限らないんですね。
ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
淡くて、灰色っぽくて、光に透けるような仕上がりを目指すほど、土台の明るさが必要になる傾向があります。
なぜかというと、暗い髪ではもともとの色が視覚的に強く、淡いグレーやベージュのニュアンスが隠れやすいからです。土台を明るくすると、髪の見え方が軽くなり、淡い色味や光による色の変化を感じ取りやすくなります。
ただし「透明感」は明るさだけで決まるものではなく、色味、髪の太さや表面状態、照明、スタイリングなどでも見え方が変わります。
ブリーチなしでも作りやすいグレージュ
さて、ここからは「じゃあ何ならできるの?」というお話です。
ブリーチを使わなくても、グレージュ系の色味が作れる可能性があるのは、こういうケースです。
もともと髪が明るい方。 地毛の明るさには個人差があって、もともと色素が薄めの方はいらっしゃいます。その場合、土台がすでにある程度明るいので、カラー剤だけで色味を作れることがあります。
過去のカラーでベースが明るくなっている方。 これはかなり多いです。今まで明るめのカラーを続けてきた方は、毛先の方がすでに明るくなっていることがあります。この場合、そこに色味を乗せるだけでグレージュに見えることがあるんですね。
現在の髪が比較的明るく見える方。 地毛の色、毛径、これまでのカラー履歴などによって、同じ薬剤を使っても明るさや色味の見え方には個人差があります。
そして、目指す色を調整するという方向。
暗めでブラウンを残したグレージュや、ベージュ感のあるグレージュは、ブリーチなしでも候補になりやすいです。写真の淡い色そのままではなくても、今の土台に合わせてグレージュ系のニュアンスへ寄せられることがあります。
それから、数回に分けてベースを明るくしていくという方法もあります。これは後で詳しくお話ししますね。
ですから、「ブリーチなしグレージュ」という言葉そのものは、まったく否定するものではありません。ちゃんと成立する施術です。
逆に、ブリーチなしでは難しいグレージュ

一方で、正直に難しいとお伝えしなければいけない場合もあります。
黒髪に近い地毛から、一度で淡く明るいグレージュを目指す。 酸化染毛剤だけで一度に上げられる明るさには限界があるため、写真のような淡い色までは届きにくいことがあります。
とても淡いグレー、白っぽいグレージュ。 暖色系の背景が強く残っていると灰みが見えにくいため、かなり明るい土台が必要になることがあります。
明るいミルクティーグレージュ。 同じ理由で、暖色系の背景をある程度弱めた土台の方が、淡いベージュやグレーを表現しやすくなります。
赤みやオレンジみをほとんど感じない、明るい仕上がり。 明るくすればするほど背景の暖色が見えてくるので、それを打ち消しながら明るさも保つとなると、土台作りの工程が必要になります。
写真のような強い透け感。 先ほどお話しした通りです。
こういった仕上がりを目指す場合、土台を明るくする工程が必要になることが多いです。
ただし、ここでも「絶対にブリーチ」とは言いません。今の髪の明るさと、これまでの履歴を見てからの判断になります。今のベースがすでにある程度明るければ、思ったより近づけることもありますから。
SNSの「ブリーチなしグレージュ」は、嘘なのでしょうか
これ、混乱の元になっているところですよね。
はっきり言っておきますが、SNSの投稿が嘘だと言いたいわけではありません。 本当にブリーチを使っていない施術は、たくさんあります。
ただ、「ブリーチなし」という言葉には、書かれていない条件が含まれていることがあるんです。
たとえば、こんな可能性があります。
今回はブリーチしていないだけ、という場合。 過去にブリーチやハイライトをしていて、その部分が残っている。そこに色を入れれば、今回の施術としては確かにブリーチなしです。
以前のカラーでかなり明るくなっている場合。 何年も明るめのカラーを続けてきた方の毛先は、けっこう明るくなっています。
ブリーチ剤を使わず、高明度の酸化染毛剤などでベースを明るくしている場合。 サロンによっては、こうした明るさを上げる目的の薬剤や施術を「ライトナー」「ブリーチなしダブルカラー」などと呼ぶことがあります。呼び方はサロンや製品で異なります。
何回かカラーを重ねている場合。 その一枚の写真の裏に、数回の来店があるかもしれません。
もともと地毛がかなり明るい方の場合。
そして、撮影時の照明と、写真の加工。 これも大きいです。
つまり、「ブリーチなし」イコール「真っ黒な地毛から一回でこうなった」とは限らないんですね。
これは投稿している方が悪いわけではなくて、一枚の写真にすべての背景情報を載せるのは無理だから、というだけの話です。
だから写真を見せていただくとき、私たちが気にしているのは「この色が作れるかどうか」より、「この写真の方のベースは、今のあなたのベースとどれくらい違うか」なんです。
「ブリーチなしダブルカラー」って何でしょう
一般的には、ブリーチ剤を使わず、1回目にライトナーや高明度カラーなどでベースを明るくし、2回目にグレージュの色味を入れる方法です。
ブリーチを使わずに、通常のワンカラーより明るさと色味の両方を狙いやすくする方法と考えると分かりやすいです。
ただし、ここで大事なのは、
ライトナーはブリーチの代わりに同じところまで抜ける薬ではない
ということです。
一般的にライトナーは、ブリーチより脱色力が弱いです。
そのため、暗い地毛からでもある程度ベースを明るくできますが、白っぽいグレージュや淡いミルクティーグレージュのように、かなり明るい土台が必要な色では届かないことがあります。
逆に、
・暗めのグレージュ
・ベージュを残したグレージュ
・すでにある程度明るい髪
なら、ブリーチなしダブルカラーが有効なことがあります。
そして、ブリーチなし=ノーダメージではありません。
ライトナーや高明度カラーも髪を明るくする薬剤なので、髪への負担はあります。
ライトナーとブリーチの違い
かなり簡単に言えば、
ライトナーは「ブリーチより弱い力で明るくする」もの。
ブリーチは「もっと大きく明るさを上げたいときに使う」もの。
と考えると分かりやすいです。
だから、
「今より少し〜ある程度明るくしてグレージュにしたい」
ならライトナーが候補になることがあります。
一方で、
「暗い髪から今日、写真みたいな淡いグレージュにしたい」
なら、ブリーチの方が一番の近道になります。
黒染め・暗染めの履歴がある場合
ここは、とても大事なところです。
美容師が見ているのは、今の見た目の暗さだけではありません。
過去に黒染めや暗染め、濃いブラウンを入れたことがある場合、髪の中に人工的な色素が残っていることがあります。しかも、これは目で見ただけでは分からないことも多いんです。
時間がたてば色は少しずつ褪色しますが、過去の暗染めや黒染めの人工色素が、次のカラーへ影響する程度に残っていることがあります。どのくらい残るかは、使った染料、回数、髪の状態、洗髪などで変わります。
この状態でカラーをすると、思ったように明るくならなかったり、赤みやオレンジみが強く残ったり、部分的にムラになったりすることがあります。染めた範囲や回数によって、残り方が違うからです。
ただし、「黒染めをしたら絶対にブリーチが必要」とも言いません。 どんな薬剤で、いつ、どこまで染めたのかによって、状況は変わります。
だから美容室では、「過去に黒染めをしたことがあります」と伝えていただけると本当に助かるんです。それだけで、こちらは想定を組み直せます。
覚えている範囲で構いません。「たしか2年くらい前に、就活のときに一度」くらいの情報でも、十分に価値があります。
白髪染めをしている場合
30代、40代の方には、こちらも重要なお話です。
まず、「白髪染めをしているから明るくできない」わけではありません。 ここは、よくある誤解なので最初に言っておきますね。
ただ、気をつけたいことはあります。
白髪をしっかりカバーする目的で、比較的暗め・濃い色を繰り返してきた場合は、毛先に人工色素が残り、次に明るくするときへ影響することがあります。白髪染めという名前だけで決まるのではなく、実際に使ってきた明るさや色、塗布範囲が重要です。
そうなると、そこだけ明るくなりにくかったり、色の入り方が変わったりします。
でも、ここで大事なのは、何を、何回、どこに染めてきたかなんです。
たとえば、伸びてきた根元だけを染めるリタッチを続けてきた方と、毎回全体を染めてきた方では、毛先の状態がまったく違います。前者なら毛先の蓄積は少ないですし、後者なら重なっている可能性が高い。
明るめの白髪染めを使ってきたのか、暗めだったのかでも変わります。
ですから、「白髪染めをしています」だけでなく、「根元だけ染めることが多いです」とか「いつも全体を染めています」とか、そういう情報があると助かります。
そして、白髪染めをしながらグレージュを楽しむこと自体は、十分に可能性があります。白髪の量や染めたい範囲によって設計は変わりますが、諦める必要はありませんよ。
市販のカラーやカラートリートメントを使っている場合
これも、正直にお話ししておきますね。
美容師にとって難しいのは、何を使ったか分からないことなんです。
市販のカラー剤にもいろいろあります。明るくするもの、暗くするもの、白髪染め。それからカラートリートメント、カラーシャンプー、ヘナのような植物由来の染料、塩基性のカラー剤。
これらは染まり方の仕組みや使われる色素が異なり、褪色の仕方や次のカラーへの影響も同じではありません。
ここで、「市販のカラーは全部だめ」と言うつもりはまったくありません。 ご自分で染めることは、何も悪いことではないですから。
ただ、次にサロンでカラーをするときには、できる範囲でいいので何を使ったか教えてほしいんです。
「市販のカラーを使いました」だけでも十分ですし、「紫のカラーシャンプーを使っています」とか「カラートリートメントを月に一回」とか、そういう情報があれば、こちらの想定が変わります。
商品名を覚えていなくても大丈夫です。パッケージの写真がスマホに残っていれば、それを見せていただくのが一番早いですね。
ヘナについて
短く触れておきます。
ヘナや植物染料と呼ばれるものは、製品によって中身がかなり違います。純粋な植物のものもあれば、他の成分が配合されているものもあります。そして、その違いによって次のカラーへの影響が変わってきます。
「ヘナなら全部同じ」ではないんですね。
ですから、使ったことがある方は、製品名が分かれば伝えていただけると助かります。 分からなければ「ヘナを使っていました」だけでも構いません。それだけで、こちらは慎重に確認しようと判断できますから。
縮毛矯正やブリーチの履歴がある場合
こちらも、色の話とは別に確認したいところです。
縮毛矯正をしている方、あるいは今後したいと思っている方は、カラーとの組み合わせを計画的に考える必要があります。
どちらも髪に負担のかかる施術なので、順番や間隔、どちらを優先するかが大事になってきます。「今日グレージュにして、来月縮毛矯正」というような予定があるなら、先に相談してもらった方がいいんです。
ブリーチやハイライトの履歴がある方も同じです。すでに明るくなっている部分と、そうでない部分が混在していると、色の入り方が変わります。ムラに見えないような設計が必要になります。
これは「できない」という話ではなくて、希望の色だけでなく、髪の状態も含めて方法を決めましょうというお話です。
暗い髪から淡いグレージュなら、ブリーチが一番の近道
ここは、はっきり言います。
暗い髪から、その日に写真のような淡いグレージュ・白っぽいグレージュ・明るいミルクティーグレージュを目指すなら、ブリーチが一番の近道です。
理由はシンプルで、淡いグレーやベージュをきれいに見せるには、先に髪の土台をかなり明るくする必要があるからです。
ライトナーや高明度カラーでも明るくできますが、一般にブリーチほど脱色力は強くありません。必要な明るさまで届かない場合、赤みやオレンジみが残り、写真よりブラウン感のある仕上がりになります。
だから美容師が「この写真ならブリーチした方が早いです」と言うのは、何でもブリーチしたいからではありません。希望の色まで土台を作る最短ルートだからです。
もちろん、ブリーチには髪への負担があります。乾燥感や切れ毛のリスクが上がり、縮毛矯正など今後の施術にも影響します。
だから、
色を最優先するならブリーチ。
ダメージや今後の施術を優先するなら、ブリーチなしでできる範囲へ調整する。
この選び方で十分です。
グレージュが暗く見える、緑っぽく見える理由
染めたあとに「思っていたのと違う」と感じるパターンを、二つお話ししますね。
暗く見えすぎる
「透明感を出したかったのに、真っ黒に見える」
これ、よくあるんです。
理由はいくつか考えられます。もともとのベースが暗かった。暖色感を抑えるために寒色をしっかり入れた。室内の照明で見ている。染めたてで色が濃く見えている。過去のカラーの色素が残っていた。そして、写真と自分の髪の明るさに差がある。
これらが重なると、「暗い」と感じる仕上がりになります。
特に暗い土台では、暖色感を目立たなくするために寒色をしっかり重ねると、仕上がりが想像より暗く見えることがあります。だから「赤みを減らしたい」と「明るさを保ちたい」の両方をどこまで優先するか、相談が必要になることがあります。
ただ、「髪が太い人は必ず暗く見える」というわけでもありません。あくまで要素のひとつです。
緑っぽく見える
これも時々あります。
ざっくり言うと、赤みを消そうとして寒色系を強く入れたときに、髪の中に残っている黄みとの組み合わせで、オリーブや緑がかって見えることがあります。
ただ、「青と黄色を混ぜたら緑」という単純な話だけでは説明しきれません。使った薬剤、髪の中に残っている色素、土台の状態、そして見ている光の種類。いろいろな要素が絡んでいます。
もしそうなってしまったら、次回に向けて「前回、緑っぽく感じました」と伝えてください。それだけで、こちらは配合を調整できます。
染めたてと、1週間後では見え方が変わります
これも知っておいていただきたいことです。
ヘアカラーは、時間の経過と洗髪によって色が変化していきます。
染めた直後が濃く見え、その後の洗髪や時間経過で少しずつ色味が変化することはあります。変化する速さや方向は髪の状態や染料によって異なります。
美容師はこれを見越して設計することがあります。「染めたては少し濃いですが、数日で落ち着いてこれくらいになります」というような。
ですから、染めた当日に「思ったより暗い」と感じても、少し様子を見てみると印象が変わることがあります。
ただし、「必ず1週間後が完成形」というわけではありません。 髪の状態や使った薬剤によって、変化の仕方は違いますから。担当の美容師さんに「これからどう変わりますか」と聞いておくと安心ですね。
色落ちの過程
グレー系やアッシュ系の色は、色落ちの過程でいろいろな見え方をします。
ベージュっぽくなることもあれば、ブラウンに戻っていくこともある。黄みが出てくることも、オレンジみが出てくることもあります。
何色になるかは、元の土台と使った色、そして明るさによって変わります。
「グレージュはすぐ落ちる」とひとくくりにはできません。色持ちは、土台の明るさ、髪のダメージ、使った染料、洗髪頻度などでも変わります。色が抜けたときに、もともとの黄みやオレンジみが再び目立ってくることもあります。
写真の光と加工でも、色は変わります
最後に、写真そのものの話です。
同じ髪でも、見る場所によって色は違って見えます。
自然光の下、室内の照明の下、暖色系の電球の下、白っぽい蛍光灯の下、そして逆光。それぞれで、まったく違う色に見えます。窓際で見たときはきれいなグレージュなのに、コンビニの照明の下だと黄色っぽく見える、なんてことは普通に起きます。
さらに、スマホの自動補正やホワイトバランス、SNS上のフィルターや編集によって、実物とは少し違う色に見えることもあります。
でも、これも「SNSの写真は全部加工だ」という話ではありません。 加工していない写真でも、光が違えば違って見えるというだけのことです。
だから私は、こう思っています。
写真は、方向性を共有するための資料としてはとても優秀です。
言葉だけで「グレーっぽいベージュで、明るすぎず暗すぎず」と説明するより、写真を一枚見せてもらう方が、仕上がりの方向性を共有しやすくなります。ぜひ持ってきてください。
ただ、その写真と完全に同じ色になることを保証するものではない、ということも一緒に知っておいていただけたらと思います。写真の中の髪と、あなたの髪は、別の髪ですから。
「今日できる色」と「育てる色」
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことかもしれません。
写真通りの色を一度で目指す、という考え方だけではないんです。
数回に分けて、近づけていくという方法があります。
たとえば、こんな進め方です。
今日は、できる範囲で明るさを上げながら、赤みを抑えた色にする。次回は、そこからさらにベースを整えていく。その次で、より淡いグレージュに近づける。
こうして段階を踏むと、一度の施術で無理に大きく明るくするのではなく、その時点の髪の状態を見ながら次の工程を決められます。ただし、明るくする施術を繰り返せば負担は蓄積するため、「回数を分ければ傷まない」という意味ではありません。
ただし、誤解しないでいただきたいのは、毎回全体を強く明るくする、という意味ではないということです。
すでに明るくなっている部分を何度も明るくすれば、当然負担が重なります。だから実際には、「今回は根元だけ」「今回は色味の調整だけ」というふうに、その回で必要なことだけをやっていきます。
そして、この計画を立てるには、髪の履歴と今の状態を見る必要があります。同じ美容師やサロンで履歴を継続して把握してもらうのは一つの方法ですが、美容師が変わる場合でも、前回までの施術内容をできる範囲で共有できれば判断材料になります。
「今日はここまでなら狙えます。次回は髪の状態を見て、さらに近づけられるか考えましょう」
このように、回数を保証するのではなく段階ごとに確認していくのが現実的です。
「できません」ではなく、「どこまでならできるか」
美容師の側の話も、少しさせてください。
写真通りが難しい場合、「できません」で終わらせるのは、私はあまり良くないと思っています。
そうではなくて、
今の髪から一度でできる範囲はここまでです。ブリーチを使えばここまで近づきます。ブリーチなしなら、こういう見え方になります。数回に分けるなら、こういう進め方があります。髪への負担を考えると、この選択がバランスがいいと思います。
こういう説明をするのが、私たちの仕事だと思うんです。
できる・できないの二択ではありません。 その間には、いくつもの選択肢があります。
もし美容室で「ブリーチしないと無理です」とだけ言われて納得できなかったら、「じゃあブリーチなしだと、どんな感じになりますか?」と聞いてみてください。そこから話が広がるはずです。
あなたの髪は、どのタイプ?
ご自分がどこに当てはまりそうか、見てみてください。
現在、髪がかなり明るい方。
現在の明るさによっては、ブリーチを追加せずにグレージュの色味を表現しやすい可能性があります。今の明るさをどこまで活かせるか相談してみてください。
地毛に近い暗さの方。
暗めのグレージュなら、十分に候補になります。一方で、写真で見るような淡くて明るいグレージュを目指すなら、土台作りの工程が必要になることが多いです。一度でどこまでいけるか、まず聞いてみるといいと思います。
黒染めや暗染めの履歴がある方。
今の見た目だけでは判断できません。髪の中に残っている色素を考える必要があります。いつ頃、どのあたりまで染めたかを伝えてください。それによって、できることが変わってきます。
白髪染めを繰り返している方。
毛先に濃い色素が残っている可能性があります。ただし、リタッチ中心か全体染めかで大きく違います。染め方の履歴を伝えていただければ、そこから設計できます。
縮毛矯正やブリーチの履歴がある方。
希望の色だけでなく、髪への負担も含めて方法を決めていく必要があります。今後の施術予定も含めて相談すると、計画が立てやすいです。
美容室で、そのまま使える伝え方
最後に、次にカラーの相談をするとき、そのまま使える言葉を用意しておきますね。
「この写真くらいの明るさが理想です。ブリーチなしでできる範囲を教えてもらえますか」
「赤みは減らしたいんですけど、暗くなりすぎるのは嫌です」
「ブリーチは避けたいです。写真と完全に同じでなくてもいいので、近い雰囲気にできますか」
「過去に黒染めをしたことがあります」
「白髪染めをずっとしています。根元だけ染めることが多いです」
「縮毛矯正もしているので、ダメージを優先して相談したいです」
「仕事の関係で、これ以上明るくはできないんです」
「一度でできなくてもいいので、何回かかけて近づけられますか」
どれも、専門用語は使っていませんよね。自分の希望と、自分の事情を伝えるだけでいいんです。
特に最後の二つは、こちらとしてとても助かる情報です。明るさの上限があると分かれば、その範囲で最善を考えられますし、「数回かけてもいい」と言ってもらえれば、計画的な提案ができますから。
覚えている範囲で伝えてほしいこと

カラーの相談のとき、こちらが知りたいのはこんなことです。
現在の髪色。地毛が伸びている部分の長さ。最後に染めた日。ここ1〜2年くらいのカラー履歴。黒染めや暗染めの経験。白髪染めの有無と染め方。ブリーチやハイライトの経験。縮毛矯正やパーマの履歴。ご自宅で使ったカラー剤やカラートリートメント。
たくさんありますね。でも、全部を正確に覚えている必要はまったくありません。
「去年の夏に一回明るくして、それからは暗めで染めてます」くらいでも十分です。分からないところは「覚えてないです」で大丈夫。それも情報のうちですから。
よくある質問
ブリーチなしでグレージュはできますか?
できるケースはあります。
ただ、希望する明るさや透明感、そして今の髪のベースによって変わります。暗めのグレージュやブラウン寄りのグレージュなら、ブリーチなしで表現しやすいです。淡くて明るいグレージュとなると、土台を作る工程が必要になることが多いですね。
地毛から一回でグレージュになりますか?
暗めのグレージュなら、可能性があります。
ただし、写真で見るような淡くて明るい色と同じ見え方にするのは、一回では難しいことが多いです。一度のカラーで上げられる明るさには限界がありますから。
ブリーチなしダブルカラーなら傷みませんか?
傷まない、とは言えません。
ブリーチ剤を使わなくても、髪を明るくする作業には負担があります。それを二回行うわけですから、その分の負担もあります。「ブリーチなし」は「ダメージなし」という意味ではないんですね。
SNSの「ブリーチなし」は本当ですか?
本当の場合もたくさんあります。
ただ、その方の以前の履歴やもともとのベースの明るさが、写真には書かれていないことがあります。「今回はブリーチしていない」という意味で、過去には明るくしていた、というケースもありますから。嘘ではなく、情報が省略されているだけ、というのが実際のところだと思います。
黒染めをしていてもグレージュにできますか?
履歴と、希望する色によります。
黒染めの色素が残っていると、通常のカラーだけでは明るくしにくいことがあります。ただ、いつ、どんな薬剤で、どこまで染めたかによって状況は変わりますので、まずは伝えてみてください。
白髪染めをしていてもできますか?
可能性はあります。
ただ、毛先に濃い色素が蓄積していないかを確認する必要があります。リタッチ中心だったか、毎回全体染めだったかでも変わりますので、染め方も一緒に伝えていただけると助かります。
グレージュは色落ちすると何色になりますか?
これは、元の土台と使った色、明るさによって変わります。
ベージュっぽくなることもあれば、黄みやオレンジみが出てくることもあります。一律には言えないので、担当の美容師さんに「色落ちするとどうなりますか」と聞いておくといいですよ。
写真と全く同じ色にできますか?
正直に申し上げると、完全に同じ色になることを保証するのは難しいです。
写真の中の髪と、あなたの髪は、明るさも髪質も履歴も違いますから。さらに、撮影時の光や加工の影響もあります。
ただ、写真はとても役に立ちます。「どこが好きなのか」を一緒に伝えていただければ、その要素をあなたの髪で再現する方法を考えられますから。
まとめ
この記事の結論はシンプルです。
暗い髪から、写真のような淡いグレージュをその日に作りたいなら、ブリーチが一番の近道です。
ブリーチなしでもグレージュはできます。
ただし向いているのは、
・暗めのグレージュ
・ブラウンやベージュを残したグレージュ
・すでにベースが明るい髪
などです。
ライトナーを使う「ブリーチなしダブルカラー」も選択肢ですが、一般にライトナーはブリーチより脱色力が弱いため、暗い髪から白っぽい・淡い色まで一気に持っていくには限界があります。
そして、もう一つ大事なのがカラー履歴です。
黒染め、暗染め、白髪染め、ホームカラー、縮毛矯正、過去のブリーチ。
これらによって、今日できる明るさは変わります。
美容室では写真を見せたうえで、
「この色に今日近づけるなら、ブリーチが必要ですか?」
「ブリーチなしなら、どこまでできますか?」
と聞いてみてください。
それで十分です。
写真通りにできるかどうかを曖昧にするのではなく、今の髪から最短でどこまで行けるのかを説明する。 それが美容師の仕事だと思っています。
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。
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