「白髪って、本当に黒く戻ることがあるんですか?」
白髪を一本見つけたとき、明るいところでよく見てみると、
「あれ、根元のほうだけ黒い気がする」
「途中で色が変わってる?」
そんな毛を見つけて、「これって、戻ってきているのかな?」と思ったことはありませんか。美容室でも、根元の色が変わって見える白髪について相談されることがあります。
一方で、「一度白くなった髪は二度と黒くならない」と聞いたことがある方も多いと思います。私も昔はそう説明していました。
でも、そこまで単純ではないんです。
この記事は、白髪がなぜ増えるかという話ではありません。一度白くなった髪が、もう一度色を持つことはあるのか。そこだけに集中してお話しします。
期待をあおるつもりも、頭ごなしに否定するつもりもありません。今の研究で分かっていること、まだ分かっていないこと、そして今日から美容室でできることを、順番に整理していきます。
先に答えると、「戻った毛」は実際にあります

結論から言います。
白かった毛が再び色を持つ「再色素化」という現象は、人の髪でも確認されています。
2021年に発表された研究では、一本の毛の色の濃さを細かく測定する方法が開発され、白くなった部分のあとに再び色素が入った毛が、人で定量的に記録されました。
ですから、「白髪は何があっても絶対に戻らない」とまでは言えません。
ただし、ここに大事な続きがあります
「戻る現象がある」ことと、「戻す方法がある」ことは、まったく別の話です。
同じ研究の中で、こうも書かれています。この現象が起きているのは、ごく一部の孤立した毛包に限られる。そして、この研究に参加してもらえる人(=白と黒が一本の中に混ざった毛を持っている人)を見つけるのに、2年半の募集期間で14人しか集まらなかった、と。
つまり、珍しい現象として記録されているということです。
「白髪を黒く戻す方法」が見つかったわけではありません。
この2つを分けて考えられるかどうかが、今日いちばんお伝えしたいところです。
そもそも「白髪が戻る」って、どういう状態のこと?
話をややこしくしている理由のひとつが、「白髪が戻った」という言葉で、まったく違う出来事がまとめて語られていることです。整理してみましょう。
1.白かった毛の、新しく伸びた根元が黒い
染毛やブリーチなどの影響がない毛で、毛先側は白く、より新しく作られた根元側が再び濃くなっていることが確認できれば、毛包での色素形成が再開した「再色素化」と考えられます。ただし、家庭で一本の毛を見ただけでは、外的な色変化との区別まで確定できません。
2.一本の途中で、黒→白→黒と変わっている
さらに珍しいパターンです。黒かった毛が途中で白くなり、その先でまた黒く戻っている。研究では、こうした「二重の変化」を持つ毛も報告されています。
3.白髪が抜けたあと、その場所から黒い毛が生えた
これは再色素化とは違います。前の毛はもう抜けていて、新しい毛が生えてきているだけです。同じ毛包から生えているとしても、「白かった毛が黒くなった」わけではありません。
4.白髪染めやカラーシャンプーで黒く見える
外から色をつけたものです。当然ですが、髪の中の色素が戻ったわけではありません。
5.光の加減で目立たなくなった
白髪は光を反射しやすいので、照明や角度でかなり見え方が変わります。「昨日より減った気がする」の正体が、これであることも珍しくありません。
6.黒い毛が増えて、白髪の割合が下がったように見える
全体の本数が変われば、同じ白髪の本数でも印象は変わります。
研究でいう「同じ毛の再色素化」に近いのは主に1と2です。ただ、実際の毛では染毛・紫外線・化学処理なども見た目へ影響するので、ご自身の毛だけで自然な再色素化だと断定しないようにしてください。
髪の色は、どこで決まるんでしたっけ
短く確認だけしておきます。
髪は、頭皮の中の毛包という場所で作られます。その中で、メラノサイトという細胞がメラニンという色素を作り、髪の材料に渡していきます。色は、髪が作られるその瞬間に入るものです。
そして、頭皮から出た髪はすでに角化した組織で、生きた細胞ではありません。
ここから分かることがあります。
白髪の再色素化を考えるときに大切なのは、毛が新しく作られている根元側の変化です。 すでに頭皮の外へ出た白い毛幹そのものが、体の働きであとから塗り替えられるわけではありません。変化が記録されるとすれば、その後に毛包で新しく作られた部分です。
だから、再色素化した毛は「白と黒の境目がある毛」という形で現れます。
ここだけ覚えておいてもらえたら
先に要点をまとめます。
白かった毛にもう一度色がつく「再色素化」は、人の髪でも確認されています。ですから「白髪は何があっても絶対に戻らない」とまでは言えません。
でも、それは「誰でも白髪を黒く戻せる方法がある」という意味ではありません。研究の中でも、まれな現象として扱われています。
今のところ、一般的な加齢による白髪を確実に黒く戻す標準的な方法は、美容にも医療にも確立していません。
この2つを混ぜないこと。それが、広告や情報に振り回されないための、いちばんの守りになります。

人の髪で「白→黒」は、こう確認されました
ここが、この記事の中心です。少しだけ研究の中身に踏み込みます。
2021年に発表された研究(Rosenbergら、eLife誌)は、こういうものでした。
一本の毛を、時間の記録として読む。 研究者たちは一本の毛をスキャンし、長さに沿った色の濃さを数値化しました。さらに頭髪の平均的な伸長速度を使い、毛の長さをおおよその時間軸へ置き換えています。木の年輪のようなイメージですが、個人の髪が毎月まったく同じ速さで伸びるという意味ではありません。
そこで見つかったこと。 健康な14人から集めた397本の毛を解析したところ、その中に白化したあと再び色素を取り戻した毛が確認されました。再色素化は頭髪だけでなく、ひげや体毛でも観察され、再色素化が確認された例の年齢は9〜39歳でした。
戻るスピード。 色が戻る速さは、白くなる速さとほぼ同じでした。じわじわ薄く戻るのではなく、変わるときは同じくらいの勢いで変わっていた、ということです。
ストレスとの対応。 一部の参加者では、生活上の出来事と色の変化が時間的に重なっていました。たとえば、ある方は5本の毛がほぼ同じ時期に色を取り戻していて、その時期は本人がこの1年でいちばんストレスが低かったと答えた期間と一致していました。別の方では、強いストレスがあった約2か月間に毛が白くなり、その時期が過ぎたあと、ほぼ完全に色が戻っていました。
この研究で「分かっていないこと」
ここが大事です。
これは、白髪の治療法を検証した研究ではありません。 何かをして白髪を治せるかを調べたものではなく、「一本の毛に何が起きているかを測る方法」を作り、その結果として再色素化を記録した研究です。
人数は14人です。 大規模な臨床試験ではありません。しかも、2年半かけて募集して14人。それだけ、こういう毛を持っている人が少なかったということでもあります。
ストレスとの関係は、一部のケースで時間的に対応していた、という観察です。 「ストレスを減らせば白髪が黒く戻る」ことを証明したものではありません。
参加者全体は9〜65歳でしたが、再色素化が確認された例は9〜39歳でした。 高齢者全体で同じ現象がどの程度起きるかを調べた研究ではありません。
「ストレスで白髪が治る研究」として紹介されているのを見かけますが、それは違います。
なぜ、再び色がつくことがあるの?
正直に言うと、はっきり解明されているわけではありません。ただ、いくつかの手がかりがあります。
毛周期の中で起きている
再色素化した毛の色の変化は、髪が伸びている一回の成長期の中で起きていました。つまり、毛が抜けて生え替わったのではなく、同じ毛を作り続けている最中に、色づけの作業が止まったり再開したりしているということです。
予備の細胞が関わっている可能性
研究では、毛包の中の別の場所に控えている未熟な色素細胞が動員されるのではないか、という説明が提案されています。あくまで仮説です。
白い毛は「何もしていない」わけではない
同じ研究では、白い毛と黒い毛のタンパク質を比べています。白い毛では、エネルギー代謝やミトコンドリアに関わるタンパク質、抗酸化に関わるタンパク質が増えていました。
色が抜けた毛は、色素を作る材料が単に切れた状態ではなく、何か別の状態へ切り替わっているらしい。そう考えられています。切り替わっているなら、条件によっては戻る余地もあるかもしれない。研究者たちの見立ては、そういう方向です。
「戻る境目」があるという考え方
この研究では、もうひとつ面白い提案がされています。
コンピュータ上で、一生分の白髪の増え方をシミュレーションするモデルを作ったのです。そのモデルでは、毛ごとに少しずつ蓄積していく「加齢の要素」があり、ある一定の線を越えると白く見えるようになる、という仕組みを想定しています。
このモデルでは、観察された一時的な白化や再色素化を説明するために、毛ごとの「加齢要素」と閾値、そこへ加わる一時的な負荷を仮定しています。閾値に近い毛では白化と再色素化が起こり得る一方、閾値から大きく離れた毛では起こりにくい、という考え方です。
つまり、色をつける仕組みが完全に失われた毛と、まだ揺らぎのある段階の毛では、戻りやすさが違うかもしれない、ということです。
ただし、これはあくまでモデルであり、仮説です。
「◯歳までなら戻る」「白髪率が◯%以下なら戻る」といった数字に置き換えられるものではありません。ご自身の毛が線のどちら側にあるかを、鏡を見て判断することもできません。もちろん、美容室で見て分かることでもありません。
加齢による白髪も戻るの?
いちばん聞かれる質問だと思います。
「加齢とともに増えてきた白髪が、何もしなくても全体として若いころの黒髪に戻る」。これを期待できる根拠はありません。
一方で、個々の毛で再色素化が起きることはある。これは先ほど見たとおりです。
ですから、
年齢による白髪は絶対に戻らない → そこまでは言えません
年齢による白髪でも戻せる → これも言えません
歯切れが悪くて申し訳ないのですが、今の研究で言えるのはこの範囲です。「一部の毛では起こりうる。でも頭全体が戻るという話ではない」。ここが、正確なところです。
なお、「若白髪のほうが戻りやすい」という言い方も見かけますが、これも断定はできません。先ほどの閾値モデルからそう推測されるという話であって、若ければ戻ると保証されたわけではありません。
色素幹細胞の研究で、白髪は治せるようになる?
ニュースで「白髪の仕組みを解明」という見出しを見たことがある方も多いと思います。あれは何だったのか、少し説明します。
2023年のNature誌の研究
髪の色をつける細胞のもとになる色素幹細胞(メラノサイト幹細胞)という細胞があります。この研究では、色素幹細胞が毛包の中を移動しながら、成熟した状態と未熟な状態を行き来していることが示されました。周囲から届くシグナル(WNTなど)に応じて、状態を変えたり戻したりしているのです。
そして、加齢が進むと、この細胞が毛包の特定の場所に取り残されて動かなくなるものが増えていく。動かなくなった細胞は、色をつける担当者へと育たなくなる。そういう現象が報告されました。
これは、白髪の仕組みの理解として、とても大きな一歩です。
でも、これはマウスの研究です
ここを飛ばして読まないでください。
この研究は主にマウスで行われたものです。人でも同じことが起きているのか、これから確かめられていく段階にあります。研究チーム外の専門家からも、その点は今後の課題だとコメントが出ています。
そして、絶対に飛躍させてはいけないことがあります。
「幹細胞を動かせば白髪が治る」→ そんな方法はまだありません
「マッサージで幹細胞が動く」→ 根拠はありません
「この成分で幹細胞を活性化」→ 商品の宣伝として使われがちですが、研究がそれを保証したわけではありません
マウスで仕組みが見つかったことと、人が明日から使える治療ができたことは、まったく違います。
「幹細胞が残っていれば戻る」も、単純すぎます
白髪化には、色素幹細胞だけでなく、色をつける細胞そのもの、毛包の中の環境、毛周期、色素を合成する反応、酸化ストレスなど、たくさんの要素が関わっています。
ですから「幹細胞さえ残っていれば戻る」という判断は、今の知見ではできません。まして、それを外から見て判断することは不可能です。
ストレスが減れば、白髪は戻る?
これも独立して整理しておきます。
先ほどの人の研究で、ストレスが下がった時期と色が戻った時期が重なったケースがあった、というのは事実です。興味深い観察です。
一方、よく引用されるもう一つの有名な研究(2020年、Nature誌)は、マウスの研究です。強い急性ストレスによって交感神経が過剰に働き、色素幹細胞が失われるという内容で、しかもマウスでは、この変化は元に戻らないタイプのものでした。
ここで面白いのは、人の研究のほうでは戻る毛が見つかっている、という点です。研究者たちも、マウスと人の毛包の生物学には根本的な違いがあるかもしれない、と書いています。
そのうえで、はっきりさせておきます。
「ストレスを解消すれば白髪が黒く戻る」という治療効果を示した臨床試験は、ありません。
ですからこの記事では、「ストレスを減らしましょう」を白髪対策として提示しません。関係を調べた研究はあるけれど、それを方法として売り出せる段階ではないからです。
そして、「ストレスをためない生活を」とも書きません。生活の中のしんどさは、意志で減らせるものばかりではないですし、白髪の本数であなたの生き方を採点したくないからです。
栄養不足を治せば、白髪は戻る?
ここも慎重にお話しします。
報告されていること
一部の栄養素の欠乏に伴って毛の色が抜け、その欠乏が是正されたあとに色が戻った、という報告は存在します。先ほどのeLife論文の中でも、薬剤やミネラル欠乏に関連した脱色素・再色素化の症例報告があることが紹介されています。
ですから、「栄養は白髪と一切無関係」とは言いません。
でも、そこから飛躍しないでください
「白髪が増えた=何かの栄養が不足している」ではありません。
白髪の背景には、加齢や遺伝の影響が大きく関わっています。栄養の欠乏が関係するケースは、その中の一部です。
そして、
ビタミンB12を飲めば黒く戻る
鉄を飲めば戻る
銅を飲めば戻る
これらは、いずれも言えません。
大事なのは、次の2つを分けることです。
① 医療機関で特定の栄養欠乏が確認された人が、その不足を適切に是正する。 これは白髪目的のサプリとは別の話です。欠乏の評価は問診や必要な検査を含め、医療の側で判断されます。
② 不足していない人が、白髪を戻す目的でサプリを飲む。 これで黒くなるという根拠はありません。
美容師が「あなたは鉄が足りていませんね」と判断することはできません。検査もしていませんし、それは診断にあたる行為です。気になる場合は、内科や皮膚科で相談してください。
黒ゴマ、海藻、白髪サプリはどうですか?
「黒ゴマがいいって聞いて、毎日食べてます」というお話は、本当によく聞きます。
黒い食べ物を食べたら髪が黒くなる、という仕組みは残念ながらありません。食べ物の色と、毛包の中で作られる色素は、まったく別のものです。
とはいえ、黒ゴマも海藻も、普通の食品としては良いものです。食べるのをやめる必要はまったくありません。ただ、白髪を黒く戻す方法として期待するのは違う、というだけです。
白髪サプリについても、考え方は同じです。
特定の欠乏がある人が補う場合には、意味があり得ます
「白髪用」として売られているものが、一般的な加齢性の白髪を戻すとは限りません
複数の成分を大量に飲むことは、おすすめしません
銅・亜鉛・鉄などは、摂りすぎにも注意が必要なミネラルです
参考までに、後述する薬剤のレビューでも、一部のビタミンB群の補充について白髪の黒化を促す可能性に触れてはいますが、根拠の質は低いもの(low-quality evidence)として扱われています。「効くと証明された」とは書かれていません。
薬で白髪が黒くなった、という報告もあります
ここは面白い部分なので、丁寧に扱います。
2020年に発表された系統的レビューでは、薬の使用中に白髪の再色素化が起きたという文献が集められ、27件の研究が確認されました。そのうち21件は、別の目的で薬を使っていたら偶然、髪の色が濃くなったという報告です。
出てくる薬の種類はさまざまです。炎症を抑える薬、免疫に関わる薬、がん治療に使われる薬、緑内障の点眼薬、パーキンソン病の薬、皮膚科で使われる薬など。
これらの薬が、色素を作る反応を刺激したり、毛包の炎症を抑えたりすることで、色素形成が再開したのではないか、と考えられています。
でも、これは白髪治療の薬ではありません
同じレビューの冒頭に、こう書かれています。
現時点で、白髪の再色素化のために使える医学的な治療法は存在しない。
そして、ここに挙がった薬は、いずれも白髪の治療のために使う薬ではありません。それぞれ本来の目的があり、それぞれに副作用があります。
ですから、レビューに挙がった薬剤を「白髪目的で試せる薬」と受け取らないでください。多くは他の病気の治療中に偶然、再色素化が観察されたもので、一般的な白髪の標準治療ではありません。
このレビューから読み取るべきなのは、こういうことです。
人の毛包には、条件がそろえば色素形成が再び始まる余地がある。 それを示す観察例が、実際に集まっている。だから研究者たちは、その仕組みを手がかりに、将来の治療のターゲットを探している。
そういう「可能性の記録」として受け取ってください。
白髪用シャンプーで黒く戻る?
はっきりさせておきます。
一般的なシャンプーは、髪と頭皮を洗うためのものです。毛包の中の色素形成を回復させて白髪を黒髪に戻す、という標準的な治療ではありません。
「黒髪ケア」「白髪ケア」と書かれた製品はたくさんありますが、商品名や広告の言葉から「メラノサイトが復活する」と判断しないでください。
少なくとも、厚生労働省が示す薬用シャンプーの効能・効果の範囲には「白髪を黒く戻す」は含まれていません。商品名や広告のイメージだけで、毛包の色素形成を回復させる効果まであると受け取らないようにしてください。
カラーシャンプー・カラートリートメントは?
これは、また別の話です。
カラーシャンプーやカラートリートメントは、生えている白い毛に、外から色を補うものです。洗うたびに、あるいは塗るたびに、少しずつ色を乗せていきます。
見た目を整える手段としては、有用な選択肢です。染めるまでではないけれど気になる、というときに使いやすいですし、自宅でできます。
ただ、白髪そのものが黒髪に戻ったわけではありません。色を落とせば、また白い毛に戻ります。
「使ってみたら白髪が減った気がする」というのは、この効果です。それはそれで嬉しいことですが、髪の中で起きていることとしては、再色素化とはまったく違います。
頭皮マッサージで黒く戻る?
こちらも、はっきりお伝えします。
頭皮マッサージは、白髪を黒く戻す方法として確立していません。
美容の記事でよく見かける、
血流が良くなる → 栄養が毛根に届く → メラノサイトが復活する → 黒髪になる
という一直線の説明は、そのまま受け取らないでください。この流れを裏づける根拠はありません。
だからといって、マッサージが悪いわけではありません。気持ちいいですし、リラックスできますし、頭皮に触れる習慣があると変化にも気づきやすくなります。そういう目的でされるぶんには、まったく問題ありません。
ただ、白髪を戻すためのトレーニングとして、毎日必死にやる必要はない、ということです。強くこすると、かえって頭皮の負担になります。
白髪染めをやめれば、白髪は戻る?
「染め続けたから白髪が増えたのでは」と思っている方が、けっこういらっしゃいます。
現時点で、白髪染めを中止することで一般的な加齢性白髪の色素形成が回復し、黒髪へ戻るという標準的な知見はありません。一方、染毛剤は施術時に頭皮へ触れるため、刺激やアレルギーなどの皮膚トラブルは別に考える必要があります。
ただし、カラー剤による頭皮のトラブルは、まったく別の問題です。
酸化染毛剤(いわゆるヘアカラー、白髪染め)は、皮膚に刺激を起こしたり、アレルギー反応の原因になったりすることがあります。これまで何度も問題なく使えていた方でも、ある日突然起こることがあります。
そして、一度でもかゆみ・赤み・痛みなどの異常が出たことがある方は、その後の使用を避けることが公的機関から呼びかけられています。自己判断でパッチテストを行うことも避けるように、とされています。
頭皮に赤みや湿疹、痛みがあるときに施術を重ねるのがよい、という意味でもありません。そういうときは、まず皮膚科で診てもらってください。
「白髪が戻るかどうか」と「カラー剤で頭皮が荒れていないか」は、分けて考えてください。 前者を美容室で狙って操作する方法は確立していませんが、後者は安全面の対応が必要です。
「白髪改善」をうたう商品を見るときに
美容液、エッセンス、頭皮用の美容ケア。「話題の成分配合」という言葉とともに、いろいろな商品が出ています。
見るときの目安を、ひとつだけお伝えします。
成分についての研究があることと、その商品を使って人の白髪が黒く戻ることは、別の話です。
細胞や動物の実験で、ある成分が色素形成に関わる反応に影響した。これは研究として意味があります。でもそこから、
その成分を配合した商品を頭皮につける
実際に毛包の狙った場所に届く
十分な量が届く
人の髪で色が戻る
ここまでの一つひとつが、別々に確かめられる必要があります。研究の存在は、その保証にはなりません。
「◯日で黒くなる」「◯か月で改善」といった期間の約束が書かれているものは、特に慎重に見てください。今のところ、それを裏づける標準的な方法は確立していないからです。
買うなという話ではありません。ただ、「これで治る」という前提でお金と期待を注ぎ込むのは、少し立ち止まってからでいいと思います。
今のところ、確実な治療はある?

正直にお答えします。
一般的な加齢による白髪を、確実に黒髪へ戻す標準的な方法は、美容にも医療にも確立していません。
先ほど紹介した系統的レビューにも、「現時点で白髪の再色素化のために利用できる医学的治療は存在しない」とはっきり書かれています。
がっかりさせてしまったかもしれません。でも、ここを曖昧にすると、期待につけ込む情報に引っかかりやすくなります。だから、はっきりお伝えしておきます。
これからの白髪研究
とはいえ、研究が止まっているわけではありません。
色素幹細胞をどう維持するか
毛包の中の環境(ニッチ)をどう整えるか
WNTなどのシグナルをどう調整するか
一度止まった色素形成をどう再開させるか
酸化ストレスにどう対応するか
こうしたテーマで、世界中の研究が進んでいます。実際、2023年のマウス研究では、色素幹細胞の移動性を調節することが白髪予防の新しい研究アプローチになり得ると提案されています。ただし、人で有効な予防法や治療法が示されたわけではありません。
薬剤による再色素化の報告を集めたレビューも、「これらは今のところ白髪の治療として適応があるわけではないが、その作用の仕組みは将来の再色素化治療の標的を示している」という締めくくり方をしています。
つまり、可能性の扉が閉じているわけではないんです。
ただ、ニュースで「白髪の仕組みを発見」と出たことと、明日から使える治療ができたことは、別のことです。この距離感だけ、覚えておいてもらえたらと思います。
じゃあ今、美容室でできることは?
黒く戻す方法が確立していなくても、できることは何もない、ということではありません。ここからは私たちの領域です。
根元だけを染めて、全体の負担を減らす
全体染めの回数を減らして、部分的に対応する
明るめのトーンで染めて、伸びてきたときの差を小さくする
白髪ぼかしで、境目をなだらかにする
ハイライトを入れて、白髪を目立ちにくくする
白髪を活かす方向で、全体のデザインを考える
分け目の位置を変える
カットで、白髪が目につきにくい形にする
カラーシャンプーやカラートリートメントで、一時的に色を補う
どれが正解ということはありません。かけられる時間、頻度、髪と頭皮の状態、そして「どうありたいか」で選ぶものです。
どのくらいの期間もつか、どのくらいの頻度がいいかは、髪質、白髪の量、伸びる速さ、色の選び方で本当に変わります。ここは実際に見せていただいてからのご相談になります。
「戻らないなら、もう染め続けるしかないんですね」と言われることがありますが、そんなことはありません。染め方にも幅がありますし、染めないという選択も含めて、選べるようになってきています。
美容師にできること、できないこと
線を引いておきます。
できること
白髪の見え方を、一緒に確認する
根元が黒いのか白いのか、実際に見て確かめる
染め方を相談する
目立ちにくくする方法を提案する
白髪を活かす方向も提案する
カラーによる頭皮の刺激について相談に乗る
気になる変化があれば、医療機関への相談をすすめる
できないこと
「この白髪はストレスが原因です」という診断
「この白髪は戻ります」という判断
色素幹細胞が残っているかどうかの判断
栄養が足りているかどうかの判断
血液検査
薬による白髪治療の指示
サプリメントによる治療の指示
「戻りますか?」と聞かれたとき、私たちが言えるのは「戻る現象は報告されていますが、それを狙って起こす方法は今のところありません」までです。それ以上のことを言う美容師がいたら、少し慎重になってください。
医療機関へ相談したいケース
白髪そのものを理由に、慌てて受診する必要はありません。そのうえで、次のような場合は相談する選択肢を持っておいてください。
非常に若い時期から、急に白髪が増えた
数か月といった短期間で、大きく変化した
髪が抜ける変化も同時に起きている
皮膚に白く色が抜けた部分がある
強い疲労感、体重の変化など、体調の変化がある
頭皮に赤み、湿疹、痛みなどの炎症がある
栄養状態や体の病気が心配で、確かめたい
自分でもどうしても不安で、気になって仕方ない
ここでも、症状から病名を自分で決めないでください。「白髪が急に増えたからあの病気だ」と考えるより、状況を伝えて判断してもらうほうが、ずっと早く安心できます。
よくある質問
根元だけ黒い白髪を見つけました。これは戻ってきているんですか?
その可能性はありますが、一本を見ただけでは判断できません。カラー剤、紫外線、パーマなどの化学処理、毛のダメージ、光の当たり方でも、外から見た色は変わります。実際、先ほどの研究では、染めたり脱色したりしている人は対象から外されていました。それくらい、見分けは繊細だということです。
若白髪のほうが戻りやすいですか?
そう推測させるモデルは提案されていますが、断定できるものではありません。若ければ戻る、という保証はありません。
白髪が戻る仕組みは分かっているんですか?
完全には分かっていません。毛包の中の予備の色素細胞が動員されるのではないか、といった仮説の段階です。
再色素化は、狙って起こせますか?
今のところ、その方法はありません。
血行を良くすれば戻りますか?
そう期待できる根拠はありません。
白髪用美容液で戻りますか?
成分の研究があることと、その商品で人の白髪が戻ることは別の話です。期間を約束している表示には、特に注意してください。
結局、今できることは何ですか?
白髪そのものを確実に再色素化させる方法は確立していません。一方、染める・ぼかす・活かすなど、見え方を調整する美容上の選択肢はあります。
まとめ
白かった毛にもう一度色が入る現象は、人の髪でも確認されています。ですから、「白髪は絶対に戻らない」と言い切ることはできません。
でも、それは「白髪を黒く戻す方法がある」という意味ではありません。研究の中でも、それはまれな現象として記録されています。ストレスを減らせば治る、サプリを飲めば治る、シャンプーを変えれば治る、という単純な話でもありません。
研究は進んでいます。色素幹細胞のこと、毛包の中の環境のこと、色素形成が再び始まる条件のこと。少しずつ分かってきています。ただ、それが明日から使える治療になったわけではありません。この距離を、広告が飛び越えてくることがあるので、そこだけ気をつけてください。
そして、今できることは、ちゃんとあります。染め方を工夫する、目立ちにくくする、白髪を活かす。見え方を整えながら付き合っていく方法は、いくつもあります。
白髪を見つけた日に、「もう戻らないんだ」と落ち込みすぎなくても大丈夫です。かといって、「これを飲めば戻る」という言葉に飛びつく必要もありません。
その真ん中あたりで、一緒に考えていけたらと思っています。気になることがあれば、次にお会いしたときに聞かせてください。
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。
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