成分名より先に、自分の悩みを決めることから始まります
美容液は、成分名の知名度で選ぶものではありません。「美容液」という名前に、法律上の統一された中身は決まっていないんです。保湿中心のものから医薬部外品まで、目的はバラバラです。
見る順番は、悩み → その製品が何を目的にしているか → 化粧品か医薬部外品か → 成分表。成分表はヒントにはなりますが、処方そのものを読み解ける設計図ではありません。価格や濃度の高さだけで優劣は決まりません。
「今使っている美容液、これで合っているんだろうか」
そう思って、裏面の成分表を見てみたことはありませんか。
カタカナと漢字が20行くらい並んでいて、正直、何が書いてあるのか分からない。SNSでは「この成分は絶対入れるべき」と言われている。店頭に行けば、同じ棚に3,000円のものと18,000円のものが並んでいる。
調べれば調べるほど判断材料が増えて、かえって決められなくなる。——この感覚、覚えのある方は多いと思います。
この記事では、成分名を暗記するのとは逆の方向から整理していきます。目指すのは、読み終わったときに、今お持ちの1本を手に取って「これは自分の悩みに向けて作られた製品かな」とご自身で言葉にできる状態です。
先にお伝えしておくと、この記事に「最強成分ランキング」は出てきません。そういう順位が作れない理由を説明する記事だからです。
そのぶん、遠回りに感じるところがあるかもしれません。でも、ここを一度通っておくと、次に美容液を買うときからずっと楽になります。お付き合いください。
先に結論:見るのは「成分名」ではなく「目的」
先に答えを言ってしまいますね。
美容液を選ぶときに最初に見るのは、成分表ではありません。あなたの悩みです。
順番はこうなります。
自分の悩みを、一つに絞る
その製品が、何を目的に作られたものかを見る
化粧品なのか、医薬部外品なのかを確認する
成分表は、そのあとに補助情報として見る
実際に使ってみて、使用感と肌の状態で判断する
成分表を一番最初に見ると、ほぼ確実に迷います。なぜだと思いますか。
理由はとてもシンプルで、成分表からは、その製品が何をしたいのかが読み取れないからなんです。
同じ成分が、まったく違う目的で入っていることが普通にあります。同じ成分名でも、量も、組み合わせも、製品ごとに違います。そして、そのどれも成分表には書かれていません。
これから、なぜそう言えるのかを順番に説明していきます。
そもそも「美容液」って、何のことなんでしょう
実は、「美容液」に法律上の定義はありません
ここが出発点です。少し驚かれるかもしれません。
日本の薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)が定めているのは、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」といった大きな区分なんです。
「化粧水」「乳液」「美容液」といった呼び名は、その中でメーカーが商品として名付けているもの。「美容液と名乗るには、この成分をこれだけ入れなければならない」という法令上の決まりは、ありません。
だから、同じ「美容液」という棚に、まったく違うものが並ぶことになります。
同じ「美容液」でも、狙いはこんなにバラバラです
実際に売られている美容液の目的を並べてみますね。
保湿を中心にしたもの
肌を整えることを目的にしたもの
医薬部外品として「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」効能で承認されたもの(いわゆる薬用美白)
医薬部外品として「シワを改善する」効能で承認されたもの
角質ケアの成分を含むもの
皮脂やべたつきの対策を想定したもの
使用感(さらっとする、こっくりする)を重視したもの
いかがでしょうか。この7つ、目的も使い方も注意点も、それぞれ別物です。それが全部「美容液」という同じ名前で売られているわけです。
「美容液を1本買おう」と考えたときに難しさを感じるのは、当然だと思いませんか。「美容液」はカテゴリーの名前であって、機能の名前ではないんです。
よくある3つの思い込みを、先に外しておきましょう
「美容液は化粧水より濃い」
これは決まっていません。とろみのある化粧水より、さらっとした美容液のほうが軽い、ということは普通にあります。感触の重さと中身は一致しないんです。
「美容液は高濃度成分が入っている」
これも決まっていません。「美容液」という名前は、濃度について何も保証していません。
「美容液は特別に奥まで入る」
これについては後で詳しくお話ししますが、化粧品について「奥まで入る」という説明の仕方自体を、この記事では採用しません。理由も後ほど。
悩みから逆算する。成分表はヒントとして最後に見ます

「悩み」から逆算していきましょう
ここからが記事の中心です。
成分名を先に覚えると、どうなるか。「その成分が入っている製品を探す」という順番になります。すると、自分の悩みとは関係のない製品を買ってしまうことがあるんですね。
なので、順番を逆にします。
悩み → 必要な働き → 成分・処方 → 使い方 → 今の1本が合っているか
ここから、代表的な悩みごとに見ていきます。ご自身に当てはまるところから読んでいただいて構いません。
すべてに共通してお約束したいのは、「この成分があれば解決する」とは書かない、という点です。
乾燥・つっぱりが気になるとき
まず、ここを確認してみてください
美容液を検討する前に、3つだけ見ていただきたいことがあります。ここが原因だと、美容液を足しても解決しないんです。
洗顔が強すぎませんか
洗浄力の強い洗顔料、熱いお湯、一日に何度も洗う、時間をかけてこする。こうした状態が続くと、肌の表面の状態が乱れやすくなります。
保湿全体は足りていますか
ここ、混ざりやすいところです。「水分を与える」ことと「与えた水分が逃げにくい状態を作る」ことは、別の仕事なんです。
化粧水を3回重ねているのに夕方には乾く。この状態、心当たりはありませんか。多くの場合、後者が足りていません。
美容液だけで解決しようとしていませんか
乾燥対策の主役は、多くの場合、保湿剤全体の組み立てです。美容液は、その中の一つの工程にすぎません。
よく配合される成分の例
乾燥対策を目的にした製品でよく見かけるのは、こういった成分です。
| 成分の例 | 一般的な役割 |
|---|---|
| グリセリン | 水を抱え込む性質のある保湿成分。非常に広く使われる |
| BG(ブチレングリコール) | 保湿成分であり、他の成分を溶かす役割も持つ |
| ヒアルロン酸Na | 水を抱え込む性質のある保湿成分 |
| アミノ酸類 | 保湿成分として配合される |
| セラミド類 | 保湿成分として配合される(後で詳しくお話しします) |
ただし、ここは正直にお伝えします。「この成分が入っていれば乾燥が治る」ということではありません。
同じ「グリセリン」でも、配合量が違えば製品の感触も保湿感も変わります。そして、その配合量は成分表からは分からないんです。この話は後ほど詳しく。
見ていただきたいポイント
その製品は、保湿を目的に作られていると読み取れますか
今お使いの乳液やクリームと、役割が丸ごと重複していませんか
使ったあと数時間経って、つっぱりや粉をふく感じは減っていますか
くすみ・シミが気になるとき
ここは、いちばん誤解が生まれやすいところです。丁寧に整理させてください。
まず、化粧品と医薬部外品を分けます
一般の化粧品は、シミやそばかすに対する効果をうたうことができません。化粧品が表示できる効能の範囲は厚生労働省の通知で56項目に定められていて、シミを消す・薄くするといった内容は、ここに含まれていないんです。
化粧品でよく見かける「明るい印象に導く」「透明感」といった言葉。あれは見た目の印象についての表現であって、メラニンへの働きかけを意味していません。
医薬部外品(薬用化粧品)は、承認された有効成分と効能効果を持つ製品です。いわゆる「美白」の承認効能は、
「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」
または「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」
という範囲になります。
ここで大事なのが、この表現の前半を省略できないということ。「メラニンの生成を抑え」の部分は「しばり表現」と呼ばれていて、原則として省かずに書くことになっています。
つまり、何ができて、何ができないのか
| できる範囲 | できない範囲 |
|---|---|
| メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ(医薬部外品) | すでにできたシミを消す・薄くする |
| メーキャップ効果で肌を白く見せる | 肌本来の色そのものを変える |
| — | 「〇日でシミが消える」といった保証 |
「防ぐ」までであって、「消す」ではない。ここは製品の優劣ではなく、制度上の線引きです。
期待していたのと違う、と感じた方もいるかもしれません。でも、この線を知っておくと、広告の言葉に振り回されなくなります。
有効成分の例
医薬部外品の美白有効成分としては、ビタミンC誘導体の一部、アルブチン、トラネキサム酸、ナイアシンアミド、コウジ酸などが知られています。
ただ、ここで一つだけ気をつけていただきたいことがあります。
「この成分名が化粧品の成分表に載っている=美白の医薬部外品」ではありません。
同じ成分名が、一般の化粧品に別の目的で配合されていることがあるんです。その場合、その製品は美白の効能を持つ製品ではありません。
見るべきなのは成分名ではなく、パッケージに「医薬部外品」と書かれているか、有効成分と効能が表示されているかです。
すでにできているシミが気になる場合は
シミには複数の種類があって、見た目が似ていても成り立ちが違うことがあります。
すでにあるシミを気にされている場合、化粧品や医薬部外品でできる範囲を超えている可能性があります。気になる色素斑がある、大きさや色が変わってきた、という場合は、化粧品を探すより先に皮膚科でご相談ください。
これは「化粧品では力不足」という話ではなくて、そもそも役割が違う、という話です。
シワが気になるとき
ここも、化粧品と医薬部外品を分けます。この2つ、書いてある言葉が似ているのに、意味がまったく違うんです。
化粧品の「乾燥による小ジワを目立たなくする」
化粧品の効能56項目のうち、56番目にあたる表示です。
この表示には条件があります。日本香粧品学会が定めたガイドラインに沿った試験を実施して、効果が確認された製品でのみ表示できることになっています。
そして、「乾燥による」という原因の部分を省略できません。「小ジワを目立たなくする」だけでは表示できないんです。
これは、乾燥で目立って見えている細かいシワを、保湿によって目立たなくする、という範囲のお話です。
医薬部外品の「シワを改善する」
こちらは別の枠組みです。医薬部外品として、シワを改善する効能で承認を受けた製品があります。
有効成分としては、ニールワン(三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸Na)、純粋レチノール、ナイアシンアミドなどが承認されています。
ここ、いちばん混同されやすいところです
大事なのでゆっくり書きますね。
レチノールやナイアシンアミドが化粧品に配合されているからといって、その製品が「シワ改善」の効能を持つわけではありません。
同じ成分名でも、
一般の化粧品に、保湿や整肌を目的として配合されている場合
医薬部外品の有効成分として、シワ改善の効能で承認されている場合
があります。前者は「シワを改善する」とは言えないんです。
見分け方は一つだけ。パッケージに「医薬部外品」と書かれていて、有効成分としてその名前が表示されているか。成分表の中に名前があるかどうか、ではありません。
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| 化粧品で「乾燥による小ジワを目立たなくする」 | 保湿によって、乾燥で目立つ小ジワを目立たなくする |
| 医薬部外品で「シワを改善する」 | 承認された有効成分による、シワ改善の効能 |
| 化粧品の成分表にレチノールがある | その製品がシワ改善の効能を持つことを意味しない |
この表、スクリーンショットを撮っておくと店頭で役に立つかもしれません。
毛穴が気になるとき
まず、「閉じる」「消す」という発想を手放してください
先に書いておきます。この記事では、毛穴を閉じる、毛穴を消す、という表現は使いません。毛穴は開閉する装置ではありませんし、なくすこともできない皮膚の構造だからです。
では何を考えるのかというと、「毛穴がどう見えているか」に何が影響しているかです。
毛穴の見え方には、いくつもの要素が関わっています
「毛穴が気になる」と一言で言っても、中身はけっこう違うんです。
皮脂:分泌量が多いと、開口部が目立って見えやすくなります
角栓:皮脂や角層の成分などが毛穴に詰まって見えている状態です
乾燥:肌表面の状態によって、影ができて目立つことがあります
肌表面の凹凸:光の当たり方で目立ち方が変わります
加齢に伴う変化:たるみによって、開口部が縦に伸びて見えることがあります
この5つ、対処が別々なんです。皮脂が原因の毛穴と、たるみに伴う毛穴に、同じ美容液が同じように働くとは考えないでくださいね。
だから、こう考えてみてください
まず、ご自身の毛穴の気になり方がどれに近いか、思い浮かべてみてください。
触るとざらつく → 角栓の話に近そうです
Tゾーンがてかる時間が早い → 皮脂の話に近そうです
夕方に頬の毛穴が目立つ → 乾燥や肌表面の状態の話に近そうです
縦長に伸びて見える → 加齢に伴う変化の話に近そうです
そのうえで、その方向に向けて作られた製品を見る。「毛穴」と書いてある製品を全部同じものとして扱わないというのが、ここでのポイントです。
なお、最後の項目については、化粧品の範囲を超えている可能性があります。過度に期待されないほうがいいと思います。
べたつき・皮脂が気になるとき
皮脂を、悪者にしないでください
皮脂は、肌の表面で膜を作っている成分です。「出ないほうがいい」ものではありません。
そして、これも大事なところ。
「べたつくから保湿は不要」ではありません。
皮脂の量と、角層の水分状態は別の話です
ここ、混ざりやすいので分けておきますね。
皮脂が多い=肌の表面に油分が多い状態
角層の水分が足りない=肌のいちばん外側の層の水分状態
この2つ、同時に起こりえます。てかっているのに、つっぱる。よくあるんです。
「脂性肌だから保湿はいらない」と決めてしまうと、乾燥感が残ったまま油分だけを減らす方向に行きがちです。
見ていただきたいポイント
洗顔直後から数時間で、どう変化していますか
塗った直後は快適でも、時間が経つとつっぱりませんか
べたつきが気になるなら、量が多すぎませんか(製品の問題ではなく量の問題、ということがあります)
さらっとした感触の保湿製品もあります。「保湿するかしないか」ではなく、「どういう感触の保湿にするか」で考えていただくほうが現実的です。
肌荒れしやすい・刺激を感じやすいとき
「敏感肌用なら安心」とは、言えません
まず、ここをはっきりさせておきます。
「敏感肌用」「低刺激設計」といった表示は、すべての人に刺激が出ないことを保証するものではありません。肌に合わない成分は人によって違うので、どんな製品にも合わない方がいらっしゃいます。
同じように、次の考え方も成り立ちません。
「天然由来だから安全」…天然由来でも、刺激やアレルギーの原因になることがあります
「無添加だから低刺激」…「無添加」は何を入れていないかの表示で、低刺激を意味しません。しかも、何が無添加なのかは製品によって違います
刺激を感じるときは、ここを整理してみてください
成分表から犯人を探す前に、確認していただきたいことがあります。
使っている製品の数:多いほど、原因の特定が難しくなります
重ねすぎていないか:一つひとつは問題なくても、合計で負担が増えることがあります
香料など、個別の成分:過去に合わなかったものの記録があれば、それがいちばん役に立ちます
使用頻度:毎日使う設計でない製品を、毎日使っていませんか
他の角質ケア:AHA・BHAを含む製品、スクラブ、拭き取りなどを同じ日に重ねていませんか
外用薬:皮膚科で処方されたお薬を使っている場合は、その指示が最優先です
ここからは、美容液選びとは別の話にしてください
次の症状がある場合は、「どの美容液を選ぶか」の話から切り離してください。
赤みが引かない
腫れている
強いかゆみがある
痛みがある
湿疹のような状態になっている
このときにしていただきたいのは、原因になっている可能性のある製品の使用を中止することです。そして、症状が続く、強い、広がる場合は皮膚科にご相談ください。
「好転反応」「効いている証拠」という説明で使い続けないでください。消費者庁や国民生活センターも、体調不良を「好転反応」などと説明して商品を使い続けさせることに注意を促しています。
刺激感は、効果の指標ではありません。ここだけは、どうか譲らないでいただきたいところです。
まず悩みを一つ決めることから始めます

化粧品と医薬部外品は、何がどう違うのでしょう
ここは、この記事でいちばん読んでいただきたい部分の一つです。「有効成分」という言葉の意味が分かると、成分表の見え方が変わります。
「有効成分」は、なんとなく効きそうな成分のことではありません
ネットを見ていると、「有効成分」という言葉が「効果がありそうな成分」くらいの意味で使われていることがあります。
でも、本来の意味は違うんです。
日本では、
医薬部外品において、承認された効能効果に関わる成分として表示されるものが「有効成分」です
一般の化粧品に配合されている成分は、この意味での「有効成分」ではありません
医薬部外品は、有効成分の種類・量・効能効果について承認を受けています。表示上も、「有効成分」と「その他の成分」を分けて記載する形が一般的です。
「美容成分」は、法的な言葉ではありません
一方で、「美容成分」「美肌成分」「エイジングケア成分」といった呼び方もありますよね。
これらは一般的な呼び方であって、「有効成分」と同じ法的な意味は持ちません。日本化粧品工業会の広告ガイドラインでも、こうした表現の扱いには注意が示されています。
整理すると、こうなります。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 有効成分 | 医薬部外品で、承認された効能効果に関わる成分として表示されるもの |
| 美容成分・美肌成分など | 一般的な呼び方。制度上の裏づけを示すものではない |
この2つが同じ言葉のように使われている記事や広告、実はかなりあります。区別できるようになると、情報の見え方がガラッと変わりますよ。
見分け方は、パッケージを見るだけです
難しくありません。
パッケージに「医薬部外品」または「薬用」と書かれているか
成分表示が「有効成分」と「その他の成分」に分かれているか
効能効果が書かれているか
書かれていなければ、それは一般の化粧品です。優劣の話ではなく、区分の話です。
「医薬部外品なら化粧品より上」なんでしょうか
これも、必ずお答えしておきたい質問です。
「医薬部外品=すべての面で普通の化粧品より優れている」とは言えません。
医薬部外品には、承認された有効成分と効能効果があります。これは事実です。ただ、それは「その効能について承認を受けている」という意味であって、製品全体の総合点ではないんです。
たとえば、こういったことは医薬部外品かどうかとは別に決まります。
保湿感
テクスチャー・使用感
使いやすさ、続けやすさ
有効成分以外に何が入っているか
刺激を感じるかどうか
価格
乾燥が悩みの方にとっては、「シワ改善の医薬部外品」より「保湿設計のしっかりした化粧品」のほうが合っている。こういうこと、普通にあります。
選ぶ基準は、目的です。これがここでのお答えです。
成分表の正しい読み方
さて、いよいよ成分表です。ここは詳しくいきます。読者の方がいちばん知りたいところであり、いちばん誤解が多いところでもあるからです。
表示の順番には、ルールと例外があります
化粧品の全成分表示には、こういったルールがあります。
原則:配合量の多い順に記載する
これは正しいです。ただ、例外があるんです。
例外1:配合量が1%以下の成分は、順不同で記載してよい
つまり、1%以下の範囲に入っている成分同士は、多い順に並んでいるとは限りません。
例外2:着色剤も、順不同で記載してよい
例外3:キャリーオーバー成分は表示を省略できる
原料に付随して微量に持ち込まれ、製品中で効果を発揮する量が含まれていない成分については、表示を省略できます。
例外4:香料は、まとめて「香料」と表示できる
香料は複数の香り成分から作られていますが、個別に分けず1語で記載できることになっています。
「1%以下は順不同」が、実は大きいんです
ここ、実務上いちばん効いてくるポイントです。
たとえば成分表の後半に10個の成分が並んでいたとします。そのうちどこからが1%以下なのか、外からは分かりません。そして1%以下の範囲では、順番に意味がないんです。
「後ろのほうにあるから微量」とは言えても、「8番目より9番目のほうが少ない」とは言えない。そういうことになります。
「上位5成分だけ見ればいい」は、成り立ちません
よく見る読み方ですよね。でも、これは採用できません。理由が2つあります。
理由1:少量でも、明確な目的を持つ成分があります
防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、そして一部の機能性成分。これらは少量で役割を果たします。「量が少ない=意味がない」ではないんです。
医薬部外品の有効成分も、配合量が多い順の上位に来るとは限りません。
理由2:どこまでが「上位」なのか、根拠がありません
なぜ5番目なのでしょうか。3番目ではいけないのでしょうか。この線引きに、公的な基準はないんです。
逆に、成分表から分からないことを一覧にします
これ、けっこう衝撃かもしれません。成分表を何時間眺めても、次のことは分からないんです。
| 分からないこと | なぜ重要か |
|---|---|
| 正確な配合濃度 | 1%以下は順不同。それ以上でも具体的な数字は書かれていない |
| 原料の規格・グレード | 同じ表示名称でも、原料の仕様が同じとは限らない |
| 処方全体のバランス | 各成分がどう組み合わされているか |
| pH | 製品の性質や、成分の働き方に影響する |
| 製造方法 | 同じ成分でも、作り方で仕上がりが変わる |
| 成分同士の組み合わせ | 単体で起きることが製品でも起きるとは限らない |
| 安定化技術 | 変質しやすい成分をどう安定させているか |
| 実際の使用感 | 使ってみないと分からない |
| 容器による安定性 | 遮光、密閉、酸化への対策 |
いかがでしょうか。判断に効きそうなことが、ほとんど書かれていないと思いませんか。
なので、結論はこうなります
成分表はヒントにはなるが、処方そのものを完全に読み解ける設計図ではない。
この一文だけ、覚えて帰っていただけたら十分です。
とはいえ、成分表を見ることに意味がないわけではありません。こういう使い方は、とても有効です。
過去に合わなかった成分が入っていないか確認する(ご自身の記録がいちばん役に立ちます)
医薬部外品かどうか、有効成分は何かを確認する
今使っている製品と、役割が丸ごと重複していないか見当をつける
一方で、こういう使い方はできません。
成分表だけで製品の優劣を決める
成分表から濃度を推測する
成分表から使用感を予測する
「成分の危険度」を点数化しているサイトについて
成分に点数や危険度をつけて表示しているサイト、ご覧になったことがあるかもしれません。
あの点数は、そのサイトが独自に設定した基準によるもので、公的な基準ではありません。サイトによって評価も違います。
成分ひとつを取り出して善悪を判定することには、構造的な限界があるんです。参考程度に、と考えていただくのがいいと思います。
同じ成分名が書いてあっても、完成品として同じとは限りません

「同じ成分なら、安い美容液でも同じ?」
これ、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。正面からお答えします。
答え:同じとは限りません。でも「安い=ダメ」でもありません
同じ成分名が成分表に書いてあっても、次が違えば、完成品としては別の製品です。
配合量:どれだけ入っているか
他の成分:一緒に何が入っているか
pH:製品の性質。成分の働き方や安定性に関わります
安定性:時間が経っても変質しにくいか
剤形:水状か、ジェルか、クリーム状か、オイルか
容器:遮光されているか、空気に触れにくい構造か
使用方法:どこに、どれだけ、いつ使う設計か
製品区分:化粧品か、医薬部外品か
たとえば「ビタミンC誘導体配合」と書かれた2つの製品があったとして、使われている誘導体の種類が違えばもう別の話ですし、同じ種類でも量と処方が違えばやはり別の話になります。
逆に、「高い=効く」でもありません
こちらも同じくらい大事なところです。
化粧品の価格には、原料以外の要素がたくさん含まれています。
原料
研究・開発
容器・パッケージ
ブランドの位置づけ
広告・宣伝
流通・販売の形態
価格が高いことは、原料や処方に多く投じられていることを意味する場合もありますが、それだけで決まってはいません。
そして、価格と「自分に合うかどうか」は別の話です。18,000円の美容液が、乾燥に悩んでいるあなたの肌に、3,000円のものより合うとは限りません。目的が違えば、なおさらです。
どちらにも振らないでいきましょう
まとめると、こうなります。
よくある考え方 実際のところ
同じ成分名なら中身も同じ
配合量・処方・剤形・容器などが違えば別物
安いものは効かない
価格だけでは判断できない
高いものは効く
価格には原料以外の要素が多く含まれる
判断材料は、価格でも成分名でもなく、目的が自分と合っているかと、続けられるかです。
最後の「続けられるか」、実はかなり重要だと思っています。3ヶ月で使うのをやめてしまう高額な1本より、無理なく続けられる1本のほうが、結果的にご自身の肌の変化を見られますから。
「濃度が高いほど効く」も、成り立ちません
濃度が上がると、他のことも一緒に変わります
直感に反するかもしれませんが、濃度は上げれば上げるほど良い、という性質のものではありません。
濃度が上がると、こういったことが同時に変わります。
使用感:べたつき、伸び、感触
刺激:成分によっては、濃度とともに刺激を感じる方が増えることがあります
安定性:高濃度で安定させるのが難しい成分があります
他の成分との組み合わせ:処方全体のバランスが変わります
製品を作る側は、これらのバランスを取ったうえで濃度を決めています。「もっと入れられたのに入れなかった」のではなく、「その処方ではその量が適切だった」ということが普通にあるんです。
そもそも、濃度が公開されていない製品が多いんです
もう一つ、現実的な問題があります。
市販の化粧品では、具体的な配合濃度が公開されていない製品が多くあります。成分表に濃度は書かれていません。
一部の製品は「〇%配合」と表示していますが、これは製品側が選んで表示しているもの。表示がない製品と単純比較はできません。
なので、成分名から濃度を推測しないでください
「成分表の3番目にあるから、かなり入っているはず」
——この推測、成り立たないんです。先ほどお話ししたとおり、1%以下は順不同ですし、順番から具体的な数字は逆算できません。
濃度は、表示されていなければ分からない。表示されていても、他の製品と条件をそろえて比較できるとは限らない。この2点を前提にしていただければと思います。
よく見る成分を、どう受け取ればいいのか
ここでは、よく目にする代表的な成分をお話しします。
ただし、ランキングにも、一律の対応表にもしません。同じ成分でも「化粧品なのか医薬部外品なのか」「何を目的に配合されているのか」で説明が変わるからです。
読み方のコツを先にお伝えしますね。
成分名を見たら、「この成分は何をする」ではなく、「この製品はこの成分を何のために入れたのかな」と考えてみてください。
主語が変わるだけで、見え方がずいぶん違ってきます。
保湿の土台になりやすい成分
グリセリン、BG(ブチレングリコール)、ヒアルロン酸Na、アミノ酸類
これらは、水を抱え込む性質を持つ保湿成分として、非常に幅広い製品に使われています。目立つ成分ではありませんが、多くの製品の土台になっています。
「よく入っている=ありふれていて価値が低い」ではありませんよ。広く使われているのは、使いやすくて実績があるからです。
セラミド類
セラミドは、角層の細胞と細胞のすき間を埋めている脂質(細胞間脂質)を構成する、主要な成分の一つです。
角層の構造は、レンガの壁にたとえられることがあります。レンガが角層細胞で、その間を埋めるモルタルが細胞間脂質。セラミドはそのモルタル側の主成分の一つ、というイメージです。
ここで、一つだけ線を引かせてください。
化粧品にセラミドが入っているからといって、「肌のセラミド不足が直接治る」わけではありません。
化粧品としてできるのは、セラミド類を含む保湿製品として、角層の状態を整えること。体内の成分を直接補って構造を作り替える、という説明の仕方はしません。
成分表では「セラミドNP」「セラミドAP」「セラミドEOP」といった表示名で書かれます。数字やアルファベットの違いは種類の違いですが、「どの種類が優れている」という単純な順位はつけられません。
ナイアシンアミド
ビタミンB3の一種で、近年よく見かける成分ですね。
ここで、この記事で繰り返し出てくる話が効いてきます。
一般の化粧品に、保湿や整肌を目的として配合されている場合があります
医薬部外品の有効成分として、美白、シワ改善、肌荒れ防止といった効能で承認されている例があります
つまり、成分表にナイアシンアミドの名前があるだけでは、その製品がどの効能を持つかは分からないんです。
判断は、「医薬部外品」の表示と、有効成分としての記載があるかどうか。もう覚えていただけましたでしょうか。
ビタミンCおよびその誘導体
ここは、いちばん「一括りにされやすい」成分です。
「ビタミンC」で一括りにしないでください
化粧品に使われるビタミンC関連の成分には、大きく分けてこういったものがあります。
アスコルビン酸(ビタミンCそのもの)
各種の誘導体(アスコルビルリン酸Na、アスコルビルグルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルなど)
誘導体は、アスコルビン酸に別の構造を結合させたものです。目的の一つは、製品の中での安定性を高めることにあります。
「ビタミンC誘導体は全部同じ」ではありません
種類によって、水に溶けやすいか油に溶けやすいか、製品中でどう振る舞うか、といった処方上の特性が異なります。
そのため、「ビタミンC誘導体配合」という一行だけでは、何も比較できないんです。どの誘導体が、どれだけ、どういう処方で入っているかで、まったく別の製品になります。
濃度が高いほど優秀、でもありません
ビタミンC系の製品では「〇%配合」という表示をよく見ますよね。
ただ、先ほどお話ししたとおり、濃度が上がれば刺激や使用感も変わります。そして、種類の違う成分同士で数字だけを比べても、意味がありません。
数字は、比較の材料の一つにすぎない。そう受け取っていただければ。
医薬部外品の場合は
ビタミンC誘導体の一部は、医薬部外品の美白有効成分として承認されています。この場合は、「医薬部外品」の表示と承認された効能効果が記載されます。
化粧品に配合されているビタミンC誘導体は、この意味での有効成分ではありません。
レチノール
刺激や注意点のお話が多い成分なので、丁寧に分けていきますね。
まず、3つを混同しないでください
次の3つ、まったく別の話です。
| 区分 | 位置づけ |
|---|---|
| 化粧品に配合されたレチノール | 化粧品の効能範囲での製品 |
| 医薬部外品の有効成分として承認されたレチノール | シワを改善する効能で承認された製品がある |
| 医薬品のレチノイド | 医療の領域。化粧品とは別 |
ネット上の情報は、この3つが混ざっていることが本当に多いです。医薬品の話を化粧品に当てはめた説明も、その逆も見かけます。
「レチノール=シワが治る」ではありません
化粧品に配合されたレチノールについて、「シワを改善する」とは言えません。それが言えるのは、その効能で承認を受けた医薬部外品です。
そして、医薬部外品であっても、承認された効能の範囲を超えて「シワが治る」「なくなる」といった表現はできません。
使ううえで、気をつけていただきたいこと
刺激を感じることがあります。赤み、皮むけ、ヒリつきが出ることがあります
製品表示に従ってください。使用する時間帯、頻度、量は製品によって指定が違います。「夜のみ」と書かれている製品は、その指示どおりに
他の刺激を感じやすい製品との併用には注意してください。AHA・BHAを含む角質ケア製品などと同じ日に重ねると、それぞれは問題なくても合計で負担が増えることがあります
少ない頻度から始める方法が案内されることがあります。製品やメーカーの案内をご確認ください
刺激が出たときに「効いている証拠」と考えて続けないでくださいね。赤み、腫れ、強いかゆみ、痛みが出た場合は使用を中止して、続く場合は皮膚科にご相談ください。
妊娠中・授乳中の方へ
米国皮膚科学会(AAD)は、妊娠中はレチノイド/レチノールを含む製品を避けるよう案内しています。
ここでも、化粧品と医薬品を混同しないでください。そのうえで、妊娠中の方、妊娠を希望されている方、授乳中の方で、使用している製品について迷われる場合は、自己判断せず医師にご確認ください。
トラネキサム酸
医薬部外品の有効成分として、美白(メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ)や、肌荒れ防止といった効能で使われている例があります。
一般の化粧品に配合されることもあります。この場合も——もうお分かりかもしれませんが——その製品が美白の効能を持つわけではありません。
判断材料は、やはり「医薬部外品」の表示と、有効成分としての記載です。
アラントイン、グリチルリチン酸系
アラントイン、グリチルリチン酸2K、グリチルレチン酸ステアリルなどは、医薬部外品の有効成分として、肌荒れやニキビを防ぐといった効能で使われている例があります。
「薬用」と書かれた化粧水やニキビ用の製品でよく見る成分ですね。
これらも、化粧品に配合されている場合と医薬部外品の有効成分である場合で意味が変わります。
そして、すでに炎症を起こしているニキビや、繰り返すニキビは、化粧品の役割ではありません。皮膚科でご相談いただく領域です。
AHA・BHA(角質ケア系)
これまで挙げた成分とは、性質が違います。
AHA:グリコール酸、乳酸など
BHA:サリチル酸など
これらは、角層の表面の状態に働きかけることを目的として配合されます。「与える」ではなく「整える・取り除く」方向の成分です。
注意点をまとめますね。
使用頻度:毎日使うことを想定していない製品が少なくありません。製品に書かれた頻度を守ってください。「毎日使えば早く変わるはず」と考えて頻度を上げると、負担が増えます。
重ねすぎない:同じ日に角質ケア系の製品を複数使わないでください。
乾燥しているときに増やさない:これ、意外と多いパターンです。乾燥や肌荒れが気になっている状態で角質ケアを足すと、状態が悪化することがあります。方向が逆になってしまうんです。
紫外線対策:角質ケア系の成分を使っている期間は、日中の紫外線対策をこれまで以上に丁寧に。製品にもそう記載されていることが多いはずです。
なお、日本では化粧品への配合について制限のある成分もあります。製品の使用方法を必ずご確認ください。
一律の「成分=効果」表を作らない理由
ここまで読んでいただいて、お気づきになったかもしれません。同じことを、繰り返し書いています。
同じ成分でも、化粧品なのか医薬部外品なのか、何を目的に配合されているのかで、説明が変わる。
だから、「この成分=この効果」という一律の表は作れないんです。
ネット上でよく見る成分早見表、あれ自体が悪いわけではありません。ただ、この区別をしていないことがあります。そして、表に載っていない情報(区分・目的・配合量・処方)のほうが、判断には効くんです。
「浸透」という言葉について
この記事では、角質層までの話として扱います
化粧品広告等で「浸透」という表現を使う場合、原則として角質層までの範囲であることが分かるようにする、という考え方があります。日本化粧品工業会の広告ガイドラインでも、角層の範囲内であることが明確な場合に認められる表現とされています。
なので、この記事で「浸透」と書くときは、角質層までという意味で使います。
こういった表現は使いません。
「肌の奥まで届く」
「細胞まで届く」
「真皮に届いて働きかける」
「浸透力が〇倍」
そもそも「浸透力が高いから効く」という見方を、おすすめしません
ここが、以前の美容液記事といちばん違うところかもしれません。
「浸透力」という物差しで美容液を比べること自体を、この記事はおすすめしないんです。理由が3つあります。
1. 比較の基準がありません
「浸透力が高い」と言うとき、何と比べて、何を測っているのか。示されていないことがほとんどです。
2. 深く入るほど良い、という前提が成り立ちません
角層は、内側の水分が逃げすぎるのを防ぎ、外から物質が簡単に入らないようにする働きを持っています。つまり、入りにくいのは正常な状態なんです。
3. 化粧品で考えるべきなのは、角層の状態です
肌の見た目、手触り、乾燥感には、角層の水分状態が大きく関わります。深さの話ではなく、角層が整っているかどうかの話。ここに軸を置いていただくと、判断がずいぶん楽になります。
「すーっと入る」感じの正体
美容液を塗ったときの、あの「入っていく」感覚。あれは、成分が深いところへ吸い込まれた感覚ではありません。
角層に水分が行き渡って表面がやわらかくなり、肌の上に残っていた液の層がなくなって、べたつきが消える。その体感を「入った」と表現しているんですね。
誤解しないでいただきたいのですが、この体感自体を否定するつもりはありません。使いやすさの判断材料として、十分意味があります。
ただ、「入った」と「深いところまで届いた」は別の話、ということだけ押さえておいてください。
押し込む・温める系の説明について
念のため、よく見かけるものを整理しておきますね。
手で押し込めば浸透率が上がる:通常のハンドプレスで、化粧品成分が皮膚の深部へ押し込まれることを示す根拠は確認できません。ただし、こすらずになじませられる、塗りムラに気づける、という実用的な利点はあります
マッサージで奥へ押し込む:同様です。むしろ摩擦が増えるほうが問題になることがあります
蒸しタオルで成分が深く入る:温めると肌の感触がやわらかく感じられることはありますが、それを「成分が深く入る」根拠にはできません
毛穴を開けば浸透する:毛穴は開閉する装置ではありません。また、化粧品成分が角層に届く経路は毛穴だけではありません
角質ケアをすれば美容液が浸透する:角質ケアは、後の製品を入れるための下準備として位置づけるものではありません。乾燥しているときに足すと、負担が増えることがあります
いくつか、やっていたものがあったでしょうか。やめても損はしませんので、ご安心ください。
美容液を複数使う場合について
「多いほど効果が高い」ではありません
まず、この前提を外してください。同じ目的の製品を重ねても、効果が単純に足し算になるわけではないんです。
そして、複数使うことで、こういったことが起きることがあります。
刺激:一つひとつは問題なくても、合計で負担が増えることがあります
モロモロ:製品同士が肌の上でまとまって、白いカスのようなものが出ることがあります
べたつき:単純に、肌の上に乗りきらない量になります
メイク崩れ:朝に重ねすぎると、下地やファンデーションがよれます
原因が分からなくなる:これが、いちばん実害が大きいと思っています
「原因が分からなくなる」が、いちばん困るんです
想像してみてください。5本使っていて肌が荒れたとき、原因を特定するには、結局1本ずつ試し直すしかありません。
最初から1本ずつ増やしていれば、その手間はかからなかったわけです。
新しい美容液を試すときの進め方
一度に何本も入れ替えるより、変更点を少なくするほうが、原因を追えます。
変えるのは1つだけ。化粧水も洗顔料も乳液も、今までどおりに
製品表示どおりの量・頻度から始める
問題がなければ、次を検討する
反応が心配な製品は、顔全体に使う前に小範囲で試す
米国皮膚科学会(AAD)は、新しいスキンケア製品を顔に使う前のテスト方法として、腕の内側などの小範囲に通常量を1日2回、7〜10日使い、赤み・かゆみ・腫れなどが出ないか確認する方法を案内しています。
これは刺激やアレルギー反応の確認方法であって、「美容効果が7〜10日で分かる」という意味ではありませんので、そこは分けて受け取ってくださいね。
順番と待ち時間について
順番は、製品表示・ブランドの指定を優先してください。
指定がない場合の一般的な目安は、さらっとしたものから、とろみのあるものへ。ただし、これは絶対法則ではありません。
待ち時間について、固定の秒数は作りません。「30秒待つ」「1分待つ」といった数字に、すべての製品に当てはまる根拠はないんです。製品側が時間を指定している場合は、その指示に従ってください。
指定がなければ、肌の表面に液が浮いている感じがなくなっていれば、次に進んで大丈夫です。
順番についてもう少し詳しく知りたい方は、美容液と化粧水の順番の記事にまとめていますので、あわせてどうぞ。
効いているかどうか、どう判断すればいいのか
ここは、実際に使える形にしていきます。
ステップ1:「何を改善したくて買ったか」を一つ決める
まずここからです。決まっていないと、判断のしようがないんです。
たとえば、こんなふうに。
洗顔後の乾燥感を減らしたい
頬のつっぱりをなくしたい
肌表面のざらつきを減らしたい
夕方のべたつきを抑えたい
医薬部外品として表示されている目的(例:メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ)
「なんとなく肌を良くしたい」では、判断できません。厳しく聞こえるかもしれませんが、買う前に一つ決めておくと、あとがはるかに楽になります。
ステップ2:条件をそろえて見る
肌の見え方って、条件でかなり変わります。比べるなら、条件をそろえてください。
同じ照明(自然光なのか、洗面所の照明なのか)
同じ時間帯(朝起きた直後なのか、夕方なのか)
同じ状態(洗顔直後なのか、メイク前なのか)
朝の窓際で見た肌と、夜の洗面所で見た肌。これを比べても、何も分かりません。
ステップ3:他の条件を動かさない
新しい美容液を使い始めるときは、それ以外を変えないでください。
同時に洗顔料も変えて、季節も変わって、睡眠時間も変わっていたら……何が効いたのか、分からなくなってしまいますよね。
判断にかかる期間について
ここは、はっきり書いておきます。
「〇日で判定」「〇週間使えば答えが出る」という、すべての製品に共通する期間はありません。
目的によって、また製品によって、見るべき変化の性質が違うからです。
使用感(さらっとするか、べたつくか):1回でも分かります
洗顔後の乾燥感:数回使えば傾向が見えてきます
目的によっては、もっと長く見る必要があるものもあります
医薬部外品の場合は、製品に使用の目安が示されていることがあります。そちらをご確認ください。
そして、この線引きだけは期間に関係なく動かさないでください。
赤み、かゆみ、腫れ、湿疹、痛み、強いヒリつきが出た場合は、何日目であっても中止です。これは「様子を見る」対象ではありません。
「美容液が効かない」と感じるときの、6つの確認
順番に見ていきましょう。
1. そもそも、自分の悩みと製品の目的が合っていますか
いちばん多いパターンです。
乾燥が悩みなのに角質ケア系を使っている。毛穴のたるみが気になっているのに皮脂対策の製品を使っている。こうした場合、製品に問題がなくても、悩みは解決しません。
まず、パッケージを見て「この製品は何を目的に作られているんだろう」と読み直してみてください。
2. 製品表示どおりに使えていますか
量は適量ですか(少なすぎて顔全体に行き渡っていないことがあります)
使用時間帯の指定を守っていますか
頻度の指定を守っていますか
使用可能な部位ですか(目元や口元は指定をご確認ください)
3. 美容液以外のスキンケアが原因になっていませんか
洗顔が強すぎる、こすっている、保湿剤が足りていない、紫外線対策をしていない。
こうした場合、美容液を変えても解決しません。土台のほうを見てみてください。
4. 期待している変化が、化粧品の範囲を超えていませんか
ここは、正直に確認していただきたいところです。
すでにあるシミを消したい、深いシワをなくしたい、毛穴をなくしたい。こうした期待は、化粧品や医薬部外品でできる範囲を超えています。
「効かない」のではなく、「そもそもそれを目的にした製品ではない」。そういうことがあります。
5. 一度に製品を増やしすぎていませんか
3本同時に始めていたら、どれが効いてどれが効いていないのか分かりません。
いったん減らして、1本ずつに戻してみてください。
6. 症状があるなら、効果判定ではなく安全性の問題として扱ってください
赤み、腫れ、かゆみ、痛みがある。
このときにすることは、「効くかどうかを見極める」ことではありません。使用を中止することです。
そして、症状が続く、強い、広がる場合は皮膚科にご相談ください。
購入前のチェックリスト
店頭でも通販の商品ページでも使えるように、そのまま持っていける形にしました。スマートフォンで撮っておいていただくのもいいと思います。
□ 私が一番気になる悩みは何?(一つに絞る)
□ この製品は何を目的にしたもの?(パッケージ・商品ページで確認)
□ 化粧品? 医薬部外品?
□ 医薬部外品なら、有効成分と効能表示は何?
□ 成分名だけで期待しすぎていない?
□ 今使っている製品と、役割が重複していない?
□ 使用頻度は続けられる?(毎日? 週に数回?)
□ 使用感は自分に合いそう?(テスターがあれば確認)
□ 価格を無理なく継続できる?
□ 刺激が出たときに「好転反応」と我慢しない、と決めているか
このうち、最初の3つで答えが出ることが、かなりあります。
「一番気になる悩みは何?」に答えられないなら、まだ買うタイミングではないのかもしれません。
「この製品は何を目的にしたもの?」が商品ページを読んでも分からないなら、それは判断材料が足りていない、ということです。
美容の現場から見た、よくあるつまずき
成分辞典で終わらせたくないので、現場で見えてくる傾向もお話しさせてください。
以下は、美容の現場で一般的に見られる傾向であって、特定の個人の方のお話ではありません。
SNSで見た成分だけを追いかけてしまう
「この成分が入っていないとダメ」という情報を見て、自分の悩みとは関係なく成分名で探し始めるパターン。成分から入ると、どうしても自分の悩みが後回しになってしまいます。
美容液を何本も重ねてしまう
足りない気がして、1本ずつ足していく。気づくと工程が7つになっている。べたつき、メイク崩れ、そして「どれが合っているのか分からない」状態に。
高いものほど効くと思ってしまう
価格を判断材料の中心にしてしまうパターン。目的が合っていなければ、価格は関係ないんです。
同じ成分名なら全部同じだと思ってしまう
その逆で、成分名だけを見て乗り換えるパターン。配合量も処方も剤形も違えば、別の製品です。
乾燥しているのに角質ケアを増やしてしまう
「ざらつくから」と角質ケアを足して、乾燥が強くなる。方向が逆になっています。
刺激があるのに「効いている証拠」と考えてしまう
いちばん心配なパターンです。ヒリつきは効果の指標ではありません。
悩みが変わっているのに、昔買った美容液を使い続けてしまう
これ、意外と多いんです。3年前に選んだときと、今の肌の状態も、気になっていることも変わっている。それなのに、そのとき決めたものを続けている。
美容液を見直すタイミングは、「使い切ったとき」ではなくて、「悩みが変わったとき」なんですよね。
よくある質問
Q. 美容液は高いほど効果がありますか?
価格だけでは決まりません。
化粧品の価格には、原料のほかに、研究開発、容器、ブランド、広告、流通といった要素が含まれています。価格が高いことが、あなたの悩みに合っていることを意味するわけではないんです。
判断材料は、目的が合っているかと、続けられるか。この2つです。
Q. 同じ成分なら、安い美容液でも同じですか?
同じとは限りません。
同じ成分名が書いてあっても、配合量、一緒に入っている成分、pH、安定性、剤形、容器、使用方法、製品区分(化粧品か医薬部外品か)が違えば、完成品としては別の製品です。
ただ、逆に「安いから劣る」とも言えません。そこは公平に見ていただければ。
Q. 成分表の上の方にあれば、効果が高いですか?
そうとは限りません。
全成分表示は原則として配合量の多い順ですが、1%以下の成分と着色剤は順不同で記載できます。そして、少量でも明確な目的を持つ成分があります。
「上位5成分だけ見れば分かる」「後ろにある成分は意味がない」という読み方は、成り立たないんです。
Q. 濃度は高いほどいいですか?
いいえ。
濃度が上がれば、使用感、刺激、安定性、他の成分との組み合わせも変わります。製品は、そのバランスを取ったうえで設計されています。
また、市販の化粧品では具体的な濃度が公開されていない製品も多く、成分名から濃度を推測することはできません。
Q. 美容液は何本まで重ねてもいいですか?
すべての製品に共通する本数の上限はありません。
現実的な上限は、べたつかずに塗れるか、毎日続けられるか、何かあったときに原因を切り分けられるか、で決まります。
本数を増やすほど効果が上がるわけではない、というのが答えです。
Q. 美容液は朝と夜、どちらがいいですか?
製品の表示に従ってください。
朝の使用を想定した製品、夜のみと指定されている製品、どちらでも使える製品があります。同じ成分を含んでいても、処方が違えば指定も変わります。
「この成分だから朝はNG」といった一般論より、お手元の製品に何と書いてあるかを見てくださいね。
Q. 美容液は毎日使わないと意味がないですか?
製品の使用方法によります。
毎日使う設計の製品が多くありますが、角質ケア系のように、毎日使うことを想定していない製品もあります。頻度の指定がある場合は、必ず守ってください。
そして、「毎日使えば早く変わるはず」と考えて、指定より頻度を上げないでください。
Q. 化粧水より美容液の方が大事ですか?
どちらが上、という関係ではありません。
「化粧水」「美容液」という呼び名は、メーカーが商品として名付けているものです。中身の役割は、かなり重なっています。
大事なのは工程の名前ではなく、スキンケア全体として、角層に水分と保湿成分が行き渡り、それが保たれる仕組みがあるかどうか。ここです。
Q. 美容液を使う順番は?
一般的には、化粧水の後、乳液やクリームの前です。
ただし、洗顔直後に使う設計の製品もありますし、ブランドがライン全体で順番を指定している場合もあります。製品表示が最優先です。
詳しくは美容液と化粧水の順番の記事をご覧ください。
Q. 肌がピリピリするのは、効いている証拠ですか?
違います。
刺激感は、効果の指標ではありません。肌が反応しているサインです。
赤み、腫れ、強いかゆみ、痛みがある場合は、使用を中止してください。「好転反応」「慣れるまで」といった説明で使い続けないでください。症状が続く、強い、広がる場合は皮膚科にご相談ください。
Q. 医薬部外品の美容液の方が、効果が高いですか?
「その効能について承認を受けている」という点では、明確な違いがあります。
ただし、「医薬部外品=すべての面で化粧品より優れている」とは言えません。保湿感、使用感、続けやすさ、刺激の感じ方などは、区分とは別に決まります。
ご自身の目的が、その医薬部外品の効能と一致しているかどうかで判断してください。
Q. 成分表だけ見れば、自分に合うか分かりますか?
分かりません。
成分表からは、配合濃度、原料の規格、処方全体のバランス、pH、製造方法、安定化技術、使用感、容器による安定性などが読み取れないからです。
成分表はヒントとしては有効です。特に、過去に合わなかった成分が入っていないかを確認するという使い方は実用的だと思います。ただ、それだけで合うかどうかは判断できません。
まとめ:成分表を完璧に読めなくても、美容液は選べます
長くお付き合いいただき、ありがとうございました。持ち帰っていただきたいことだけ、整理しますね。
覚える順番は、この5つだけです
1. 悩みを決める
一つに絞ってください。「なんとなく肌を良くしたい」では選べません。
2. その製品が何を目的としているかを見る
成分表より先に、パッケージや商品ページに書かれている目的を読みます。
3. 化粧品か、医薬部外品かを確認する
医薬部外品なら、有効成分と効能効果の表示を見ます。
4. 成分表は、補助情報として見る
過去に合わなかった成分がないか。役割が重複していないか。主にこの2点のために使います。
5. 実際の使用感と、自分の肌の状態で判断する
条件をそろえて、他を動かさずに見る。刺激が出たら、期間に関係なく中止する。
この記事の中心にある考え方
もう一度だけ、書かせてください。
成分表はヒントにはなるが、処方そのものを完全に読み解ける設計図ではない。
成分名を覚えることに時間をかけるより、自分の悩みを言葉にすることのほうが、はるかに選択の役に立ちます。
「乾燥が気になる」ではなく「洗顔後20分でつっぱる」。
「毛穴が気になる」ではなく「夕方に頬の毛穴が影になって目立つ」。
ここまで具体的にできれば、店頭で商品を手に取ったときに、それが自分向けかどうか判断できるようになります。
最後に、4つだけ
今お使いの美容液を、もう一度手に取ってみてください。
これは、何を目的にした製品ですか?
それは、今のあなたのいちばんの悩みと一致していますか?
化粧品ですか、医薬部外品ですか?
表示どおりの量と頻度で、使えていますか?
この4つに答えられたら、その1本が自分に合っているかどうかは、もう判断できています。
成分表のカタカナを全部覚える必要は、ありませんよ。
参考資料
厚生労働省「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日 薬食発0721第1号)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/kesyouhin_hanni_20111.pdf
厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」(平成13年3月6日 医薬審発第163号/医薬監麻発第220号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta7768&dataType=1&pageNo=1
厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81004000&dataType=0&pageNo=1
日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」
https://www.jcia.org/user/business/advertising
日本化粧品工業会「化粧品の全成分表示記載のガイドライン」
https://www.jcia.org/user/common/download/business/guideline/ingredientlabelling/20180731_IngredientLabelling_Standard-3.pdf
日本化粧品工業会「化粧品広告審査会で話題となった広告表現/角質層への浸透表現」
https://www.jcia.org/user/business/advertising/expression
国民生活センター「国民生活 2024年2月号/化粧品広告でよく使われるワード」
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202402_09.pdf
消費者庁「好転反応に関する表示の考え方」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/pdf/extravagant_advertisement_200331_0005.pdf
American Academy of Dermatology「How to test skin care products」
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/prevent-skin-problems/test-skin-care-products
American Academy of Dermatology「Dermatologist-approved pregnancy skin care」
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/routine/pregnancy-skin-care
American Academy of Dermatology「Retinoid or retinol?」
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-secrets/anti-aging/retinoid-retinol
執筆:Dolce(美容師歴20年以上)
現場で3万人以上の髪と頭皮を見てきた経験から、「年齢を重ねても美しい髪でいられる方法」を発信しています。
DOLCE BEAUTYは、美容室・ネイルサロン・エステなど美容の現場や運営経験を背景に、美容について分かりやすく整理して届ける美容情報メディアです。



