毎日のケアは、足すことより「減らす」ことから
アトピー性皮膚炎は、化粧品やセルフケアで治すものではありません。治療は皮膚科の領域です。
そのうえで、毎日の洗い方・保湿・刺激を減らす工夫は、治療と並行して肌を快適に保つうえで大切な部分になります。
考え方はシンプルです。何かを大量に足すより、自分にとって刺激になっているものを減らして、必要なケアをシンプルに続ける。そして、症状が出ている皮膚を、美容目的の化粧品で無理に攻めない。
「アトピーだから、何も使わないほうがいいのかな」
「敏感肌用って書いてあれば、とりあえず安心?」
「美容室でカラーしたいけど、断られるのが嫌で言い出しにくい」
——こういう気持ち、身に覚えのある方は多いのではないでしょうか。
肌のことで悩んでいると、情報だけがどんどん増えていきます。あれがいい、これは危ない、この成分は絶対に避けたほうがいい。読めば読むほど、何を信じればいいのか分からなくなる。
この記事は、そこを整理するために書きました。
先にひとつ、はっきりさせておきたいことがあります。この記事は、美容師がアトピー性皮膚炎の治し方をお伝えする記事ではありません。アトピー性皮膚炎は医療の領域の疾患で、診断も治療も医師が行うものです。
そのうえで、美容の現場から見えることはあります。毎日どう洗うか。何を塗るか。頭皮はどうするか。美容室で何を伝えればいいか。ここには、知っておくと楽になる考え方がいくつもあります。
目指すのは、読み終わったときに、
何を避けて、何なら自分で見直せて、どこからが医療なのか
が分かっている状態です。怖がらせるための記事ではありません。落ち着いて読んでいただければと思います。
先に結論:足すより、減らす
この記事の答えを、先にお伝えします。
1. アトピー性皮膚炎は、化粧品やセルフケアで治すものではありません
治療は皮膚科の領域です。この記事に書いてあることは、治療の代わりではありません。
2. それでも、日常のケアには意味があります
洗い方、保湿、刺激を減らす工夫。これらは治療と並行して、肌を少しでも快適に保つために役立ちます。
3. 基本は「足す」ではなく「減らす」です
新しいものを次々に試すより、今使っているものの中で刺激になっていそうなものを減らすほうが、うまくいくことが多いです。
4. 症状が出ている皮膚を、美容目的の化粧品で攻めないでください
赤み、かゆみ、湿疹が出ている場所に、角質ケアや刺激のある製品を重ねない。ここが、この記事でいちばん守っていただきたい線です。
ここから先は、なぜそう言えるのかを順番に見ていきます。
そもそも、アトピー性皮膚炎とは何なのか
「肌が弱いだけ」ではありません
まず、よくある単純化を外しておきます。
「アトピーって、乾燥肌がひどくなっただけでしょう」
「肌が弱い体質ってことだよね」
——どちらも、実際とはずれています。
日本皮膚科学会と日本アレルギー学会がまとめた「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」では、アトピー性皮膚炎は次のように定義されています。
増悪と軽快を繰り返す、瘙痒(そうよう=かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは「アトピー素因」を持つ
言葉を分解しますね。
増悪と軽快を繰り返す:良くなったり悪くなったりを行き来する
かゆみのある湿疹:ただの乾燥ではなく、湿疹という炎症が起きている
主病変とする疾患:これは「疾患」、つまり病気として扱われるもの
そして「アトピー素因」というのは、次のどちらかを指します。
家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、または複数)
IgE抗体を産生しやすい素因
つまり、単なる「乾燥がひどい状態」でも「肌が弱い」でもなく、炎症が関わっている疾患なんです。ここが出発点です。
3つの側面から見ると、分かりやすくなります
同ガイドラインをふまえた解説では、アトピー性皮膚炎の状態は次の3つの側面から考えると理解しやすい、とされています。
| 側面 | 何が起きているか |
|---|---|
| 皮膚バリア機能の低下 | 水分を保つ力が下がり、外からの刺激を受けやすくなる |
| 炎症(2型の免疫応答) | 免疫のはたらきが関わって、湿疹という形の炎症が起きる |
| かゆみ | 炎症やその他の要因によって、かゆみが生じる |
大事なのは、この3つがぐるぐる関係し合っているという点です。
バリア機能が下がれば刺激を受けやすくなり、炎症が起きやすくなる。炎症が起きればかゆみが出る。かゆみで掻けば、またバリアが傷む。
だから、「保湿だけすれば解決」でもなければ、「かゆみ止めだけ飲めば解決」でもないんですね。炎症そのものへの対応は、医療の領域になります。
「アトピー肌」と「アトピー性皮膚炎」は、同じ言葉ではありません
ここ、混ざりやすいので分けておきます。
日常会話やSNSでは、「アトピー肌」という言葉が、なんとなく「乾燥しやすくて敏感な肌」くらいの意味で使われることがあります。
でも、「アトピー性皮膚炎」は医師が診断する疾患名です。
子どものころにアトピーと言われたことがある
乾燥やかゆみが出やすい
化粧品で刺激を感じやすい
——こうした状態のすべてが、現在アトピー性皮膚炎である、という意味にはなりません。逆に、自分では「乾燥がひどいだけ」と思っていた状態が、受診してみたら別の診断だった、ということもあります。
この記事では、便宜上「アトピー肌」という言い方も使いますが、診断は医師が行うもの、という前提は変わりません。今の自分の状態がどうなのか分からない場合は、それ自体が受診の理由になります。
治療について、ひとつだけ
この記事は治療の記事ではないので詳しくは扱いませんが、ひとつだけ書いておきます。
アトピー性皮膚炎の治療では、炎症を抑える外用薬、保湿、悪化要因への対策を組み合わせていくのが基本的な考え方とされています。近年は新しい選択肢も増えています。
ネット上には、処方された薬を否定するような情報もあります。この記事では、そうした立場は取りません。薬の使い方について迷いや不安があるときは、自己判断でやめるのではなく、処方した医師に相談してください。「使うのが不安です」と伝えること自体が、大事な相談です。

角層は、とても薄いのに大きな仕事をしています
皮膚のバリア機能を、絵にしてみましょう
さて、「バリア機能」という言葉。よく見かけますが、実際に何のことなのか、イメージできているでしょうか。
肌のいちばん外側にある「角層」
肌の表面には、角層(かくそう)という層があります。役割を終えた細胞が積み重なってできた、とても薄い層です。
どのくらい薄いか。厳密な厚みは部位によって違うのですが、イメージとしては食品用ラップ1枚くらいの薄さを思い浮かべていただくと近いです。
(あくまでイメージです。「角層=ラップ1枚とぴったり同じ厚さ」ということではありません。)
レンガとモルタルの壁
この角層の構造は、よくレンガの壁にたとえられます。
レンガ = 角層細胞(役割を終えた細胞)
モルタル(レンガの間を埋めているもの) = 細胞間脂質
レンガだけを積んでも、隙間だらけで壁になりませんよね。間を埋めるモルタルがあって、はじめて壁として機能します。角層も同じで、細胞と細胞の隙間を脂質が埋めることで、層としてのはたらきを持ちます。
さらに、レンガにあたる細胞の内側には、水を抱え込む性質のある物質(天然保湿因子)が含まれています。そして表面には、皮脂と汗が混ざった薄い膜。
これらが重なって、角層は「壁」としてはたらいています。
壁が担っている、2つの仕事
家の外壁を思い浮かべてください。外壁がやっていることは、大きく2つですよね。
1. 中のものを、外に逃がしすぎない
肌でいえば、内側の水分が蒸発しすぎないようにすること。
2. 外のものを、簡単に中に入れない
肌でいえば、外からの刺激や物質が簡単に入り込まないようにすること。
アトピー性皮膚炎では、このバリア機能が低下し、水分を保つ力が下がることが知られています。だから乾燥しやすく、刺激も受けやすい。
誤解しないでいただきたいこと
ここで、大事なことを2つ。
「壁が壊れて穴だらけ」ではありません。
バリア機能の低下というのは、壁が消えてなくなることではなく、はたらきが弱まっている状態です。恐怖をあおる説明を見かけることがありますが、そういうものではありません。
「見た目に乾燥していなくても、乾燥していることがある」
これは知っておくと役に立ちます。アトピー性皮膚炎では、症状が出ていないように見える場所でも乾燥していることがあるとされています。「今は落ち着いているから保湿はいらない」とはならない、ということです。
かゆい → 掻く → もっとかゆい、という輪
掻いてしまうのは、意志が弱いからではありません
かゆみと掻くことの関係について、まず前提を共有させてください。
掻いてしまうことを、あなたのせいにする話ではありません。
かゆみというのは、我慢でどうにかなるものではないことがあります。特に眠っている間は、自分でコントロールできません。「掻かないようにしましょう」と言われて掻かずに済むなら、誰も苦労していないですよね。
そのうえで、何が起きているのかだけ、共有しておきます。
何が起きているのか
掻くという行為は、皮膚にとっては物理的な刺激です。掻くことで皮膚が刺激を受け、その結果として炎症が起きやすくなり、さらにかゆみが生じやすくなる——という循環が起こりえます。
図にすると、こうなります。
かゆみ
↓
掻く(皮膚への刺激)
↓
炎症・バリア機能の低下
↓
またかゆみ → 最初に戻る
この輪のどこかを緩めたい、というのがケアの発想です。
「掻くな」で終わらせない
では、どうするか。ポイントは、「掻くのをやめる」ではなく「掻きたくなる状況を減らす」という方向に発想を変えることです。
かゆみそのものへの対応は、医療の領域です。炎症が原因のかゆみは、炎症への対応が必要になります。かゆみが強くて眠れない、日常生活に支障がある。これは受診の理由として十分です
乾燥は、かゆみのきっかけになりやすい要因のひとつです。保湿が役に立つのは、この部分です
物理的な刺激を減らす。衣類のチクチク、汗をかいたまま放置、熱いお湯、こする洗い方。こうしたものは自分で調整できる部分です
掻いてしまったときに、被害を小さくする。爪を短く整えておく、というのはとても地味ですが実用的です
「掻いてしまった自分」を責めても、肌は良くなりません。責めるかわりに、掻きたくなる条件を1つずつ減らしていく。こちらのほうが現実的です。

足すのではなく、減らすところから見直します
毎日のケアで、できること
ここから実践編です。
全体の方針は、記事の最初に書いたとおりです。足すより、減らす。
なぜかというと、使っているものが多いほど、何が刺激になっているのか分からなくなるからです。5つ使っていて調子が悪いとき、犯人を探すには結局1つずつ試すしかありません。
では、具体的に見ていきましょう。
洗い方をどう考えるか
「洗いすぎ」と「洗わない」は、どちらも極端です
アトピー性皮膚炎と聞くと、「石けんは使わないほうがいい」「顔も体も洗わないほうがいい」という話を目にすることがあります。
これも、一律には決められません。
診療ガイドラインをふまえた一般的な説明では、皮膚の清潔には入浴やシャワー浴を行い、石けんなどの洗浄剤については皮膚の状態によって、使用を最小限にとどめることもあれば、積極的に使うこともあるとされています。
つまり、「使う/使わない」を体質で決めるのではなく、そのときの皮膚の状態で判断するということです。ここは自己判断せず、通院されている方は主治医に相談していただくのがいちばん確実です。
「清潔にする」と「皮脂を全部取り去る」は別のことです
ここ、混ざりやすいので分けておきます。
清潔にする = 汗、汚れ、外からついたものを落とす
皮脂を完全に取り去る = 肌の表面を守っている膜まで、根こそぎ落とす
必要なのは前者です。後者まで行くと、かえって乾燥や刺激につながることがあります。
「洗ったあと、つっぱるくらいさっぱりするのが良い洗顔」——というイメージをお持ちの方がいらっしゃったら、そこは一度手放していただいていいと思います。
避けたい洗い方
体質にかかわらず、次のような洗い方は負担が大きくなりやすいです。
| 避けたいこと | なぜ |
|---|---|
| ゴシゴシこする | 物理的な刺激そのものです。タオルやスポンジで擦るのも同様 |
| 熱いお湯で長く洗う | 熱いほど、皮脂が落ちやすくなります |
| 長時間の洗浄 | 洗浄剤が肌に触れている時間が長いほど、負担が増えます |
| 洗浄力の強いものを何種類も重ねる | クレンジング+洗顔+角質ケア、と重ねると合計の負担が大きくなります |
| 1日に何度も洗う | 回数が増えれば、そのぶん負担も増えます |
お湯の温度について
「アトピーなら38℃」「40℃以上は絶対NG」といった数字を見かけることがあります。
この記事では、固定の温度を断定しません。
医療機関の案内では、ぬるめの範囲を目安として示していることがあります。ただ、体感温度には個人差がありますし、季節によっても感じ方が変わります。
実用的な基準としては、こうです。
「熱い」と感じる温度を避けて、無理のないぬるめにする。
温度計を持ち込む必要はありません。「気持ちいいけど、熱くはない」くらいが目安です。
長風呂も、同じ理由でほどほどに。のぼせるほど浸かると、かゆみが出やすくなる方もいらっしゃいます。
洗うときの実際
まとめると、こうなります。
泡立てて、泡でなでるように洗う(手のひらでも、泡立てネットでも構いません)
タオルやナイロンのボディタオルでこすらない
ぬるめのお湯で、しっかりすすぐ
すすぎ残しに注意する(特に髪の生え際、耳の後ろ、首の後ろ)
拭くときは、こすらず押さえるように
拭き方は見落とされがちですが、けっこう大事です。タオルでゴシゴシ拭くのは、洗うときにこするのと同じことをしています。
保湿をどう考えるか
保湿剤は、いくつかの仕事を組み合わせています
「保湿」という一語でまとめられがちですが、実際には複数のはたらきの組み合わせでできています。
| はたらき | やっていること |
|---|---|
| 水分を抱える | 水を抱え込む性質のある成分が、うるおいを保つのを助ける |
| 表面をなめらかにする | 乾いてこわばった感じをやわらげる |
| 水分が逃げにくい状態をつくる | 表面に薄い層を作り、蒸発をゆるやかにする |
製品は、これらを組み合わせて設計されています。だから「どれか1つだけあればいい」という話でもないんですね。
「化粧水を大量に入れ込む」は、保湿ではありません
よくある誤解を、はっきりさせておきます。
化粧水を何度も重ねることだけが、保湿の正解とは限りません。
化粧水は水分や保湿成分を補う製品ですが、乾燥が続く場合は、化粧水の回数だけを増やすのではなく、乳液・クリーム・保湿剤などを含めた全体の組み合わせを見直すほうが実用的です。
「化粧水を3回重ねているのに夕方には乾く」という状態は、この形になっていることがあります。
そして、化粧水は必須ではありません。乳液、クリーム、保湿剤などで構成が成立していれば、それで問題ありません。工程の数ではなく、全体として角層に水分と保湿成分が行き渡り、それが保たれているかどうかで考えてください。
化粧水と美容液の役割や使う順番は、美容液と化粧水はどっちが先?で詳しく整理しています。
何層も重ねれば良い、でもありません
同じ方向のものを何層も重ねても、効果が単純に足し算になるわけではありません。
むしろ、重ねるほど次のことが起きやすくなります。
べたつく
白いカスのようなもの(モロモロ)が出る
塗るのに時間がかかって、続かなくなる
何が合っていて何が合っていないのか、分からなくなる
最後のひとつが、いちばん困ります。
塗るタイミング
一般的には、入浴後、あまり時間をおかずに塗ることが案内されています。肌がまだ湿っているうちに、という考え方です。
ただ、これも「何分以内」と厳密に測る必要はありません。「お風呂から出たら、なるべく早めに」くらいの理解で十分です。
量について
量は製品や塗る部位によって変わるため、一律に決められません。
こすらないと広げにくい場合は、製品の使用方法や適量を確認してください。処方薬・処方保湿剤は、医師や薬剤師から指示された量と使い方を優先します。
自己判断で量を増減しすぎず、製品表示や医療側の指示に沿うことが基本です。
なお、処方された保湿剤を使っている場合は、その使い方の指示が優先されます。
化粧品を、どう選ぶか
ここからは、店頭で迷ったときの考え方です。
「何を塗るか」より「刺激にならないか」
これが、この章のいちばんの結論です。
成分名で選ぶ発想を、いったん手放してください。
「この成分ならアトピーに効く」
「セラミドが入っていれば大丈夫」
「ワセリンなら絶対に安全」
——どれも、そうとは言い切れません。
理由は、同じ成分名でも次が違えば別の製品だからです。
配合量
一緒に入っている他の成分
剤形(水状か、乳液状か、軟膏状か)
使用感
そして、個人差
最後の「個人差」が、この分野では特に大きく効きます。誰かに合ったものが自分に合うとは限りませんし、その逆もあります。
だから、判断の順番はこうなります。
成分名から探すのではなく、実際に使ってみて刺激がないかを見る。
遠回りに聞こえるかもしれませんが、これがいちばん確実です。
ワセリンについて
よく話題に出るので、整理しておきます。
ワセリンは、肌の表面から水分が逃げにくい状態をつくる目的で使われることがある油性の基剤です。保湿剤としても、他の外用薬の基剤としても使われます。
ただし、次のようには書きません。
「ワセリンが皮膚を治す」——治療をするものではありません
「バリア機能を完全に修復する」——そういう作用を持つものではありません
「誰にでも安全」——使用感が合わない方も、刺激を感じる方もいらっしゃいます
実際のところ、ワセリンはべたつきが強いので、顔に使うと不快に感じる方や、メイクとの相性で困る方もいます。「安全だから我慢して使う」ものではありません。
合う方には合う、選択肢のひとつ。そのくらいの位置づけで見ていただければと思います。
セラミドについて
セラミドは、先ほどのレンガの壁の話に出てきた「モルタル」、つまり角層の細胞間脂質を構成する主要な成分のひとつです。
名前だけ聞くと難しいですが、正体はここにあります。
ただ、ここも線を引きます。
化粧品にセラミドが入っていることと、「セラミド化粧品を使えばアトピーが良くなる」ことは、まったく別の話です。
化粧品としてできるのは、セラミド類を含む保湿製品として、角層の状態を整えることです。疾患そのものへの対応ではありません。
セラミド配合の保湿製品を使うこと自体は、選択肢として問題ありません。ただ、それを治療の代わりにはしないでください。
「敏感肌用」「無添加」「天然」「オーガニック」について
ここは、いちばん誤解が多いところです。ひとつずつ整理します。
| 表示 | 実際の意味 |
|---|---|
| 敏感肌用 | そういう設計を目指した製品、という意味。全員に刺激がゼロという保証ではありません |
| 無添加 | 「何かを入れていない」という表示。何が無添加なのかは製品によって違います。安全性を示すものではありません |
| 天然(由来) | 由来が植物などである、という意味。天然由来でも、刺激やアレルギーの原因になることはあります |
| オーガニック | 原料の栽培方法などに関する概念。アトピー向けという意味ではありません |
特に「天然だから安全」という思い込みは、この記事の後半(ヘアカラーの章)でもう一度出てきます。実際に健康被害につながった事例が公表されている部分なので、覚えておいていただけたらと思います。
では、表示は見なくていいのか
そんなことはありません。表示はヒントとしては有効です。
過去に合わなかった成分が入っていないかを確認する
医薬部外品なのか、一般の化粧品なのかを確認する
香料の有無など、自分が気にしている点を確認する
こうした使い方は実用的です。ただ、表示だけで「合う/合わない」は決められない、ということです。
最終的な判断材料は、実際の使用感と、医師の指示です。
新しい製品を試すとき
初めて使う製品は、いきなり顔全体・体全体に使わないほうが安全です。
新しい化粧品は、まず製品の使用方法・注意表示を確認してください。広い範囲へいきなり使うことを避け、小範囲から試す方法が案内されることもありますが、現在強い炎症がある場合や、過去に強いアレルギー反応があった場合は自己判断のテストに頼らず皮膚科へ相談してください。
ここで、ひとつ大事な注意があります。
自宅で少量から試すことと、医療機関で行う検査は、別のものです。
医療機関で行うパッチテスト(皮膚貼付試験)は、原因物質を一定時間貼付して、複数回にわたって医師が判定する検査です。自宅で少量塗ってみることは、それとは違います。
つまり、「自宅で試して大丈夫だったから、アレルギーはない」とは言い切れません。あくまで、いきなり広範囲に使うよりリスクを下げる、という位置づけです。
きちんと調べたい場合は、皮膚科でご相談ください。
刺激が出たときの考え方(ここは譲りません)
化粧品を使って、次のような症状が出た場合。
赤み
強いかゆみ
腫れ
ヒリヒリする
痛み
湿疹
このときにすることは、使用を中止することです。
「効いている証拠」ではありません。
「毒が出ている」わけでもありません。
「好転反応だから続けましょう」という説明を、受け入れないでください。
消費者庁や国民生活センターも、体調不良を「好転反応」などと説明して商品を使い続けさせることに注意を促しています。
やっていただきたいのは、この順番です。
原因になっていそうな製品の使用を、いったん止める
症状が強い、続く、広がる場合は皮膚科に相談する
受診するときは、使っていた製品を持参するか、商品名と成分表示を控えていく
3つ目は地味ですが、診察のときにかなり役立ちます。
頭皮とヘアケアで、気をつけたいこと
ここからは美容師の領域に近い話です。ただし、頭皮の状態を美容師が診断することはできません。その前提で読んでいただければと思います。
頭皮も、皮膚の一部です
当たり前のようですが、意外と見落とされます。
顔や体の肌には気を配っているのに、頭皮だけは「シャンプーでしっかり洗うもの」と別枠になっている方、けっこういらっしゃいます。
頭皮も皮膚です。乾燥もしますし、刺激も受けます。顔に対してやらないことは、頭皮にもやらないほうがいい、と考えるとシンプルです。
かゆみや炎症があるときは、強く洗わない
かゆいときほど、しっかり洗いたくなりますよね。すっきりさせたい気持ちも分かります。
でも、かゆみや炎症があるときに洗浄力を上げると、負担が増えることがあります。方向が逆になってしまうんです。
そして、爪を立てないでください。これは本当に大事です。
シャンプーは、指の腹で、なでるように。爪を立ててガリガリ洗うのは、頭皮を掻いているのと同じことをしています。かゆみが強いときほど、ここは意識していただきたい部分です。
洗浄力だけで商品を決めない
「よく落ちる」ことが良いこと、とは限りません。
顔の洗浄について書いたのと同じで、頭皮も「清潔にする」と「皮脂を全部取り去る」は別のことです。
シャンプーの「成分系統」だけで安全・危険を決めない
「アミノ酸系だから安心」「◯◯系だから危険」という分け方を、よく見かけます。
これは、単純化しすぎです。
同じ系統に分類される成分でも、種類も、配合量も、他に何が入っているかも、製品によってまったく違います。系統名は製品の性格を大まかに示すヒントにはなりますが、それだけで安全性は決まりません。
そして、化粧品の章と同じです。判断材料は、自分の頭皮の反応です。
すすぎ残しにも注意を
これは現場でよく感じる部分です。
シャンプーやトリートメントが残りやすいのは、次のような場所です。
髪の生え際(特に額の生え際)
耳の後ろ
首の後ろ・うなじ
分け目
「洗う」ことには気を配っていても、すすぎ残しは見落とされがちです。時間を固定せず、生え際・耳の後ろ・うなじなどに洗浄料が残らないよう、丁寧にすすいでください。
整髪料やヘアケア製品が刺激になることもあります
シャンプーだけに注目しがちですが、頭皮に触れるものは他にもあります。
洗い流さないトリートメント
スタイリング剤(特に頭皮につきやすいもの)
スカルプケア製品
ドライシャンプー
これらが刺激になっている方もいらっしゃいます。
症状があるときは、商品を増やすより「一度整理する」
ここが、この章でいちばんお伝えしたいことです。
頭皮の調子が悪いとき、多くの方は新しい商品を足そうとします。かゆみに良さそうなシャンプー、頭皮用の美容液、スカルプエッセンス。
気持ちは分かるのですが、これをやると原因が分からなくなります。
考え方としては、逆の発想が役立つことがあります。
処方薬は自己判断で中止せず、美容目的で追加している製品をいったん整理してみる。
医師から指示されている外用薬などはそのまま続けたうえで、スカルプ美容液、整髪料、ドライシャンプーなど任意の美容製品を一度整理し、必要なら1つずつ戻していく方法があります。
時間はかかりますが、この方法なら「何が合わなかったか」が分かります。
そして、症状が強い、続く、広がる場合は、商品の入れ替えをする前に皮膚科にご相談ください。
美容目的のアイテムを増やす前に考え方を整理したい場合は、導入液は本当に必要?も参考にしてください。
ヘアカラーについて
ここは、この記事でいちばん慎重に書く部分です。
「アトピーだからカラー禁止」とは書きません
まず、一律に禁止する記事にはしません。
アトピー性皮膚炎があるという理由だけで、すべての人がヘアカラーをできない、ということではありません。
ただし、今の頭皮の状態は別の話です
一方で、次のような状態が現在ある場合は、話が変わります。
赤み
湿疹
傷(掻き壊しを含む)
強いかゆみ
こうした状態の頭皮に、無理に施術を勧める記事にもしません。
炎症や傷がある皮膚は、刺激を受けやすくなっています。「今日どうしても染めたい」という気持ちがあっても、いったん見送るという判断が、結果的に自分を守ることになります。
酸化染毛剤と、アレルギーについて
正確に知っておいていただきたい部分なので、事実を整理します。
いわゆる白髪染めやおしゃれ染めとして広く使われている酸化染毛剤は、薬機法上は医薬部外品に分類されます。
この酸化染毛剤に使われる酸化染料、なかでもパラフェニレンジアミン(PPD)などは、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こしやすい成分であることが知られています。消費者安全調査委員会の調査報告書でも、これらの物質によるアレルギー性接触皮膚炎は症状が重くなりやすいと考えられる、とされています。
知っておいていただきたい特徴が、2つあります。
1. ある日突然、起こることがあります
これまで何回も問題なく染められていた方でも、体質の変化などによって、突然かぶれるようになることがあります。「今まで大丈夫だったから」は、今後の保証にはなりません。
2. 一度起きると、繰り返すたびに重くなることがあります
いったん症状が治まっても、再度使用すれば発症し、次第に症状が重くなり、全身症状に至ることもあるとされています。
過去にヘアカラーでかぶれたことがある方へ
ここは、はっきり書きます。
過去に酸化染毛剤(一般的なヘアカラー)でかぶれたことがある方に、この記事から自己判断での再使用をおすすめすることはありません。
日本ヘアカラー工業会では、ヘアカラーでかぶれたことのある方は使用しないよう注意喚起しています。ここでいう「ヘアカラー」は主に酸化染毛剤を指す文脈です。別タイプの染毛料なら必ず安全という意味ではないため、過去にかぶれた経験がある方は自己判断で代替品へ切り替えず、医師へ相談してください。
理由は、少量の接触でも重い症状が出る可能性があるためです。
2026年5月に国民生活センターが公表した資料でも、酸化染料等にアレルギーの経験がある方は、自分でパッチテストを行う前に医師に相談するよう呼びかけられています。
「別の商品なら大丈夫かも」「美容室でやってもらうなら平気かも」——という自己判断は、しないでください。医師にご相談ください。
酸化染毛剤のセルフテスト(パッチテスト)について
酸化染毛剤タイプのヘアカラーでは、染める48時間前に、毎回セルフテスト(皮膚アレルギー試験)を行うよう日本ヘアカラー工業会が案内しています。製品ごとの使用説明書を必ず優先してください。
ポイントは「毎回」です。同じ商品を繰り返し使っている場合でも、体質は変わりうるためです。
手順は製品の説明書に記載されているので、それに従ってください。テスト部位を絆創膏などで覆わない、こすらない、濡らさない、といった注意点もあります。
なお、過去に酸化染料等でアレルギー反応を経験した方は、自己判断でパッチテストを行う前に医師へ相談してください。
「ヘナなら天然だから安全」ではありません
ここは、2026年5月に公表された内容なので、特に知っておいていただきたい部分です。
酸化染毛剤を避けたい方が、代わりに「ヘナ」を選ぶことがあります。植物由来だから安心、というイメージがあるためです。
ところが、国民生活センターの調査では、「黒く染まる」とされるヘナ製品の一部に、パラフェニレンジアミンなどの酸化染料が含まれていたことが報告されています。
さらに深刻なのは、人体への使用を前提としていない「かつら用」の雑貨扱いのヘナ製品が、美容所で人の頭髪に使われていた事例です。この事例では、アナフィラキシーショックを起こして救急搬送に至っています。
同センターは、消費者へのアドバイスとして次のように示しています。
かつら用のヘナ製品は、絶対に頭髪に使用しないこと
美容所や理容所で毛染めを受ける際は、使用される製品が頭髪用であることを施術者に必ず確認すること
酸化染料等にアレルギーの経験がある方は、自分でパッチテストを行う前に医師に相談すること
「天然」「植物由来」「体にやさしい」という言葉と、実際の安全性は、別のものです。ここは、この記事の前半で書いた「天然だから安全とは限らない」という話と、まっすぐつながっています。
怖がる必要はありません。でも、確認はしてください
ここまで読んで、不安になった方がいらっしゃるかもしれません。
お伝えしたいのは、「ヘアカラーは危険だからやめましょう」ということではありません。確認すべきことを確認したうえで判断してください、ということです。
その確認の中身が、次の章です。
パーマ・縮毛矯正について
考え方は、ヘアカラーと同じ枠組みです。
炎症や傷があるときは、無理にしない
頭皮に赤み、湿疹、傷、掻き壊しがある状態での施術は、避けたほうがいい状況です。
これは「アトピーだからダメ」ではなく、「今、その状態だから見送る」という判断です。
「アトピーなら絶対にできない」とも書きません
一方で、一律に不可能と決めつけることもしません。
施術ができるかどうかは、次の要素で変わります。
現在の皮膚(頭皮)の状態
過去に同じような施術で刺激やトラブルが出たことがあるか
医療側からの指示(皮膚科で止められている施術はないか)
美容師との相談のうえでの判断
つまり、「その日、その人、その状態」で決まるということです。ネットの一般論では答えが出ません。

言いにくいことこそ、先に伝えておくと安心です
美容室で、何を伝えればいいか
「言うと断られそうで、言い出しにくい」
この気持ち、よく分かります。せっかく予約したのに、と思うと言いづらいですよね。
でも、伝えていただいたほうが、こちらとしても選択肢を出せます。何も知らずに施術して問題が起きるほうが、お互いにとって困る結果になります。
伝えていただきたいこと(チェックリスト)
そのまま見せていただいても構いません。
□ アトピー性皮膚炎があること(過去に診断されたことも含めて)
□ 現在、頭皮に症状があるか
(赤み・かゆみ・湿疹・傷・掻き壊しなど)
□ 過去にカラーやパーマで刺激やかぶれが出たことがあるか
□ 現在、皮膚科で治療を受けているか
□ 皮膚科から止められている施術があるか
□ 頭皮や髪に使っている薬があるか
□ 使用する製品が頭髪用のものか確認したい、ということ
最後の1つは、先ほどのヘナの事例を受けたものです。遠慮せず聞いていただいて構いません。
そして、施術中にもうひとつ。
しみる、ヒリヒリする、かゆいと感じたら、その場ですぐ伝えてください。
「このくらいなら大丈夫かな」「言うと悪いかな」と我慢しないでください。早く言っていただくほど、対応できることが増えます。
予約のときに伝えるのもおすすめです
当日いきなり伝えるより、予約の段階で一言添えておくと、時間の確保やパッチテストの案内など、事前に準備ができることがあります。
電話でもメッセージでも構いません。「頭皮が敏感なので、当日相談させてください」だけでも十分です。
美容師側にも、してはいけないことがあります
これは、同じ立場の人間として書いておきます。
「我慢してください」と言う
「いつも大丈夫だから今日も大丈夫」と決めつける
症状があるのに、そのまま施術を進める
過去にかぶれた経験のある方に、別商品での再挑戦をすすめる
これらは、してはいけないことです。
もし施術中に不安を感じたら、遠慮なく「今日はやめておきたい」と伝えていただいて構いません。それで気を悪くする美容師がいるとしたら、それは美容師側の問題です。
医療と美容の境界線
ここは、この記事でいちばん大事な部分かもしれません。
美容師にできることと、できないことを、はっきり分けておきます。
美容師にできること
施術前に、頭皮の状態を目で見て確認する
刺激がありそうな状態なら、施術を見合わせる提案をする
施術を行う場合に、頭皮への接触を避ける工夫や使用製品・工程を検討する。ただし安全を保証することはできない
ホームケアについて、一般的な使い方を案内する
異変があったときに、医療機関へ相談するようお伝えする
美容師にできないこと
アトピー性皮膚炎の診断
薬の変更や、使う・使わないの判断
治療をやめるよう伝えること
「この化粧品で治ります」という説明
この4つは、美容師の領域ではありません。もし美容室でこうした話をされたら、その内容は受け取らないでください。
表で整理すると
表は横にスクロールして読めます。
| 場面 | 自分で見直せること | 皮膚科に相談すること |
|---|---|---|
| 乾燥 | 洗い方、お湯の温度、保湿の量とタイミング | 保湿しても改善しない、粉をふく状態が続く |
| かゆみ | 衣類、汗の処理、爪の長さ、室内の環境 | 眠れない、日常生活に支障がある、掻き壊してしまう |
| 赤み・湿疹 | — | すべて相談の対象です |
| 化粧品の刺激 | 使用を中止する、使う品数を減らす | 中止しても症状が続く、広がる |
| 頭皮のかゆみ | シャンプーの洗い方、すすぎ、使う品数 | 湿疹、ただれ、フケが急に増えた、痛みがある |
| ヘアカラーでの異常 | — | すべて相談の対象です |
| 薬の使い方への不安 | — | 処方した医師に相談してください |
赤み・湿疹・ヘアカラーでの異常には、「自分で見直せること」の欄がありません。これは意図的です。この3つは、美容の工夫で対応する話ではないからです。
こんな症状があるときは、美容で対応しません
念のため、はっきり書いておきます。次の症状があるときは、化粧品や施術の話ではなく、医療の話です。
赤みが引かない
腫れている
強いかゆみがある
痛みがある
湿疹が広がっている
じくじくしている、汁が出ている
水ぶくれのようなものがある
眠れないほどかゆい
このときにすることは、新しい製品を探すことではなく、受診することです。
そして、ヘアカラーやパーマの後に、かゆみ、発疹、腫れ、息苦しさなどの症状が出た場合は、直ちに使用・施術をやめて医療機関を受診してください。特に息苦しさや全身の症状は、急いで対応が必要な場合があります。
よくある質問
Q. アトピーだから、化粧品は何も使わないほうがいいですか?
一律にそうとは言えません。
保湿は、治療と並行して行うケアとして重要とされています。使わないほうがいいのではなく、自分に合わないものを使わない、という考え方です。
品数を絞って、刺激の出ないものを続ける。これが基本になります。
Q. 「敏感肌用」と書いてあれば安心ですか?
安心の保証にはなりません。
「敏感肌用」は、そういう設計を目指した製品という意味であって、すべての人に刺激が出ないことを保証するものではありません。肌に合わない成分は人によって違います。
表示はヒントとして使い、最終的には実際に使ってみた反応で判断してください。
Q. 天然成分やオーガニックのほうが、肌にやさしいですか?
そうとは限りません。
天然由来でも、刺激やアレルギーの原因になることはあります。実際、「天然だから安心」と思って選んだヘナ製品に酸化染料が含まれていて、重い症状に至った事例が公表されています。
由来ではなく、自分の反応で判断してください。
Q. お湯は何℃にすればいいですか?
固定の温度は決めません。
「熱い」と感じる温度を避けて、無理のないぬるめにする。これで十分です。温度計を用意する必要はありません。
長風呂も、ほどほどに。
Q. 化粧水は必要ですか?
必須ではありません。
乳液やクリーム、保湿剤などで構成が成立していれば、それで問題ありません。工程の数ではなく、全体として保湿ができているかどうかで考えてください。
Q. ヒリヒリするのは、効いている証拠ですか?
違います。
ヒリヒリ、赤み、かゆみは、肌が反応しているサインです。「好転反応」「毒が出ている」といった説明で使い続けないでください。
原因になっていそうな製品の使用を中止し、症状が強い、続く、広がる場合は皮膚科にご相談ください。
Q. アトピーでもヘアカラーはできますか?
一律に「できない」とは言えません。ただし、いくつか前提があります。
現在、頭皮に赤み・湿疹・傷・強いかゆみがある場合は、見送る判断を
過去にヘアカラーでかぶれたことがある方は、自己判断で再挑戦しないでください。医師にご相談ください
美容室では、アトピー性皮膚炎があること、現在の頭皮の状態、過去の反応を事前に伝えてください
酸化染毛剤タイプを使う場合は、製品説明書に従い48時間前のパッチテストを毎回行う
Q. ヘナなら安全ですか?
「ヘナだから安全」とは言えません。
黒く染まるとされるヘナ製品の中には、パラフェニレンジアミンなどの酸化染料が含まれているものがあることが報告されています。また、人体への使用を前提としていない「かつら用」の製品が流通しており、これが美容所で使われていた事例も公表されています。
美容室で毛染めを受けるときは、使用される製品が頭髪用のものかを確認してください。
Q. 頭皮がかゆいとき、専用のシャンプーを買ったほうがいいですか?
まず、増やすより減らすことを検討してみてください。
処方薬は自己判断で止めず、スカルプ美容液や整髪料など任意の美容製品を一度整理し、必要なら1つずつ戻す方法があります。原因の切り分けがしやすくなります。
そして、湿疹、ただれ、痛み、急にフケが増えたといった症状がある場合は、シャンプーを探す前に皮膚科にご相談ください。
Q. ステロイドは使わないほうがいいと聞きましたが?
この記事では、処方された薬を否定する立場は取りません。
薬の使い方について不安や疑問があるときは、自己判断で中止するのではなく、処方した医師に相談してください。「不安があります」と伝えること自体が、大事な相談です。
美容師が薬について判断することはできません。
Q. どのくらいで良くなりますか?
この記事では、日数の目安をお伝えしません。
状態は人によって違いますし、「◯日で改善」といった一般化ができるものではないからです。経過については、診てもらっている医師にご確認ください。
まとめ
長くなりましたので、持ち帰っていただきたいことを整理します。
大前提
アトピー性皮膚炎は、化粧品やセルフケアで治すものではありません
診断も治療も、医療の領域です
処方された薬について不安があれば、やめる前に医師に相談を
日常のケア
方針は「足す」より「減らす」
洗いすぎも、洗わないも、どちらも極端。清潔にすることと、皮脂を全部取り去ることは別
お湯は「熱い」と感じない、無理のないぬるめに
保湿は、化粧水を重ねることではなく、全体の組み立てで考える
化粧水は必須ではありません
化粧水と美容液の役割や使う順番は、美容液と化粧水はどっちが先?で詳しく整理しています。
化粧品選び
成分名で選ぶより、自分に刺激が出ないかで判断する
「敏感肌用」「無添加」「天然」「オーガニック」は、安全性の保証ではありません
新しいものは、小範囲から少量で。ただし自宅で試すことと医療機関の検査は別のもの
赤み・かゆみ・腫れ・痛みが出たら中止。「好転反応」で続けない
頭皮とヘアケア
頭皮も皮膚です。顔にやらないことは、頭皮にもやらない
爪を立てず、指の腹でなでるように。すすぎ残しにも注意
成分系統だけで安全・危険を決めない
調子が悪いときは、増やすより一度整理する
美容室で
アトピー性皮膚炎があること、今の頭皮の状態、過去の反応を伝える
使用される製品が頭髪用か、確認して構いません
施術中に違和感があれば、その場ですぐ伝える
過去にヘアカラーでかぶれたことがある方は、自己判断で再挑戦しない
最後に
肌のことで悩んでいると、「もっと何かしなければ」という気持ちになりやすいと思います。新しい商品を探して、口コミを読んで、また試して。
でも、この記事でお伝えしたかったのは、その逆です。
減らしていいんです。
品数を絞って、刺激の少ないものを、無理のない範囲で続ける。それで肌が快適に保てているなら、少なくとも美容面では無理に品数を増やす必要はありません。
そして、自分で抱え込まなくていい部分があります。赤み、湿疹、眠れないほどのかゆみ。これらは、化粧品を探して解決する話ではありません。医療につなぐ部分です。
境界線がはっきりすると、悩む範囲が小さくなります。この記事が、その手助けになればうれしいです。
参考資料
公益社団法人日本皮膚科学会・一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/ADGL2024.pdf
一般社団法人日本アレルギー学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
https://www.jsaweb.jp/uploads/files/%E3%82%A2%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%BC%E6%80%A7%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%82%8E%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32024(HP%E6%8E%B2%E8%BC%89%E7%94%A8)(3).pdf
独立行政法人国民生活センター「酸化染料を含むヘナ製品によるアナフィラキシーが発生-かつら用の製品を頭髪に使ってはいけません-」(2026年5月20日)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20260520_2.pdf
消費者庁 消費者安全調査委員会「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書 毛染めによる皮膚障害」(平成27年10月23日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/csic/report/report_008/pdf/8_houkoku.pdf
日本ヘアカラー工業会「皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を実施しましょう」
https://www.jhcia.org/en/haircoloring-salon/4_patchtest.html
消費者庁「好転反応に関する表示の考え方」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/pdf/extravagant_advertisement_200331_0005.pdf
厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=81004000&dataType=0&pageNo=1
日本化粧品工業会「化粧品等の適正広告ガイドライン」
https://www.jcia.org/user/business/advertising
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療に代わるものではありません。症状については医療機関にご相談ください。
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