はじめに:よくある疑問「全身用でクレンジングもできる?」
前回の記事では、「髪・顔・体すべてに使える全身用洗浄剤ベスト10」をご紹介しました。
そのなかで読者の方から特に多かった声が、「じゃあ、クレンジング(メイク落とし)まで全身用でできるの?」という疑問です。
確かに、「一本で全身も顔もメイクも落とせるなら最高」と思いますよね。
ですが、現場で20年以上・のべ3万人の髪と肌を見てきた私の結論はシンプルです。
👉 “できる”部分はあるけれど、「クレンジング」としての代用は基本的にできない。
この記事では、その理由と、プロとしておすすめできる「正しい使い分け方」について解説していきます。
結論:「クレンジング」とは別物。基本的には落としきれない
全身用のシャンプーやボディソープは、皮脂や汗、ホコリなど水溶性の汚れを落とすことを目的に設計されています。
一方で、メイクや日焼け止め、ファンデーションなどの油性汚れは性質がまったく異なり、“浮かせて落とす”専用設計のクレンジング剤が必要です。
つまり、目的も設計思想も異なるため、「汚れが落ちる」という点では共通していても、クレンジングとして代用するには限界があるのです。
なぜ「落とせない」のか?クレンジングとの根本的な違い
① 洗浄対象の違い
- 全身用洗浄剤:汗・皮脂・古い角質・ホコリなど、水溶性中心の汚れ
- クレンジング剤:メイク・日焼け止め・皮脂酸化物など、油性中心の汚れ
② 洗浄メカニズムの違い
全身用は、界面活性剤の力で水に溶かして洗い流す設計。
クレンジングは、油と油をなじませて“浮かせて剥がす”設計です。
③ 設計思想の違い
全身用は「肌の常在菌やバリアを守りながら、日常の汚れを優しく落とす」ことが目的。
クレンジングは「短時間でしっかり油性汚れを浮かせて落とす」ことが目的です。
この「対象」「仕組み」「目的」の3つが根本的に異なるため、全身用ではクレンジングの代わりにならないのです。
「できる」と言われる例外ケースと注意点
ただし、「絶対にできない」と言い切るわけではありません。
以下のような条件では、ある程度のクレンジング代用は可能です。
- ✅ メイクがごく薄い(BBクリーム・パウダー程度)
- ✅ SPF値の低い日焼け止めのみ使用している
- ✅ 非イオン系界面活性剤やエステル系成分を含む高品質な全身用洗浄剤を使用している
このような条件なら、「軽い汚れを“落とす”」レベルまでは対応可能です。
ただし、“しっかりと浮かせてオフする”というクレンジング本来の役割とは別物であり、摩擦や乾燥リスクが上がる点には注意が必要です。
プロの視点:「1枚皮」と「使い分け」の正解バランス
✅ 結論:正解は「全身用+ポイントクレンジング」
私が美容師として20年以上、のべ3万人の髪と肌に向き合ってきて出した答えはとてもシンプルです。
それは、「全身用(優しい洗浄剤)+ポイントクレンジング」という使い分けこそが、肌を優しく洗いながら生活習慣にも無理なくフィットする最良の解決策だということです。
「皮は一枚」という原則を忘れず、“一本で全部解決”という極端な考え方ではなく、汚れの性質に合わせて使い分ける。
それが、現場で結果を出してきたプロとしての現実的で誠実な答えです。
① 摩擦と脱脂を最小限に抑える「リスク回避」
濃い汚れ(メイク・スタイリング剤)を優しい洗浄剤で落とそうとすれば、「長時間のゴシゴシ洗い」=摩擦が増え、肌やキューティクルを傷つけてしまいます。
逆に、薄い汚れ(体の皮脂や汗)を強力な洗浄剤で落とそうとすれば、「バリア機能の過剰な脱脂」が起きて乾燥・敏感肌の原因に。
この使い分けなら、濃い汚れはクレンジングで“触れずに溶かす”、薄い汚れは全身用洗浄剤で“優しく落とす”ことができ、摩擦と脱脂の両方のリスクを避けられます。
② コストと時短の両立が叶う
洗顔料・シャンプー・ボディソープをすべて高品質なアミノ酸系で揃えるとコストがかかります。
しかし、「全身用+ポイントクレンジング」なら、大部分は1本の優しい洗浄剤でカバーし、油性汚れの強い箇所だけに専用クレンジングを投入すればOKです。
お風呂場もすっきりし、本当に肌が必要とする部分にだけ投資を集中できるので、コスパ・時短・継続性すべてが向上します。
③ 「プロは現実を教えてくれる」という信頼につながる
「これ1本で全身・メイク落としまで完了!」という夢のような提案は魅力的ですが、現実的には“すべてに最適”な万能洗剤は存在しません。
だからこそ、「メイクによっては追加アイテムが必要」と正直に伝えることこそが信頼を生みます。
「1枚皮」という科学的な視点と、「生活の現実」を両立したこの考え方は、美容のプロとして読者に伝える価値のある本質的な答えです。
まとめ:「万能」はない。でも“選び方”次第で近づける
全身用洗浄剤とクレンジング剤は、そもそも“落とす対象”も“目的”も異なります。
だからこそ、「どこまで求めるか」を決めたうえで、成分を理解して選ぶことが大切です。
「全身用で済ませたい」と思うなら、アミノ酸系・ベタイン系など肌に優しく質の高い洗浄剤を選ぶこと。
そして「どうしても落とし切りたい部分」だけをクレンジングで補う。
それが、肌を守りながら日常にフィットする“現実的な最適解”です。
ご自身のメイク習慣やライフスタイルに合わせて、アイテムの「役割」を理解し、無駄のないミニマルな美容習慣を始めてみましょう。
その意識が、「一本で全身を洗う」という理論を、より現実的で持続可能な美容法へと進化させてくれます。
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